【08-001】イノベーション型の国家建設の発展戦略に寄与する中国科学技術協会~「日中R&D連携シンポジウム」来賓挨拶~
斉 譲(中国科学技術協会副主席) 2008年1月20日
本稿は、中国科学技術協会・斉譲副主席が2007年11月16日(独)科学技術振興機構JST中国総合研究センター主催の「日中R&D連携シンポジウ ム」で 行われた来賓挨拶をまとめたものです。「日中R&D連携シンポジウム」プロシーディングの刊行に先立ってJST中国総合研究センターのホームページ で紹介します。なお、「日中R&D連携シンポジウム」プ ロシーディングは2007年度中に発行する予定です。
専門家の皆さん、来賓の皆さん: まず、中国科学技術協会及び私の同僚を代表して、日中R&D連携シンポジウムの開催に当たりお祝いを申し上げます。そして中国総合研究センターの招き、及び行き届いた御手配に対し、衷 心より感謝を申し上げます。
科学技術の研究開発(R&D)活動は人類の知識の量を増し、知識の新たな応用を創出しています。R&Dはイノベーションの過程でもあります。R&Dにかか わるいくつかの重要な要素があります。人、経 費、情報、メカニズム、環境です。通常にいうR&Dの投資というのは一般的には人と経費のことをいいます。し かし、私は情報も含まれるべきだと思います。
ユネスコには、人類の知識を倍にふやすのに必要とされる時間についての統計と予測があります。19世紀におきまして倍増するには50年、20世紀の初めこ ろには10年、20世紀70年代には5年、2 1世紀の初めは3年というデータです。つまり、知識の量は指数関数的に増加しているということです。
情報は資源であり基礎でもあります。メカニズムは各要素間の関係を調整し、システムが有効に機能するための保証であります。メカニズムにはインセンティ ブ、競争、評価、監 視メカニズムなどが含まれています。この評価メカニズムは基礎であり、世界的な難題でもあります。
そして環境はR&D活動を持続的に推し進め、促進するための保証であります。これにはイノベーション政策、法律法規、文化などのソフトな環境、そして情報ネットワーク、施設などのハードの環境、及 び国際競争・協力に関与する外部環境が含まれております。
科学技術は富をつくりだし、生活を変え、未来を切り開いてくれます。したがってどの国の政府も自国のR&Dを重視しています。R&Dへの投入と産出は一国の競争力を図る重要な指標となっています。
近年、中国政府は独自のイノベーション能力を増強し、イノベーション型の国家の建設を国家発展戦略の中核に据え、総合国力を引き上げる鍵としています。そして、科 学技術は第一の生産力であるという位置づけを際立たせ、R&Dへの投資を増やしています。
2006年のR&Dへの投資は2943億人民元、GDPに占める割合は1.4%です。研究者の人数は142万人です。基礎研究、先端技術研究、及び社会公 益性にかかわる技術研究などの分野におきまして大きな成果を上げました。有人宇宙飛行、月探査プロジェクトにおきましては、歴史的な突破を遂げました。し かし、先進国に比べR&D への投資と産出はいずれもまだ大きな開きがあります。
中国科学技術協会は技術者の民間組織であり、国が科学技術事業を進める上での重要な力となっています。当協会は3つの奉仕を趣旨としています。つまり、経 済社会発展のために奉仕する。国 民の科学的素質の向上のために奉仕する。科学技術者のために奉仕するということです。
ミッションも3つあります。学術交流を盛んにし、イノベーション能力を強化することです。学術交流の面では、学術会議と定期刊行物の出版に力を入れていま すし、学術交流の質を高め、知 名度を高めようとしています。2006年に行った学術交流活動は2万5000回余りで、参加者数は延べ340万人に達しまし た。
当協会は現在、全国レベルの学会を191持っています。理工、農業、医学、及びほかのさまざまな分野に及んでいます。個人会員は400万人余りです。省レベルの学会は3700余り、個 人会員は460万人です。
当協会は国家イノベーション体系の重要な構成部分として、特色のある学術交流と科学技術普及活動を通じて、知識の流動を促し、人々のアイデアを刺激し、研究者の成長を促しています。
2つ目のミッションというのは、科学技術の普及活動を行うことで、国民の科学的資質の向上を図ることです。2006年2月、中国政府は『国民の科学的資質 行動計画要綱』を公布し、こ の中では異なる段階における国民の科学的資質を引き上げる目標、任務と措置を打ち出しました。
当協 会は科学技術普及活動における重要な社会の力として、「政府が推し進め、全国民が参加、素質を向上させ、調和を促進する」という方針に従って、政府関係部 門と連携して、こ の基礎的社会事業に取り組んでいます。当協会の末端組織は全国に点在しています。企業ベースの科技協会組織は1万2000余り、個人会員 は251万人です。大学研究所ベースの科技協会組織は747、個 人会員は32万人です。コミュニティベースの科学普及協会は約8000、郷鎮ベースの科学 普及協会は3万余り、農村専門技術協会は約10万で、個人会員は1027万人に及んでいます。
この全国の隅々にあるネットワークを生かして、人々に必要な科学技術知識を与え、科学的な方法・思想を身につけさせ、そして科学知識を利用して実問題を解 決していくスキルを習得させることは、国 民の科学的素質の向上に役立ち、国民の生活の質の改善し、全面的な発展を実現する上で重要な意味を持ちます。
3つ目は民間の国際科学技術交流を一層強化することです。当協会は民間の科学技術組織という特徴を生かし、国連経済社会理事会の諮問組織としての役割を果 たし、中 国の科学技術界を代表して国際科学技術実務に携わり、意見を具申します。当協会及び所属の学会は中国を代表して254の国際民間組織に加盟してい ます。
2006年に受け入れ、または派遣した国際団体の数は6000余り、国際学術会議は300余回開催し、延べ8万人が参加しました。そして重要な国際学術会 議は90余回開催し、延 べ3万人が参加しました。当協会は各国及び国際科学技術組織との交流と協力を一貫して重視しています。
長年来、中国科学技術協会は独立行政法人科学技術振興機構(JST)などの組織と良好な協力関係を築いてまいりました。今後も、JSTとともにこの関係をさらに深めていきたいと思います。
ここで特に強調したいのは、中国総合研究センターは科学技術振興機構が設立した唯一の特定の国に特化した機関だということです。中国総合研究センターは昨 年4月発足以来、両 国の関係者のサポートのもとで両国の科学技術分野における相互理解、交流、協力を促すということを目標に、中国総合研究センターオープ ニング記念シンポジウムの開催、日本語版、中国語版、英 語版ホームページの開設、メールマガジン・マンスリーレポートの発行、中国文献データベースの一般 公開、各種研究会の開催活動等を展開しています。私もよくホームページを見ています。
中国総合研究センターが日中科学技術分野の交流・協力を促進する上で行われてきた成果ある仕事は、両国の科学技術界から高く評価されています。現在、日中 科学技術分野における協力活動の中で両国間のR&Dの協力はますます重要性を帯びてきています。今回のシンポジウムにおいては、プログラムにありますよう に、両国の科学技術関係の政府機関、大学、研究所、民 間企業の代表が招かれて、両国のR&Dについて議論し、双方の交流、コミュニケーションを深めていく というのが目的になっております。
今回のシンポジウムは素晴らしい交流の場を提供しており、必ずや両国のR&D連携を促進する上で積極的な役割を果たすものと信じております。シンポジウム の円満な成功をお祈りいたします。今 後の両国の科学技術の協力が持続的に健全な発展を遂げますことをお祈りいたします。
ご清聴、ありがとうございました。
斉 譲:
中国科学技術協会常務委員会副主席、書記処書記
略歴
清華大学無機化学非金属材料学学士。中国科学技術大学大学院管理科学修士。
清華大学化学部で教えながら科学研究に従事。
1981年、国家科学委員会に転任、工業技術局処長、工業科学技術司副司長、条件財務司長を歴任。
1999年科技部発展計画司長、弁公庁主任。
2004年科技日報社社長(副大臣クラス)。
2005年中国科技協会書記処書記、2006年6月から現職。