【25-044】1億4000万年前のカキ化石が「古代気候」の姿を明らかに
陸成寛(科技日報記者) 2025年05月30日
中国科学院青蔵高原研究所などの研究者が、約1億4000万年前の牡蠣(カキ)の化石を研究することで、恐竜が繁栄していた前期白亜紀の地球が気温の高い「温室世界」であったにもかかわらず、はっきりした季節的な気温差が存在し、現在の地球の極地に見られるような永久氷河とは状態が全く異なる周期性の氷河が存在していた可能性を明らかにした。研究成果はこのほど、国際的学術誌「Science Advances」にオンライン掲載された。
カキに代表される増殖生物は、殻に樹木の年輪のように毎年明暗が交互に現れる成長縞を形成する。夏の高温時は殻の成長が速く、構造が粗くなり、「明るい色の層」が形成されるが、冬の低温時は成長が遅く、構造が密になり、「暗い色の層」が形成される。
論文の責任著者で中国科学院院士(アカデミー会員)を務める中国科学院青蔵高原研究所の丁林研究員は、「これらの生物の殻は『自然界のタイムレコーダー』のようなもので、地球の気候変動や生態系の進化の歴史を詳細に記録している。こうした太古の貝殻を研究することで、将来の生態系発展のための科学的な方向性を見出すことができる」と説明した。
研究チームは今回、カキの化石に見られる成長縞を研究し、精密機器を使ってこれらの「自然の温度計」の化学成分を分析したところ、化石の保存状態が良く、損傷していないことが確認できた。そして、前期白亜紀の南半球の中緯度地域では、冬の水温が夏よりも10~15℃低く、現在の同地域の水温の季節的温度差と同程度であることを発見した。研究者は気候シミュレーションを通じて、現在のグリーンランドの氷床・氷河が夏になると融けるのと同じように、当時も季節的な氷河の融解水が海洋に流入していた可能性があることを突き止めた。
現在、人々は地球温暖化について、単純に「どんどん暑くなる」と理解しがちだが、今回の最新研究は、気候システムが不安定で予測不能であることを示唆している。温室効果ガスの増加が、必ずしも均等な気温上昇を引き起こすのではなく、むしろ季節的な温度差を大きくし、異常気象を増やす可能性があることを教えてくれている。研究ではまた、1億4000万年前の地球に存在した一時的な氷河は、大規模な火山噴火や地球の軌道周期の変化が相互に作用した結果である可能性があることも示された。これは、現在の地球温暖化の状況下でも、局地的な大規模地質変動イベントと人間の活動が重なれば、予想外の気温低下が発生する可能性があることを示唆している。
丁氏は「本研究は古代気候の新たな様相を明らかにするもので、気候変動に関する一面的な見方に疑問を投げかけ、古代気候への理解を刷新するとともに、将来の地球温暖化の傾向を予測する上でも重要な手がかりとなる」と語った。
※本稿は、科技日報「1.4亿年前牡蛎化石揭示远古气候图景」(2025年5月15日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。