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【25-072】アンチエイジングに効果的な運動とは? 研究者がキーファクターを発見

陸成寛(科技日報記者) 2025年08月18日

 運動は経済的かつ効果的なアンチエイジング(抗老化)方法として広く認識されているが、その深層メカニズムは長らく解明されていなかった。中国科学院動物研究所の劉光慧研究員は、複数のチームと共同で、6月25日付の『セル』誌に運動のアンチエイジングに関する論文を発表した。論文では、単回運動と長期的かつ規則的な運動に対する人体の異なる反応を初めて体系的に明らかにするとともに、重要な「運動模倣分子」であるベタインについて解明している。

 運動によるアンチエイジングの普遍的法則を探るべく、研究チームは2019年からマウスとヒトの双方を対象にした運動の影響を同時に研究してきた。23年には、研究は重要な進展を遂げ、運動が概日リズム因子を調節し、血管再生を促し、全身の炎症を抑制することによって、マウスの複数の器官の機能を再構築し、老化を遅らせるメカニズムを体系的に明らかにした。これにより、運動が人体にもたらす健康上の利益を理解するための基礎を築いた。

 最新研究では、研究チームは13人の健康な男性ボランティアを募集し、自己対照試験を実施するとともに、マウスとヒトの異種間研究を組み合わせ、身体の運動に対する応答マップを詳細に描いた。その結果、単回の激しい運動は「生存ストレス試験」のようなものであり、身体は代謝の嵐と酸化損傷を引き起こすことを発見した。一方、長期的で規則的な運動は全く異なり、代謝の改善、免疫システムの若返り、炎症の減少、抗酸化能力の強化、腸内細菌叢構造の最適化、病原共生菌の抑制など、体内の複数システムのバランスを再構築できるという。

 この研究における重要なブレイクスルーは、腎臓が運動による健康効果の中心的な応答器官であることを突き止めた点にある。マウスを用いた運動モデルに基づく研究で、長期的な運動が腎臓内のベタインレベルを顕著に高めることが判明した。ベタインは腎臓内でコリンから生成され、その合成経路の鍵となる酵素であるコリンデヒドロゲナーゼが運動後に活性化されることが分かった。

 研究ではまた、ベタインの利用により長期的な運動の多くの利点を効果的に模倣できることも明らかにした。細胞レベルでは、ベタインで多様なヒトの老化細胞を処理すると、その老化状態が顕著に改善される。動物レベルでは、老齢マウスにベタインを経口投与すると、健康寿命が延長され、代謝、腎機能、運動協調性が改善され、うつ病行動が減少し、認知能力が向上した。組織分析により、ベタインが複数の器官、特に腎臓と筋肉の老化を遅らせることが確認された。

 研究ではさらに、ベタインの作用メカニズムが明らかにした。ベタインはTBK1という名の自然免疫キナーゼに直接作用し、その活性を抑制する。ベタインがこのキナーゼと結合し、炎症性シグナル経路が阻害されることによって炎症因子の生成が抑えられる。自然老化モデルでは、ベタインの経口投与が複数の組織の炎症レベルを顕著に低下させることが判明した。

 今回の研究は、運動、特に長期的な運動が分子、細胞から器官レベルまで老化を遅らせる仕組みを体系的に説明しており、運動模倣薬の開発に科学的根拠を提供している。


※本稿は、科技日報「研究发现运动抗衰老的关键因子」(2025年7月3日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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