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【25-029】中国初のAI小児科医、北京児童医院で導入

代小佩(科技日報記者) 2025年03月25日

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AI小児科医と共に診断を行う専門医。(画像提供:北京児童医院)

 北京児童医院の6階にある合同診断センターでは、難治症例に関する多分野合同診断が実施されていた。国家児童医学センターの主任を務める北京児童医院の倪鑫院長以下、10以上の診療科から集まった著名な専門医13人が、8歳の男児の病状について意見を交換した。

 今回の合同診断にはAI小児科医も初めて参加した。これは中国初のAI小児科医で、「AI小児科医+多分野専門医」という新たな合同診断スタイルが誕生した。

 専門医らは、患者の診察記録を詳細にチェックし、病歴を聴取したうえで議論を行った。その結果、患者の頭蓋底にあるしこりは、表皮嚢腫または腫瘍の可能性があり、さらなる局所MRI検査が必要との結論に至った。技術者が患者の主訴と病歴情報をモデルに入力すると、AI小児科医が専門医チームの診察結果と高度に一致する提案を示した。

 倪氏によると、今回導入された専門医型AI小児科医は、北京児童医院が小児医学大規模言語モデルと健康医療イノベーション応用北京市重点実験室、小児イノベーション医療機器概念実証プラットフォームを活用し、北京百川知能科技有限公司、小児方健康科技(北京)有限公司と共同開発した。

 開発者らは、北京児童医院の著名な小児科専門医300人以上の臨床経験や、数十年にわたる高品質な診療記録データを統合し、構造化された臨床推論パラダイム訓練を通じて、小児の一般的な疾患と難病をカバーする立体化知識体系を構築し、このAI小児科医を開発した。このAI小児科医は、専門医の臨床科学研究をアシスタントできるほか、医師が最新の科学研究成果や権威あるガイドラインを速やかに取得できるようサポートしたり、難治性希少疾患の診断、治療をサポートすることで、臨床の意思決定の効率を高めることができる。

 同医院は今後、末端の医療機関や家庭における健康管理といった多様なシーンをカバーする家庭向けAI小児科医やコミュニティ向けAI小児科医を順次導入し、家庭での健康ニーズに応えていくほか、末端の小児科のサービス能力を高め、中国全土の3億人の子どもたちの健康を守っていくとしている。


※本稿は、科技日報「全国首个AI儿科医生"上岗"」(2025年2月20日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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