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【24-37】東南大学、液体デバイスをブロック玩具のように組み立てる方法を開発

金 鳳(科技日報記者) 2024年04月25日

 流れる液体をブロック玩具のように一つずつ組み立てることが可能に?

 中国の東南大学生物科学・医学工程学院の顧忠沢教授と杜鑫副研究員率いる研究チームは「液体ブロック理論」を打ち出し、液体デバイスの内部構造を編集する方法を開発した。この方法は、液滴同士の配列と組み合わせによって、さまざまな構造の液体を速やかに組み立てることができる。関連成果はこのほど、国際的学術誌「Nature Chemical Engineering」に掲載された。

 液体は流れるもので決まった形はないが、液体に基づいて構築された機能性デバイスは、新エネルギーや医学診断、生物培養など、人々の生活・生産や科学研究の各分野に浸透している。

 杜氏は「固体容器を使って、液体を特定の位置に固定するのが、一般的な液体デバイスの構築方法だ。この方法の場合、必要な固体容器を事前に設計し、作製しておかなければならず、時間とコストがかかる。また、液体デバイスを実際に使用する際に、効果が不十分で部品構造を再設計しなければならないこともよくある。あるいは実験の過程で、一時的に液体の構造を変えて、より多くのパラメーターと機能を部品に取り入れたいと思うこともよくある。一般的な固体壁に基づいた液体容器の場合、構造を変えることができず、設計、作製を絶えず行い、イテレーションを繰り返すことで、こうした状況に対応している」と紹介した。

 杜氏はマイクロ流体チップを例に挙げ、「これは人体の血液や細胞、組織などの生理環境をシミュレーションし、薬の吸収や代謝、毒性などの研究を行う。バイオ医薬品の分野では、マイクロ流体チップは主に新薬の研究開発やスクリーニングに応用されている。このチップの作製には、流路設計やテンプレートの作製、モジュールの接合・パッキングなどの段階が含まれる。単一のマイクロ流体チップの成型と作製には数千元(1元=約21円)に上るコストと数日間の期間が必要になる。また、チップの作製後に内部の構造を変えたいと思っても、それは不可能だ」と語った。

 では、液体デバイスの形状を変えて、さまざまなシーンで使えるようにし、利用者のニーズに合わせて構造をリアルタイムで変えることができる液体デバイスを作り出すことはできないのだろうか?

 顧氏率いる研究チームは、ブロック玩具からインスピレーションを得て、「液体ブロック」という理念を打ち出した。

 顧氏によると、液体をブロック化するために、均一化された3Dプリントの柱状アレイを設計した。そして、柱状アレイ中の特定の位置に液滴を連続して滴下すると、さまざまな形の液体構造を速やかに形成することができる。また、柱状アレイ中の液滴に対する遮断、除去、再追加を行うことで、リアルタイムかつ速やかに液体の構造を変更することができる。この液体デバイスの迅速な作製とリアルタイムの再構成方法を使うことで、液体デバイス関連分野の生産や研究の効率を大幅に高めることができる。また、液体ブロックの理念に基づいて作製した液体デバイスは、完全にオープンな構造となっている。そのため、撥水紙を使えば液体の流路を遮断でき、ピペットを使って不必要な液体のユニットを取り除いて、新たな液体のユニットを追加して、流路の再構成を行うこともできる。

 杜氏は「液体ブロックの理念を活用すると、研究者がピペットを使って簡単な液体構造に液体を追加することで、柔軟にデバイス構造を構成できる」と説明。複雑な構造に対しては、チームが自動化装置を開発し、数分以内に複雑な流路を速やかに構築できるようにしたと述べた。

 杜氏は「この技術は連続相の流体構造の構成に活用できるほか、離散相の多相液体構造の構成にも活用でき、液液界面を高精度でコントロールできる。液体デバイスの作製には数分しかかからず、コストがとても安い。研究者はこの技術を使って2D液体構造や3D液体構造を速やかに構成することができる。適用できる液体には水溶液、イオン液体、液体金属などが含まれる」と説明した。

 顧氏のチームは現在、ヒト臓器チップの研究開発を進めている。ヒト臓器チップは、ヒト由来細胞または幹細胞を非常に薄いポリマー基材に注入し、基材に酸素と培養液を送り込むことで、細胞がその中で呼吸し、成長できるようにし、最終的にヒトの臓器に類似する組織に成長させるものだ。

 研究チームは「液体ブロックが示す再構成の可能性という理念は、構造が固定され、微小臓器の成長に合わせて構造を変えることができないという現在のヒト臓器チップの限界を補うものだ」との見解を示した。

 顧氏によると、チームは現在、液体ブロックという理論を活用して、動的ヒト臓器チップの作製を試みている。生命体の成長や発育過程における一連の動的プロセスを再現し、次世代の高度なバイオニック、自己適応型ヒト臓器チップを作製するという。


※本稿は、科技日報「新方法让构建液体器件像搭积木」(2024年2月27日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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