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【25-067】皮膚細胞が「活性骨細胞」に変身 骨修復に新たな道を切り開く

趙漢斌(科技日報記者) 2025年07月30日

 中国雲南省骨関節疾患基礎研究重点実験室の胡敏主任率いるチームが、化学的リプログラミングと球状化技術を使い、皮膚の線維芽細胞を誘導性骨芽細胞に変換することに成功した。この成果は、重度の骨折や偽関節の臨床治療に革新的なソリューションを提供するものであり、国際学術誌「Bioactive Materials」に掲載された。

 論文の筆頭著者で、昆明学院骨関節疾患基礎研究雲南省重点実験室の李燕皎副主任は、「従来の骨折治療法には骨移植や人工骨材の使用があるが、これらは手術の侵襲が大きく、合併症のリスクが高く、限界があった。人工骨材は一定の支持と充填はできるものの、その生物学的活性と骨誘導能力が比較的弱く、複雑な骨欠損の修復ニーズを満たすのは難しい。同種の骨移植には免疫拒絶反応や感染リスクがあった」と述べた。

 研究チームは、人間の皮膚や結合組織などに存在する線維芽細胞に注目した。この細胞は、高い増殖能力とリプログラミングによる可塑性を潜在的に持つほか、特定の方法で他の種類の細胞に変換できるため、再生医療の研究分野における複数種類の人工機能細胞の理想的な種細胞となる。

 李氏によると、研究チームは小分子化合物を組み合わせることで、線維芽細胞を機能的に優れた誘導性骨芽細胞にリプログラミングすることに成功した。この細胞は天然の骨芽細胞と高度に類似した生物学的特性を備えており、骨損傷、特に高齢者の骨損傷に対する自家細胞治療の基礎を築いた。

 研究チームは誘導性骨芽細胞の臨床応用価値を高めるため、これらを球状体にした。論文の共同筆頭著者でチームメンバーの蒋斌氏は、「球状体構造は体内の細胞の三次元増殖環境を模倣し、細胞の活性と機能を高めることができる」と説明する。

 誘導性骨芽細胞球はまた、従来の二次元単層細胞培養と比較して、より高い細胞生存率、より強い機能活性、そして骨欠損病巣の微小環境へのより良い適応能力を持つという。

 骨欠損修復における誘導性骨芽細胞球の効果を検証するため、研究チームは大腿骨の臨界骨欠損マウスモデルで実験を行った。その結果、これらの細胞を移植したマウスでは28日後、骨欠損部位が線維軟骨カルスで覆われ、若年ドナー由来の骨髄間葉系幹細胞移植と同等の効果が見られたことを示した。一方、線維芽細胞移植を受けたマウスでは、顕著な骨修復現象は観察されなかった。

 さらなる研究により、誘導性骨芽細胞球が骨欠損部位の骨体積分率、骨表面積、骨梁数、骨密度などの指標を著しく向上させることが示された。

 蒋氏は、「誘導性骨芽細胞球は体内移植後も良好な機能活性を維持し、骨基質タンパク質や血管内皮増殖因子を分泌して、血管新生および骨組織の再生を促進する。さらに、誘導性骨芽細胞球の移植後、骨欠損部位の活性酸素レベルが著しく低下し、これが移植細胞と周囲組織を保護し、修復効果を高めるのに役立つ。この骨芽細胞球を移植したマウスの長期観察および包括的検査を通じて、研究チームは腫瘍形成などの異常な状況は観察されなかった」と述べた。

 この成果は、臨床治療における同種異体骨源の深刻な不足という現実的な問題を解決するだけでなく、自家組織工学骨を用いた骨損傷の精密治療の基礎を築き、再生医療のさらなる発展を推進する可能性がある。

 現在、この研究はまだ動物実験段階にあり、将来、研究チームはより大規模な動物実験に基づき、アジア、ヨーロッパ、オセアニアで多施設共同臨床試験を実施し、その安全性と有効性を十分に検証するとしている。


※本稿は、科技日報「我科学家为骨修复开辟新路径」(2025年6月24日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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