【24-51】データで見る中国の科学技術(『中国科学技術概況2023』より)
松田侑奈(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2024年06月06日
中国の科学技術をめぐる状況が日々変化する中、科学技術振興機構(JST)アジア・太平洋総合研究センター では、科学技術に関する最新統計データを整理すべく、調査報告書『中国科学技術概況2023』を公開した。
本稿では 、報告書に掲載されたいくつかの統計データを紹介しつつ、中国における「研究開発費」「研究者数」「大学ランキング」の状況について簡単に述べたい(すべての図 は『中国科学技術概況2023』にも掲載している)。
一、研究開発費
中国の研究開発費は2000年代以降、着実に増加している。2022年には3兆783億元(約64.3兆円、1元=20.9円で換算)で、対GDP比は2.54%となっている(図1) 。科学技術支出のうち、地方政府が占める割合が2012年から中央政府より多くなり、2022年には地方政府の支出額が中央政府の1.93倍となった(図2)。
性格別で見た場合、2022年は基礎研究が6.6%、応用研究が11.3%、開発研究が82.1%となっている(図3)。基礎研究を重視する政策が相次ぎ出される一方で、第14次五か年計画で目標としていた8%以上とはまだ距離があるようにうかがえる。
図1 中国の研究開発費支出、対GDP比の推移(1995-2022年)
出典:中国科技統計年鑑2023
図2 政府負担研究開発費の中央と地方の支出額と割合推移(2006-2022年)
出典:中国科技統計年鑑2023
図3 性格別研究開発費支出の割合推移(1995-2022年)
出典:中国科技統計年鑑2023
二、研究者数
中国の研究者数の増加は顕著であり、2020年は228.1万人で世界1位となっている(図4)。ただ、人口1万人当たりの研究者数は16.2人と、主要国に比べるとかなり低い。隣国の韓国は人口1万人当たりの研究者数が86.3人、日本は55人である(図5)。
中国における女性研究者の割合は26%(2022年基準)と、日本の約1.5倍である。日本よりは高い数値であるが、東アジアの国々は全般的に低めの数値で、欧米諸国と比べると、その半分に及ばない場合もある(図6)。
図4 主要国・地域の研究者数の推移(1981-2022年)
出典:科学技術要覧(令和4年度版)
図5 主要国・地域の人口1万人当たりの研究者数(1981-2021年)
出典:科学技術要覧(令和4年度版)
図6 主要国・地域の女性研究者の割合
出典:OECD統計データ&中国科学技術統計年鑑2023
三、大学ランキング
2024年、THE(Times Higher Education) 世界大学ランキングで、上位200位にランクインした大学の数は、中国(大陸)が13校、香港が5校、日本が5校だった(図7)。2021年は中国からのランクインが7校だったため、大きな躍進といえる。新たにランクインしたのは、四川大学、華中科技大学、武漢理工大学、ハルビン工業大学、北京師範大学、同済大学である。
一方、QS(Quacquarelli Symonds)世界大学ランキングで上位100校に入った大学は、中国(大陸)から5校、香港から5校、日本から4校だった(図8)。
図7 THE世界大学ランキングにおける日中比較(2024年)
出典:TIMES HIGHER EDUCATION
図8 QS世界大学ランキングにおける日中比較(2024年)
出典:QS WORLD UNIVERSITY RANKING2024
なお、より多くの科学技術関連データは『中国科学技術概況2023』で確認できる。