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【24-30】産業廃水から効果的な濃度差エネルギー回収を実現

史俊斌(科技日報記者) 馬長蕊(科技日報通信員) 2024年04月04日

 西安建築科技大学環境・都市行政工程学院と陝西省膜分離技術研究院チームが開発した2次元バーミキュライトナノマテリアルによる不均一ナノ濾過膜が、濃度の高い塩水や産業廃水など実在する水質条件下において、効率的で安定した濃度差エネルギー回収を実現した。関連成果は学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

 海水や塩水、塩分濃度の高い産業廃水といった自然資源や産業資源を利用した「濃度差エネルギー」は「埋蔵量が多い」「再生可能」といった特徴があるため、ここ数年、研究者の間で幅広い注目を集めている。異なる濃度や比重の水の間に浸透現象が発生するため、塩水と淡水の間に水分だけを透過させて塩分を透過させない半透膜を挟むと、塩分濃度差によって淡水側から海水側へと水分子が移動する「浸透圧」が発生し、その時に生じるエネルギーが「濃度差エネルギー」と呼ばれる。濃度差エネルギー回収のカギを握るのは、イオン分離特性を持つ機能性薄膜だ。

 しかし、実際の濃度差エネルギー回収の過程において、水の塩分濃度が高い場合、分離膜のイオン選択性と拡散性が大幅に低下することが多く、関連技術の応用と推進の重い足かせとなっていた。

 西安建築科技大学の王磊教授率いるチームは長期にわたり、イオン分離分野の基礎研究や、海水、塩湖、産業廃水といった資源・エネルギー回収の応用研究に注力してきた。同チームは膜分離技術の分野で、環境廃棄物の有価資源回収、イオンの高精度分離、濃度差エネルギー回収、分離膜汚染防止などの基礎研究を行ってきた。同チームが開発した2次元バーミキュライトナノマテリアルに基づく不均一ナノ濾過膜は、独特の構造をしており、膜内でイオンの「プレ濃縮+二次分離」という選択的輸送を実現した。これにより、塩分濃度5M(塩分濃度勾配が500倍)という極端な条件下でも、バーミキュライトナノ濾過膜は、効率的で安定した濃度差エネルギー回収性能を示し、出力電力密度は1平方メートル当たり33.76ワット(W)に達する。

 王氏によると、塩分濃度が高い実際環境での濃度差エネルギー回収の応用性能をさらに実証するため、同チームは青海省の複数の塩湖の塩水を使って実験を行い、最高で1平方メートル当たり25.9Wという出力電力密度を確認した。同チームが研究開発した不均一ナノ濾過膜が、実際の塩分濃度が高い塩水や産業廃水から濃度差エネルギーを回収できるポテンシャルを秘めていることを示しており、持続可能なエネルギーの開発において重要な意義を持っている。


※本稿は、科技日報「新型蛭石纳米材料通道膜实现工业废水渗透能高效回收」(2024年2月1日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

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