【25-088】妊娠前の血糖値が低いと、出産時に合併症のリスクが高くなる可能性 中国の大規模研究
AsianScientist 2025年10月10日
中国で行われた大規模研究によると、妊娠前の血糖値が低い女性は、早産や低出生体重などの合併症のリスクが高まる可能性があることが分かった。
妊娠前の血糖値が低いと低出生体重や早産などのリスクがあるが、このリスクは女性が低体重であるか肥満であるかによって異なってくる。
血糖値は通常、糖尿病と関係するが、新たな研究により、妊娠転帰にも重要な役割を果たす可能性があることが示されている。
糖の一種であり、体の主要なエネルギー源であるグルコースは、健康維持に重要な役割を果たす。前糖尿病や2型糖尿病によく見られる高血糖だけでなく、低血糖もリスクをもたらすことが知られている。
これまでの研究から、妊娠前または妊娠中の高血糖は合併症のリスクを高め、妊娠中の低血糖も有害転帰と関連していることが分かっている。しかし、妊娠前の低血糖が、糖尿病の既往歴のない女性にとってリスクとなるかどうかは不明であった。
このことを確かめるため、香港中文大学の研究者であるハンビン・ウー(Hanbin Wu)氏は、北京の国立家族計画研究所と共同で、国家無料妊娠前健診プロジェクト(NFPCP)のデータを用いた大規模な後ろ向き研究を実施した。NFPCPは妊娠を希望する女性のための無料健康サービスである。
研究チームは、2013年から2016年にかけてこの全国健診プロジェクトに登録した20歳から49歳までの中国人女性486万6919人のデータを分析した。このうち、約24万人が妊娠前に低血糖症状を示していたことが判明した。
この研究から、妊娠前に低血糖であった女性は、早産や低出生体重、先天異常など、有害な妊娠転帰のリスクが高いことが明らかになった。
PLOS Medicine誌に掲載された研究論文の中で、著者は「研究結果から、我々は妊娠前の女性の高血糖に注意を払うだけでなく、妊娠前の血糖スクリーニングで低血糖を示す女性にも配慮するよう求めている」と述べている。
体型によって異なるリスク
研究チームは、低血糖の女性は血糖値が正常な女性よりも若く、BMIが「低体重」に分類される傾向があることも発見した。
しかし、妊娠前の低血糖に関連するリスクは、BMIによって異なる。低体重の女性は流産する可能性が高く、その一方、低血糖の肥満女性は在胎週数に対して平均よりも大きい赤ちゃんを出産する可能性が低い。
これらの結果に基づき、研究チームは、妊娠前の段階で低血糖のスクリーニングを行うことが、リスクを軽減し、妊娠転帰を改善するのに役立つ可能性があると示唆している。
「これらの結果は妊娠前と妊娠中の空腹時血糖(FPG)異常に対する包括的なスクリーニングと調和した介入の必要性を強調するものでもある。妊娠転帰の悪化リスクを軽減するためには介入時期を早める必要がある」と研究チームは述べている。
しかし、研究チームは、今回の分析は中国人女性に限定されているため、さらに研究を実施する必要があるとも述べている。今後、異なる集団を対象にした研究を行うことで、今回の研究結果が世界中で一貫しているかどうかを判断することができるであろう。
発表論文:Preconception hypoglycemia and adverse pregnancy outcomes in Chinese women aged 20-49 years: A retrospective cohort study in China
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●AsianScientist
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Source: The Chinese University of Hong Kong; Image: Shutterstock
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