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【25-117】AIエージェント:人々の「デジタルパートナー」が登場

張佳星(科技日報記者) 2025年12月24日

 11月21日、「AIエージェント(智能体)」が2025年の科学普及キーワード10選に選ばれた。エンターテインメントや教育、医療など、さまざまな分野でAIエージェントの活用が広がっている。

 かつて人々は、スマートスピーカーに日常生活のアシスト役を期待していた。しかし、操作のたびに指示が必要で、仕事や生活の負担を本質的に減らすには至らなかった。現在、AIエージェントは最も将来性のある「デジタルパートナー」とされ、生活や仕事の課題を解決してくれる存在として期待が高まっている。

 従来のAI(人工知能)と何が違うのか。どのような能力を備えて初めてAIエージェントと呼べるのか。これらについて、業界の専門家に聞いた。

生活の伴走者-SF映画から現実へ

 上海霊宇宙科技発展有限公司の創業者である顧嘉唯氏は、「2013年公開のSF映画『HER/世界でひとつの彼女』に登場する高度なAI『サマンサ』は、理想的なAIエージェント像の一つだ」と語った。映画では、サマンサは胸元に装着され、カメラなどを通じて周囲を認識し、あらゆる場面で助言を与える存在として描かれている。

 顧氏は、「例えば、会議やグループディスカッションに参加した時に、AIエージェントが話題に応じて、最新のネット情報や整理されたデータをイヤホン越しに提供してくれる。そうした"参謀役"のような能力が理想だ」と述べた。

 IDC中国の研究ディレクター、盧言霞氏によると、AIエージェントの定義は多様だが、理解力、記憶力、計画能力、自律的な意思決定能力は不可欠だという。

 これらを実現するため、開発者はさまざまな新しい手法を模索している。顧氏は、「映画『HER』に着想を得たことに加え、人間が得る情報の8割以上は視覚によるという点を踏まえ、私たちはカメラを搭載した小型デバイスを開発し、アルゴリズムによって現実世界を立体的に把握できるようにした」と説明した。人の置かれている環境を正確に認識できることで、AIエージェントの判断精度は大きく向上するという。

 意味理解の面では、人の意図を正確につかみ、「途中で切れない一連の処理」として実行することが、AIエージェントの重要な役割とされる。

 顧氏は、「AIが的確に応答するには、発話の意図を素早く捉える必要がある。そのため私たちはローカルモデルを開発し、大規模生成AIを呼び出す前に高速な前処理を行っている」と語った。人が話し始めた直後からローカルモデルが意図推定と処理経路の判断を行い、迅速さと精度の両立を図っている。

 深層思考や推論応用などの場面では、消費者向けAIエージェントが一定の成果を上げている一方で、企業向けは状況が異なっている。盧氏は、「現時点では、企業向けAIエージェントは主にカスタマーサポートや業務アシスタントといった補助的役割にとどまっている。マルチモーダル情報を活用し、基幹業務を担う業界特化型AIエージェントの実用化にはなお課題がある」と指摘した。

職場への進出-受動的応答から能動的予測へ

 北京雲跡科技の研究開発センター責任者である龔漢越氏は、「仕事の場で求められているのは、より深いレベルでの"パートナー型"の協働だ。AIエージェントが業務目標を自ら分解し、段階的に達成していくことが期待されている」と語った。機械的な応答から、先回りした判断への進化が、業務シーン向けAIエージェントの方向性だという。

 龔氏によると、現在、AIエージェントはホテル、工場、病院などで導入が進み、反復的作業や定型業務、人と機械の協働が必要な業務を支援している。ただし、生活支援型に比べ、業務向けAIエージェントは処理の段階が多く、全体のプロセスも長いという。

 雲迹科技の「サービスAIエージェント」は、エンボディドAI(身体を持つAI)と非エンボディドAIを組み合わせた構成を採用している。具体的な物理作業はロボットが担い、同社が開発したAIシステム「HDOS」が複数の入力チャネルを通じて利用者の要望に応答し、常識知識を基に意図を予測、判断・実行・フィードバックまでを一連で処理する。

 盧氏は、「成熟したAIエージェントは、人の仕事を代替し、人は監督と修正に専念する形になる」と述べた。

 では、AIエージェントを単なる高性能な「タスク識別装置」「実行装置」から、深い対話が可能で自律的に進化し、安全性も確保された「知的パートナー」へと発展させるには何が必要なのか。

 盧氏は、業界や企業におけるデータ・知識の蓄積不足や、大規模モデルの処理能力・精度の限界が依然として課題だと指摘する。彼はテスラの例を挙げ、「テスラは膨大な電気自動車データを収集し、現実の利用シーンに基づく閉ループを構築したうえで、ロボタクシーの開発に進んでいる」と述べた。職場で本格的に活用されるAIエージェントには、垂直分野での大量の実体験データの蓄積が不可欠だという。

 龔氏は、AIエージェントの推論能力を「何であるか」を識別する段階から、「なぜそうなのか」を理解する段階へと高める必要があるとし、人間の価値観との整合を進めるべきだと強調。複雑な状況下でも明確かつ動的な行動範囲を設定することで、物理環境や社会的な相互作用における安全性を確保することが重要だとした。


※本稿は、科技日報「智能体:你的"数字搭档"已上线」(2025年12月1日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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