【26-012】「チャット中心型」から「タスク実行型」へと変化するAI
崔 爽(科技日報記者) 2026年02月03日
アリババ(阿里巴巴)グループが開発した対話型AI「千問(Qwen)」では、チャットボックスに「コーヒーを2杯注文して」と入力するだけで、「淘宝閃購」のサービス機能を呼び出すことができる。これにより、正確な位置情報の特定や店舗のおすすめ、注文の生成など一連の操作が自動で実行され、内蔵された「支付宝(アリペイ)」のAI決済機能でワンタップ決済まで完了する。現在はこのように、「一言伝えれば、すぐに届く」が現実化している。
アリババはこのほど、最新バージョンの千問アプリを公開した。AIを活用したフードデリバリー注文、航空券やホテル予約などに対応し、ユーザーのニーズ入力からタスク実行、決済完了までの全プロセスを統合し、AIが実務処理を完結させる仕組みを整えた。
「チャットでの会話」から「タスク実行型サービス」へ。AIはツールの枠を越えてスーパーゲートウェイへと移行しつつある。アリババ、バイトダンス(字節跳動)、テンセント(騰訊)などの企業がこの分野に次々と参入しており、これは単に消費者向けのゲートウェイ争奪戦というだけでなく、将来のトラフィック配分の仕組みやビジネスのエコシステム再構築にも影響を与えようとしている。
中国インタラクティブメディア産業連盟の専門家委員会委員で、デジタル文化産業ワーキンググループ長を務める包冉氏は、「いわゆるAIゲートウェイとは、本質的にAIエージェントが従来のOSのマンマシンインターフェースに取って代わり、端末全体を包括的に制御する仕組みを指す。この仕組みの下では、ユーザーはOS経由でアプリを起動する必要がなく、自然言語で直接必要なAI機能を呼び出せるようになる」と説明する。
この包括的な制御はスマートフォンに限定されず、パソコンやスマートグラス、スマートテレビなどあらゆる種類の端末にも広がる。包氏は、「端末が基本的なインターネット接続機能を備え、クラウドベースのAIに接続されていれば、AIエージェントがユーザーのニーズを統合して処理できる。今後ユーザーが本当に必要とするのは、どのアプリを開いたか、どれだけの時間滞在したかではなく、買い物、情報取得、ソーシャル活動、ナビゲーションなどの最終目的を効率的に達成することだ」との見方を示す。
千問の消費者向け事業を担当する呉嘉総裁は、「AIが『超強力な頭脳』を獲得した後、現実世界に働きかける『手と足』のような機能が発達し、日常生活の中でユーザーの代わりに『実際に作業を行う』ようになった。千問アプリは既に淘宝、支付宝、淘宝閃購、飛猪(フリギー)、高徳地図などアリババエコシステムの各種サービスを全面的に統合し、デリバリー注文や航空券予約などのAIを活用したショッピング機能を実現し、400項目以上のAI実用サービスを公開している」と述べた。
とりわけ、「支付宝」のAI決済や行政サービスとの深い統合により、ユーザーは複数のページを行き来する必要がなく、政策文書を手動で照合・確認する手間も省けるようになった。チャットボックスで要望を一言で説明するだけで、ビザ申請や戸籍関係、住宅積立金など50項目の生活関連サービスに関する情報を検索できるようになっている。
千問の「実用型サービス」が成長した背景には、基盤となる大規模言語モデル技術のブレイクスルーがあった。千問の大規模言語モデルはプログラミング能力が大幅に向上し、リアルタイムでツールを構築できるようになっている。さらに、マルチモーダルの理解能力が強化されたことで、インターフェースの理解、音声の認識、テキストや画像レポートの読解が可能になった。超長文脈処理能力も向上し、複雑なタスクの処理能力が大幅に高まったという。
中国信息通信研究院人工知能研究所所長の魏凱氏は、「大規模言語モデルの技術的進化は、モデルの実用化に向けて強固な基盤を構築した。当研究院のテスト結果によると、モデルの言語理解能力とマルチモーダル理解能力はそれぞれ30%と50%向上しており、推論能力やプログラミング能力などは『より良く、より速く』進化している。AIは補助的なツールから、相互学習能力を備えたスマートなパートナーへと変貌しつつある」と語った。
同時に、AIエージェントは大規模言語モデルの実用化における主要な形態となり、徐々に「デジタル労働力」の原型を現しつつある。魏氏によると、一方ではウェブインタラクション操作、情報統合、調査研究などにおいて、汎用AIエージェントが顕著な成果を上げている。他方では、プログラミング、法律、人的資源など特定分野向けの特化型AIエージェントが、業界のタスクに焦点を当てることで専門性の高い適応能力を強化し、実用化の障壁を突破している。
魏氏は、「特化型であれ汎用型であれ、現在のAIエージェントはまだ発展の初期段階にあり、そのタスク計画の信頼性、既存業務システムとの連携の複雑性、責任分担の明確化といった課題が依然として顕著だ。さらに強力な生産力を形成するには、基盤モデルの進化に加え、特定分野のデータやプロセスとの深い連携が必要になる」と強調した。
※本稿は、科技日報「AI加速从"会聊天"向"能办事"演进」(2026年1月22日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。