【09-005】中国総合研究センター・藤嶋昭センター長が上海交通大学名誉教授の称号を授与されました。
米山春子(中国総合研究センター フェロー) 2009年6月29日
2009年6月19日独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センター・藤嶋昭センター長は上海交通大学において、上海交通大学名誉教授の称号を授与されました。日本人では、2 008年の中曽根康弘元総理大臣に続く授与です。上海交通大学呉旦副総長は張傑総長の委任を受け、藤嶋センター長に名誉教授の証書を渡し、そして校章をつけました。こ れまでに名誉教授称号を授与された日本人にはノーベル賞受賞者の野依良治名古屋大学名誉教授・理化学研究所理事長、有馬朗人・元文部科学大臣・日本科学技術振興財団会長、荒田吉明・元 大阪大学溶接工学研究所超高エネルギー密度熱源センター長、牧野力・元通商産業事務次官・新エネルギー財団会長などの方が挙げられます。
藤嶋センター長は「ホンダ・フジシマ効果」と呼ばれる酸化チタン光触媒の効果を世界で最初に発見し、現在まで世界の光触媒の研究を牽引してきています。藤嶋センター長は1979年から中国を訪問し、中 国研究者への指導や研究交流を精力的に行っているばかりではなく、多くの中国人留学生を受け入れ育ててきました。これまで三十数人の中国人研究者を養成し、中国に帰国した研究者は中国化学界をリードし、中 国全土で活躍しています。こうした功績が認められて、2003年、中国工程院院士に選ばれています。これらの貢献により今回、名誉教授の称号を授与されました。
名誉教授授与式出席のため上海交通大学の閔行(ミンハン)新キャンパスを訪れた際、藤嶋センター長は前国家発展改革委員会ハイテク産業司長で上海交通大学トップの马德秀党書記・校 務委員会主任と会談しました。
会談では、马書記より、上海交通大学は学科増設、国際交流、研究開発などの多方面にわたって中国では近年最も急速に発展してきた大学であり、閔 行新キャンパスは中国の大学の中で最大の面積であると紹介されました。また、马書記は、大学の発展にとって国際交流は不可欠であり、今後、藤嶋センター長のような研究者を招いて、一層、国 際協力研究を推進したいと希望が述べられました。藤嶋センター長からは独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センターの活動について紹介しました。中 国総合研究センターは日本で唯一の公的な外国の科学技術の専門研究機関であること、日中両国の科学技術分野での交流の重要性に鑑み、数年来、その交流および相互理解の促進を目的として活動してきたことなど、紹 介しました。中国総合研究センターでは、このところ毎年、大型シンポジウムを開催していますが、去年のシンポジウムへの陳剛・上海交通大学副総長の参加に続き、今 年のシンポジウムへの马主任および上海交通大学の参加を要請しました。马主任は、中国総合研究センターのような組織は非常に重要であり、今年のシンポジウムにも是非とも参加させていただきますと述べ、快 諾されました。
その後、会談に同席した上海交通大学国際交流課許万国課長から大学の現状などの説明を受けました。上海交通大学の前身は1896年に設立された南洋公学です。こ れは北洋大学堂とともに中国人によって設立された最古の大学です。現在は中国教育省直属の全国重点大学のひとつです。現在約4万人の学生が在籍しており、うち大学院生は約1万4千人、留学生は約2千人です。閔 行新キャンパスの面積は約330ヘクタール、キャンパスの中を循環バスが運行しています。
上海交通大学は日本との交流活動が盛んです。現在大阪大学、京都大学、東京工業大学、早稲田大学、名古屋大学、九州大学、立命館大学などと交流協定を締結しています。新 キャンパスには昭和女子大学から寄贈された大きな会議ホールがあり、図書館の中庭の池まわりには日本から送られた数十本のさくらの木が植えられていて、日中友好のシンボルとして親しまされています。また、日 本のオムロンやSMCなどの企業からも毎年寄付金が贈与されていて、優秀な学生の奨励金に充てられています。その他にも、多くの研究室が日本の大学や企業と共同研究契約を締結しています。
藤嶋センター長の今回の訪問中にも、上海交通大学と日本化学工業㈱の共同研究開発センターが発足しました。藤嶋センター長はその設立記念式典にも招待されました。日本化学工業㈱は2007年に、中 国の上海代表処を設立しました。また、2004年から上海交通大学化学化工学院に日本から帰国した張万斌教授の研究室と化合物合成、不斉触媒の開発などについての共同研究を行い、近 年かなり顕著な成果を挙げていて、多数の特許を共同出願中です。中国の研究の進展を考え、中国の大学の人材にさらに期待して、共同研究開発センターを設立しました。今後キラルリガンドの研究開発、医薬品研究、機 能性材料開発、電子材料研究などを中心に、上海交通大学の研究開発力を生かしながら日本化学工業の有する技術の応用展開を図りたいと日本化学工業㈱の棚橋純一会長から伺いました。設立記念式典の後に、藤 嶋センター長は「Recent Progress in Photocatalysis-Fundamentals and Applications」をテーマとして講演しました。講 演は光触媒の原理から最近の応用まで分りやすく説明し、上海交通大学の教員や学生のみならず、同済大学、華東理工大学、中国科学院上海珪酸塩研究所などさまざまの研究機関からの研究者による聴衆から、大 変好評いただきました。講演後の質疑応答では活発な質問があり、中国には優秀な学生や研究者が多いことを改めて実感したと藤嶋センター長は述べています。講演後、藤 嶋センター長は教え子の上官文峰教授の研究室を訪問して旧交を温めるとともに所属学生とも交流しました。
上海交通大学の上層部との会談を始めとして、式典への出席、講演、多くの研究者や学生および関係者との交流は、藤嶋センター長にとって充実したものとなりました。