【26-001】日常生活の幅を広げるブレイン・マシン・インターフェース
陸成寛(科技日報記者) 2026年01月08日
思いのままに車いすを動かし、物を呼び寄せることができるようになる。かつてはSF作品の中にしか存在しなかった光景が、今や研究室の窓を通して現実の生活へと差し込み始めている。
中国科学院脳科学・知能技術卓越革新センターは、臨床機関や関連企業と連携し、四肢まひ患者に対し、侵襲型ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を使うことで、思考によって電動車いすを操作して団地内を散歩したり、ロボット犬に指示してデリバリーを取りに行かせることに成功した。これは、中国のBMI研究が、基礎的なインタラクション能力の再構築から、患者の日常生活の幅を広げる段階へと進みつつあることを示している。
これまで、BMI研究は「思考による文字入力」や「ロボットアームで物をつかむ」といった基礎的なインタラクションの段階にとどまっていた。今回の試験の画期的なところは、制御対象を画面上の記号から、移動可能で相互作用できる物理的な実体へと拡大した点にある。電動車いすやロボット犬は単なる道具ではなく、患者の身体の延長であり、意志の触手でもある。また、科学研究の視線が実験室内の指標を超え、患者の具体的で多面的な生活ニーズへと向けられたことを意味する。
団地内の散歩やデリバリーの受け取りといった行動も、患者にとっては、尊厳や自立性、社会参加の回復にほかならない。技術は単に機能を修復するだけでなく、患者の生活マップを描き直し、世界を探索し、生活を管理する新たな可能性を与えるものとなる。実際の生活シーンを起点とし、生活の質の向上を中核に据える研究志向こそが、BMI技術が価値へとつながる根本となる。
注目すべきは、中国でこの分野における発展の道筋が明確になってきている点である。国家レベルでは「BMI研究倫理指針」を公表し、複数の政府機関は共同で「BMI産業のイノベーション発展を推進する実施意見」を打ち出した。最先端の探究を倫理の枠組みの下に置きつつ、臨床と工学の成果を結び付けて実用化を進める姿勢がうかがえる。この方針は、柔軟電極などの中核技術での基礎研究を後押しする一方、臨床で使える形にすることも重視している。目指すのは、患者が直面する具体的な困難を減らすことだ。こうした「研究-臨床-産業」の連携が、科学的発見を現実の福祉へつなぐ速度を高めている。
もちろん、未来へ向かう道のりには冷静な歩みが求められる。侵襲型BMIは、長期的な安全性、システムの安定性、コストの実現可能性といった面でなお課題を抱えており、神経信号のより精密な解読や、より自然なマン・マシン・インタラクション方式を確立することも、引き続き探究されるべき方向性である。
今回の試験は、一つの窓のように、温かみのある技術の未来を垣間見せてくれた。そこでは、技術はもはや冷たい機械ではなく、人間の意志と能力を拡張する懸け橋となっているのである。
※本稿は、科技日報「念起物从,脑机接口拓展患者生活边界」(2025年12月19日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。