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【24-03】【調査報告書】『中国の重点基礎研究ファンディングの動向と国際比較』

2024年05月22日 JSTアジア・太平洋総合研究センター

書籍イメージ

 科学技術振興機構(JST)アジア・太平洋総合研究センターでは、調査報告書『中国の重点基礎研究ファンディングの動向と国際比較』を公開しました。以下よりダウンロードいただけますので、ご覧ください。
https://spap.jst.go.jp/investigation/report_2022.html#fy23_rr04

 

エグゼクティブ・サマリー

 第6期科学技術イノベーション計画の策定後の国際情勢の変遷や国内外の研究開発状況の進展は目覚ましく、これに応じた研究開発の分野・課題の的確な選択と重点化を適時適格に進めることは、わが国が主導性を確保し、国家および経済安全保障を確実にしていく上でも極めて重要な方策である。

 研究開発分野・課題の設定は、常に研究開発の進展を的確に踏まえて柔軟かつ大胆に行う必要があることから、国内の研究開発の実態を把握すると共に主要国の重点分野・課題にも留意した施策の立案と実行が求められている。

 研究コミュニティの盛り上がりや将来の進展の見通しを把握することは重要であり、本稿では、中国の研究開発におけるファンディングの動向およびプログラムの内容に関する近年の動向を把握することを目的とし、中国国家自然科学基金委員会(National Natural Science Foundation of China、以下、NSFCという)の活動に関する分析、評価を行った。

 調査の結果、NSFCが2010年度以降に支援したファンディング・プログラムにおける支援金額の推移をみると、2010年度以降増減を繰り返しながらも増加傾向で、2022年度は過去最高額に達している。18のファンディング・プログラムのうち支援金額の割合が高いのは、面上(一般)項目と青年科学基金であり、これら二つが主要なプログラムと捉えることができる。

 近年は、面上項目の支援金額の割合が減少傾向で、青年科学基金や連携基金の割合が増加している。その他、国家傑出青年科学基金や優秀青年科学基金といった若手育成を目的としたプログラムの割合も増加している。そのため、近年は、若手育成や企業や地方などが抱える課題解決を支援する研究支援を重視していることが伺える。

 次にNSFCが支援するプロジェクトの動向のうち、国家経済、社会、科技発展及国家安全に関わる重大科学問題に関する支援プログラムである重大項目について調査を行った。

 具体的には、NSFCの重大項目のプロジェクト公告内容を対象に、特に中国政府が重要領域として定めている7つのフロンティア領域(人工知能、量子情報、集積回路や重要材料、脳科学と類脳研究、遺伝子と生物技術、臨床医学と健康、深宇宙・地球・深海・極地探査)との関係を調査した。調査の結果、7領域すべてをカバーするような学術管理局はなかったものの、担当する学術分野を軸に様々な領域に関するプロジェクトを募集していることが確認できた。

 また、人工知能を活用したプロジェクトは全ての学術管理局で確認されており、人工知能領域の技術が分野横断的な活用手法として取り入れられていることが確認できた。また、重大項目のプロジェクト公告内容は、国家経済、社会、科学技術の発展、国家安全に関わる重大科学問題に関わるものという特徴があることから、重大科学問題別に当該プロジェクト公告内容の概要を整理した。プロジェクト公告内容に見られる公募する研究テーマの例を見ると、中国だけでなく世界各国でも取り組まれているプロジェクトが多いが、中国ならではの重大科学問題としては工業汚染や土壌汚染に関するプロジェクトが結果から整理できた。

 

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