【25-038】「騰訊混元+オープンソースモデル」が各業界での応用の突破口に
魏 路、王 春(科技日報記者) 2025年05月20日
人工知能(AI)やビッグデータなどの技術が、これまでにない速さで、各業界に深く浸透している。中国の大規模AIモデル「DeepSeek」(ディープシーク)のオープンソース化や深層思考(ディープシンキング)の進化により、AI大規模言語モデルは現在、産業実装化のハードルを越え、普及と実用化の新たな段階に入った。そして、最先端のAI技術を、実用的で親しみやすく、成長可能なスマート製品やソリューションに変える方法が、業界の新たな関心事となっている。
このほど開催された「2025騰訊(テンセント)グローバルデジタルエコシステム大会上海サミット」では、業界内でいち早くディープシークを導入した騰訊雲(テンセントクラウド)が、さまざまな業界での応用を可能にする「騰訊混元(Hunyuan)+オープンソースモデル」ソリューションを発表した。これは、金融や医療、教育、文化・観光、メディアなど30以上の業界で実装され、質や効率の向上という面で新たな原動力を注入している。
騰訊集団の李強副総裁は「『ディープシーク』のオープンソース化は、スマート社会の平等を促進し、大規模言語モデルの産業側における応用実装の効率を一段と高めた。大規模言語モデル自体は、産業の実際の問題を直接解決することはできない。AIが実験室から出て、実際に応用されるためには、エンジニアリングの力を活用する必要がある。騰訊雲は企業クライアントの多様なニーズ(高い安定性、柔軟な適応など)に対応するため、『騰訊混元+オープンソースモデル』というソリューションを打ち出し、クライアントのイノベーションと業務効率向上を後押ししている」と語った。
騰訊は計算能力の支援からモデルの導入、産業実装までの全プロセスでサポートを提供し、各種機関が自身のシーンやデータに基づいて専用の大規模言語モデルをトレーニングできるよう支援している。例えば、製造業では、騰訊雲が万控智造股份有限公司と共同で研究開発した「万智雲」プラットフォームは、電気設備の設計期間を3日間から3分間に圧縮し、納期を30%短縮した。行政事務サービスの面では、上海市徐匯区は、騰訊プライベートクラウドTCEの能力を活用して、独自の大規模言語モデルハブを構築し、現在80以上の行政事務システムを安定的に運用させている。
上薬控股有限公司の姜全磊最高財務責任者(CFO)によると、同社では騰訊雲のナレッジエンジンを通じて、ディープシークと混元を連携させてAIエージェントセンターを構築し、従業員約3万人がスマートオフィスを利用できるようにしており、財務分析やクライアントとの意思疎通、データ処理などの作業効率を高めている。
騰訊集団の湯道生執行副総裁は「優れたモデルは、実用的な場面での利用が必要で、信頼性のあるコンテンツソースと安定した計算能力サービスも不可欠だ」と指摘した。
大規模言語モデルの製品化の過程において、ナレッジベースは極めて重要だ。湯氏は「モデルを人間の『脳』に例えるなら、ナレッジベースは『教科書』に相当する。どんなに頭のいい人でも、体系的に学習しなければ、すべての問題を効果的に解決するのは難しい。最近、企業向けのコミュニティアプリ騰訊楽享(Tencent LearnShare)でリリースされたAIナレッジベース機能は、深層思考と企業の専門知識を組み合わせ、さらに強力な質問応答能力を獲得している」と説明した。
姜氏によると、薬学に特化したナレッジベースとディープシークを統合し、AI薬剤師アシスタントを構築することで、薬剤師や患者に対し、さらに精度の高い質問応答やデータ分析、専門的な薬学アドバイスを効果的に提供しているという。
産業の発展にはインフラの下支えが不可欠だ。騰訊雲の王前副総裁は「上海はインフラ整備と産業展開の面で独自の優位性があり、より多くの応用シーンを提供できる。上海には数多くの科学研究機関と人材が集まっており、AI発展のために新しい『血』を提供することができる」と語った。
騰訊は現在、上海に中国最大のGPU計算能力センターを設立し、長江デルタ地域の産業デジタル化に計算能力の下支えを提供している。また、上海浦江デジタルチェーン構築にも積極的に参加し、都市規模のブロックチェーン運営ネットワーク構築を支援している。さらに、騰訊の企業レベルのクラウドプラットフォームTCE(Tencent Cloud Enterprise)によって提供される計算能力は、行政事務や国際貿易、船舶輸送・物流など30以上の分野でブロックチェーン技術を活用するための支えとなっている。
※本稿は、科技日報「"腾讯混元+开源模型"解锁行业应用新场景」(2025年3月31日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。