第41号:環境・エネルギー特集Part 2-低炭素社会実現に向けた新技術の開発
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バイオマス発電システムのエネルギー貢献度

趙黛青

趙黛青(Zhao Daiqing):
中国科学院広州エネルギー研究所エネルギー戦略センター主任、教授

1958年04月生まれ。1997年日本国東北大学熱エネルギーコース専攻卒業。工学博士。東北大学と名古屋大学での研究を経て、2002年に中国科学院の「100人計画」( 海外の優れた人材を選出する計画)に選ばれ、中国科学院広州エネルギー研究所に勤務。現在中国科学院広州エネルギー研究所所長補佐、エネルギー戦略研究センター主任、燃焼実験室主席研究員、広東省政府発展研究センター特約研究員。主に新エネルギーの発展戦略と低汚染燃焼技術などの分野に従事。研究内容はそのほかに再生可能エネルギーの発展戦略と政策研究、エネルギー発展の背景分析、エネルギー技術の環境コスト分析、クリーンな発展メカニズムを推進する能力の建設、再生可能エネルギーの技術的ライフサイクル総合アセスメント、高効率低汚染の燃焼技術、ミクロ燃焼工学など。発表研究論文は100編以上、7冊の専門書の編集に参加(『中国のエネルギーと持続可能な発展』、『中国の2050年までのエネルギー科学技術発展ロードマップ』など)、日本語翻訳専門書(『燃焼汚染物の生成と抑制』)も1冊。また、ソフトエネルギー科学研究会の報告も40回以上。

共著者: 李莉 廖翠萍 林琳 馬隆竜 吴創之

適要

 バイオマスエネルギーは重要な再生可能エネルギーの一つであり、近年ますます注目されてきている。しかし、バイオマスエネルギーの開発と利用が社会へのエネルギー供給の増加にどれほど貢献しているのかについては、さまざまな議論がある。そこで、本稿は典型的なバイオマス原料と発電システムを研究対象とし、ライフサイクルアセスメント理論に基づいてバイオマス発電システムのエネルギー収支モデルを研究するものとする。これによって、バイオマス発電システムが社会へのエネルギー供給の増加にどれほど貢献するのかを分析する。分析の結果、次の通り明らかになった。すなわち、バイオマス発電システムの純エネルギー生産率はバイオマス発電システムの効率と原料の種類によって決定され、全ライフサイクルにおけるエネルギーの収支比は14~20である。また、エネルギーの再生度指標は概ね95%~96%である。このことから、農作物の茎を原料とするバイオマス発電は、高いエネルギー貢献度とエネルギー再生性を備えていると言えるであろう。

0 研究の背景

 バイオマスエネルギーはクリーンな再生可能エネルギーの一種であるが、2006年の開始と共に、農林バイオマス併合発電が急速に発展してきた。対応エネルギーの欠点と気化による変化という二大問題はあるものの、中国は農民の就業先を増やし、農民の収入を向上させ、新しい農村の建設を促進することを目指してバイオマス発電を発展させようとしたのである。しかし、同程度の熱効率を持つ発電メカニズムと比較するとバイオマスエネルギーの密度は低く、バイオマス発電の燃料消費率は火力発電に比べ非常に高い。さらに、バイオマスエネルギーの資源は分散していることから、発電過程に入る前の資源作物の収集、梱包または破砕処理、保管、運搬などの過程でのエネルギー投入も非常に大きい。これらはバイオマス発電が社会へのエネルギー供給に果たす貢献度を増大させることに直接影響するものである。そこで、バイオマス発電を規模的に発展させる初期段階においては、バイオマス発電のライフサイクルにおけるエネルギー投入量と生産量を算定しておく必要がある。この問題に関する研究と報道は海外において非常に多くなされているが、発電システムの規模、バイオマスの種類、農業の機械化の水準が異なることから、本稿では中国の代表的なバイオマス発電システムを5つ取り上げることとする(発電システムデータについては表1を参照されたい)。方法としてはライフサイクルリスト分析法を採用し、エネルギーの投入と生産を分析してバイオマス発電のライフサイクルにおけるエネルギー消費の主要影響要素を明らかにしたい。また、バイオマス発電システムのエネルギー貢献度を評価する基準値を提示して、バイオマス発電のシステム最適化と技術を選択するに当たっての一助となることを目指したい。

表1 バイオマス発電システムデータ一覧
技術類型 直接燃焼 気化発電 混合燃焼
設備規模 25MW 24MW 6MW 3MW 60MW
茎の種類 とうもろこしの茎 とうもろこしの茎 とうもろこしの茎 とうもろこしの茎 とうもろこしの茎
茎の基本熱量値 15472kJ/kg 15472kJ/kg 15472 kJ/kg 15472 kJ/kg 15472 kJ/kg
ボイラーの基準値 高温高圧
9.2MPa、540℃
中温中圧
3.822 MPa、450℃
コンバインドサイクル
ガス燃焼発電5MW
蒸気発電1MW
ガス燃焼発電
3MW
超高圧
13.73MPa、540℃
発電ユニットの配置 25MW 2×12MW 5MW+1MW 3MW 140MW
年間利用時間 6500 6500 6500 6500 6500
発電所使用電力 11% 11% 10% 7% 9%
年間発電量 162500 MWh 156000 MWh 39000 MWh 19500 MWh 390000 MWh
年間供給電量 144625 MWh 138840 MWh 35100 MWh 18135 MWh 354900 MWh
発電効率 31.5% 24.5% 28% 21.5% 36.5%
茎の消費率 0.739kg/kWh 0.950 kg/kWh 0.831 kg/kWh 1.082kg/kWh 0.637kg/kWh
茎の年間消費量 120033t/年 148154 t/年 32409 t/年 21103t/年 248615t/年
平均運搬距離 35km 40km 20 km 15km 50km

1 バイオマス発電システムのエネルギー均衡モデルに関する研究

1.1 リスト分析の範囲

 本研究はバイオマス用の農作物の茎を農業栽培の副産物と位置づけ、研究範囲に農業栽培を含むものとする。また、バイオマス発電のライフサイクルをバイオマス資源作物の栽培、作物の収集、加工と保管、発電所への運搬、発電所の建設と運営という5つの過程に区分するものとする。ライフサイクルでのエネルギー投入について、各ライフサイクル過程において直接投入される形式で消費されるエネルギー(例えば、発電所への運搬という過程での運搬用軽油の消費や発電所の発電過程でのバイオマス燃料の消費)だけでなく、各ライフサイクル過程に関連する燃料生産にいたる工業生産過程(上流)で消費されるエネルギー(例えば、バイオマス資源作物の栽培に投入される窒素肥料の生産過程でのエネルギー消費や発電所建設に必要な原料の生産過程でのエネルギー消費)も計算することとした。これに関しては、図1を参照していただきたい。

図1 バイオマス発電システムライフサイクルリストの分析範囲

図1 バイオマス発電システムライフサイクルリストの分析範囲

1.2 計算モデル

 計算モデルには主にバイオマス資源作物栽培モデル、作物収集モデル、加工保管モデル、発電所運搬モデル、発電所エネルギー均衡モデル、設備原材料の消費量統計モデルがある。

1.2.1 バイオマス資源作物栽培モデル

 茎の生産量は農作物の生産量と穀粒・茎葉比から推定する。バイオマス資源作物の栽培過程で消費される農機具の軽油、化学肥料、農薬、生産物の排出は茎と農作物製品の価値に比例させて分配する。計算公式は以下の通りである。

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 (1)

  qproduct:農作物製品生産量(kg/hm2)

  qbiomass:農作物の茎の生産量(kg/hm2)

 r:農作物の穀粒・茎葉比

 農作物の茎の物質とエネルギー消費は次のように比例分配する:

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  pproduct:農作物製品の市場価格(元/kg)

  pbiomass:農作物の茎の市場価格(元/kg)

1.2.2 作物収集モデル

 作物収集モデルにおいては、図2で示すように作物収集区域を円形に設定し、円の中心に収集保管施設があるものとする。また、茎の収集範囲において同一種の茎の単位面積当たりの生産量は等しく、均等に分布しているものと仮定する。すなわち、農作物と非農作物が土地を占める割合は区域全体において等しいものとするのである。

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図2 作物収集モデル概略図

 作物収集モデルの相関変数の定義と計算公式は以下の通りである。

 q:単位耕地面積当りの茎の生産量(t/hm2)

 k1:耕地面積が土地面積に占める割合

 k2:茎収集係数

 k3:茎利用可能係数

 r: 農作地から収集保管施設までの距離(km)

 Qi:第i収集保管施設の担当茎農作物収集量(t/y)

 Ri:第i収集保管施設の茎農作物収集半径(km)

 TVi:第i収集保管施設の茎農作物収集運搬量(km·t)

 第i収集保管施設の担当茎収集量Qiと農作物収集半径Riは、次の関係を満たす。

  1003zhao_05

 (2)

 第i収集保管施設の茎農作物収集運搬量は次の通りである。

  1003zhao_06

 (3)

 農作物収集過程の運搬燃料の消費の計算公式は次の通りである

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 (4)

 FCcollecting,,y:農作物収集過程の燃料消費量(kg/y)

 FCRtractor:小型トラクターの燃料消費率(L軽油/100t·km)

1.2.3 加工保管モデル

 茎を加工・保管する過程には、茎の破砕または梱包、場内中継搬送、積み重ね保管、取り出し、運搬車積み込みなどの工程がある。この過程の直接エネルギー消費は加工処理設備でのエネルギー消費であり、エ ネルギーの種類は主に電力と軽油である。

 設備のエネルギー消費の計算公式は次の通りである。

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 (5)

 ECtreating&stroring,y:加工保管過程の直接エネルギー消費量(kgce/y)

 CFk:燃料kの標準炭換算係数(kgce/kg)

 FCRk,j:加工保管過程における機械jの燃料k消費率(kg/h)

 DPj:加工保管過程における機械jの電力駆動仕事率(kW)

 WHj,y:加工保管過程における機械jの年間運行時間数(h/y)

1.2.4 発電所運搬モデル

 発電所運搬モデルはある種の平面物流システムであり、バイオマス発電所が物流の中心となる。加工後の茎燃料は収集保管施設から発電所に運ばれるため、収集保管施設は発電所周辺の郷・鎮・村落に分布することになる。発電所運搬過程の物質とエネルギーの消費および排出は、主に運搬機材の使用によるものである。このモデルは次のように設定される。

 ① 運搬機材を統一し、中型トラクターを使用することにしその基準値を採用するものとする。

 ② 燃料の消費については空載と満載を区分せず、燃料消費量の平均を取る。

 発電所に茎を運搬する過程のエネルギー消費計算公式は次の通りである。

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 (6)

 FCtransp-plant,y:発電所運搬過程の燃料消費量(kg/y)

 FCRtractor:中型トラクターの燃料消費率(L軽油/100t·km)

 Dtransp-plant,y:発電所運搬過程の平均運搬距離(km)

 Qtransp-plant,y:発電所へ運搬する茎の量(t/y)

 1.2.5 設備原材料の消費量統計モデル

 ライフサイクル過程は機械設備の投入とその上流の工業生産過程によってエネルギーを消費しているものである。そこで、本研究は作物収集、加工保管、発電所運搬の各過程での設備投入に関して、主に鋼材の消費とその上流で鋼材を生産する際のエネルギー消費について考慮することとした。複数の過程での鋼材の消費量の計算公式は次の通りである。

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 (7)

 Msteel,i,y:過程iでの鋼材の消費量(t/y)

 Wi,j:過程iでの機械jの重量(kg)

 BFi,j,y:過程iで機械jの需要を満たすためのバイオマス燃料の総量(t/y)

 Pi,j:過程iでの機械jの加工処理能力(t/h)

 WHi,j,y:過程iでの機械jの年間運行時間数(h/y)

 LHi,j:過程iでの機械jの使用年限(h)

2 バイオマス発電システムのエネルギー収支分析

 25MWバイオマス直接燃焼発電を例として検討してみると、バイオマス発電のライフサイクル各過程におけるエネルギー収支の計算結果は表2の通りとなる。

 まず、本研究では次のように定義するものとする。すなわち、(純エネルギー生産率)=(エネルギー投入量)/(エネルギー生産量) である。こ れはバイオマス発電システムのエネルギー貢献度を反映させるために用いられる。この定義におけるエネルギーの投入は化石燃料によってなされ、エネルギーは電力として生産される。また、中国の火力発電が発電する際のエネルギー消費は377kgce/MWhであることを参考にして、相当する化石エネルギーのエネルギー量に換算する。

 また、本研究では次のようにも定義する。すなわち、(エネルギー再生可能性)=(全ライフサイクルにおける総エネルギー投入量-全ライフサイクルにおける化石エネルギー投入量)/(全ライフサイクルにおける総エネルギー投入量) である。これはバイオマス発電システムに投入されたエネルギーの再生可能性を反映させるために用いられる。

表2 25MWバイオマス直接燃焼発電のライフサイクル別エネルギー収支リスト分析system
ライフサイクル過程 エネルギーの直接投入
(kgce/MWh)
上流の工業生産に
おけるエネルギー消費
(kgce/MWh)
合計(kgce/MWh)
(1)=1.1+1.2 資源作物の栽培 2.44 6.55 8.99
1.1 化学肥料の施用 0.00 6.28 6.28
1.2 農業用軽油の使用 2.44 0.27 2.71
(2) 作物の収集 0.38 0.18 0.56
(3)=3.1+3.2+3.3+3.4 加工と保管 1.73 3.45 5.18
3.1 茎の梱包 1.37 3.11 4.47
3.2 場内中継搬送 0.05 0.13 0.19
3.3 積み重ね保管 0.04 0.09 0.13
3.4 取り出しと運搬車積み込み 0.27 0.13 0.40
(4) 発電所への運搬 4.32 0.52 4.84
(5) 発電所の建設と運営 0.21 0.55 0.76
(6)=(1)+(2)+(3)+(4)+(5) 化石エネルギーの投入量 9.08 11.25 20.33
(7) バイオマスエネルギーの投入量 438.71 kgce/MWh
(8) 総エネルギー投入量 459.04 kgce/MWh
(9) エネルギー生産量 1MWh、化石燃料377kgceに相当
(10)=(9)/(6) 純エネルギー生産率 377/20.33=18.57
(11)=[(8)-(6)]/(8) エネルギー生産可能度 (459.04-20.33)/459.04=0.96

 表3はバイオマス発電のライフサイクル別エネルギー収支リストを、技術コースごとに分析してまとめたものである。これによると、バイオマス発電のライフサイクル別総エネルギー投入量は、技術的コースごとに大きく異なっていることがわかる。しかし、あるライフサイクルにおける化石エネルギー投入量がそのライフサイクルにおける総エネルギー投入量に占める割合は、すべて概ね4%~5%であり、エネルギー再生可能指標も概ね95%~96%である。このことから、農作物の茎による発電システムへのエネルギー投入は、非常に高い再生可能性を備えていると言うことができる。

表3 バイオマス発電の技術ルート・ライフサイクル別エネルギー収支リスト分析結果
技術ルート 高温高圧
直接燃焼
中温中圧
直接燃焼
気化コンバインド
サイクル
単純気化 20%混合燃焼
バイオマス発電容量 25MW 24MW 6MW 3MW 60MW
発電ユニットの配置 25MW 2×12MW 5MW+1MW 3MW 140MW
ライフサイクル過程での
化石エネルギーの投入 (kgce/MWh)
>資源作物の栽培 8.99 11.56 10.01 12.61 7.59
化学肥料の施用 6.28 8.07 6.99 8.80 5.30
農業用軽油の使用 2.71 3.49 3.02 3.81 2.29
>作物の収集 0.56 0.78 0.40 0.44 0.63
>加工と保管 5.18 6.66 5.76 7.26 4.37
茎の梱包 4.47 5.75 4.97 6.27 3.77
場内中継搬送 0.19 0.24 0.21 0.26 0.16
積み重ね保管 0.13 0.16 0.14 0.18 0.11
取り出しと
運搬車積み込み
0.40 0.51 0.44 0.56 0.33
>発電所への運搬 4.84 7.11 3.08 2.91 5.83
>発電所の建設と運営 0.76 0.77 1.27 1.90 0.65
>合計 20.33 26.88 20.52 25.12 19.07
バイオマスエネルギーの投入量(kgce/MWh) 438.71 564.06 488.07 615.12 370.29
総エネルギー投入量(kgce/MWh) 459.04 590.94 508.58 640.24 389.36
エネルギー生産量 1MWh、化石エネルギー377kgceに相当
純エネルギー生産率 18.6 14.0 18.4 15.0 19.8
エネルギー再生可能性 95.57% 95.45% 95.97% 96.08% 95.10%

 まず、化石エネルギーの投入比率はバイオマス資源作物の栽培過程で最大であり、約40%~50%である。これは主に施用する窒素肥料を川上で工業生産する際のものである。次に、加工保管過程の化石エネルギー投入比率は約25%~30%であるが、これは主に茎の梱包工程において機械でエネルギーを消費した際のものである。また、発電所運搬過程の化石エネルギー投入量と平均運搬距離は正比例の関係にある。バイオマス発電の規模が大きいほど年間茎消費量も大きく、平均運搬量が大きいほど発電所運搬過程の最終化石エネルギー投入比率も大きくなるのである。これらについては表2と図3を参考にされたい。

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図3 バイオマス発電の技術ルート・ライフサイクル別化石エネルギー投入比率

3 結果の分析と討論

 本研究はバイオマス発電システムのエネルギー貢献度について、エネルギー収支モデルに基づいて評価することを目指したものである。そこで、まず10の主な指標(投入指標)を選択し、モデルの1つの指標が改変されるとモデル全体の結論にどのような影響が及ぶのかということを確定することとした。主な指標は数値範囲内の変化であり、対応する純エネルギー生産率の変化の割合については、表4を参照されたい。各指標が単独で±25%の変化の範囲にあるときの純エネルギー生産率の変化の割合については、図4を参照されたい。

表4 モデルの主な投入指標の数値と数値範囲
指標 指標
数値
下限値 下限
振幅
対応エネルギー純生産率の変化の振幅 上限値 上限
振幅
対応エネルギー純生産率の変化の振幅
バイオマス生産量(kg/hm2) 10574 7906 -25.2% -13.2% 14320 35.4% 13.4%
茎の熱量(kJ/kg) 15472 12545 -18.9% -18.5% 15890 2.7% 2.5%
穀粒・茎葉比 2 1 -50.0% -7.3% 3 50.0% 5.8%
窒素肥料施用量(kg/hm2) 203 183 -9.9% 3.0% 223 9.9% -3.0%
農業用軽油使用量(kg/hm2) 79.65 49.65 -37.7% 5.3% 109.65 37.7% -4.8%
ユニット年間利用時間(h) 6500 5500 -15.4% -0.3% 7500 15.4% 0.2%
発電効率 31.50% 25% -20.6% -20.3% 35% 11.1% 10.7%
発電所電力消費率 11.00% 8% -27.3% 3.3% 15% 36.4% -4.6%
運搬距離(km) 35 30 -14.3% 3.5% 40 14.3% -3.3%
梱包用機械の処理量(t/h) 4.05 3.6 -11.1% -2.8% 5 23.5% 4.3%
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図4 バイオマス発電システムの純エネルギー生産率感度分析結果

 計算結果は以下の通りである。

 1)農業用軽油の使用量、発電所電力消費率、穀粒・茎葉比、ユニットの年間利用時間の4つの指標が単独で±25%の範囲で変化するとき、純エネルギー生産率の変化の割合は±5%の範囲内である。このことから、この4つの指標がバイオマス発電システムのエネルギー貢献度に与える影響は大きなものではなく、またこの4つの指標の数値範囲内の変化は研究の結論に影響しないとみなすことができる。

 2)窒素肥料施用量、運搬距離、梱包用機械の処理量の3つの指標が単独で±25%の範囲で変化するとき、純エネルギー生産率の変化の割合は±5%の範囲を超過する。しかし、実際の数値範囲内で対応するこれらの純エネルギー生産率の変化の割合はすべて±5%の範囲内である。このことから、これら3つの指標の数値範囲内での変化は研究の結論に影響しないとみなすことができる。ただし、3つの指標がバイオマス発電システムのエネルギー貢献度に与える影響は比較的大きい。

 3)発電効率、茎の熱量、バイオマス生産量の3つの指標が純エネルギー生産率の計算結果に与える影響は非常に大きい。

 まず、発電効率はバイオマス発電システムのエネルギー貢献度に影響を与える主要要素である。バイオマスの種類が同じという条件下で5つの代表的技術ルートの純エネルギー生産率の計算結果を比べてみると、発電効率は純エネルギー生産率に対して決定的な作用を及ぼすことがわかる。発電効率が高いほど純エネルギー生産率も高くなるのである。

 次に、茎の熱量とバイオマス生産量はバイオマスの種類という要素に属するが、バイオマスの種類はバイオマス発電システムのエネルギー貢献度に影響を与えるもう一つの主要要素である。そこで、単位当たりの茎の熱量に対応する資源作物の栽培過程でのエネルギー消費量を用いて、バイオマス種類要素の影響を分析してみよう。表5は中国の代表的な農業作物の茎の種類を比較したデータである。この中で綿の茎、小麦のわら、水稲のわらの単位当たりの熱量の茎の栽培過程でのエネルギー消費量は、あきらかにとうもろこしのそれよりも高い。その意味するところは次の通りである。すなわち、発電効率が等しいという条件下では、綿の茎、小麦のわら、水稲のわらを利用した発電のライフサイクルにおける化石エネルギーの投入量は、とうもろこしの茎を利用した発電のそれよりも高い。このことから、とうもろこしの茎を利用した発電のエネルギー貢献度は、綿の茎、小麦のわら、水稲のわらを利用した場合のそれよりも高いということが言えるのである。

表5 バイオマス種類要素対比データ (1ムーは約1/15ヘクタール)
茎の種類 穀物
生産量[1]
穀粒・
茎葉比[2]
茎の
生産量
窒素肥料
施用量[3]
軽油
消費量
栽培時の
エネルギー消費
茎の
熱量[6]
栽培時のエネルギー
消費茎の熱量
kg/hm2 kg/hm2 kg/hm2 kg/ムー kgce/t kJ/kg kgce/kgce
綿の茎 1129 3 3387 215 3.73 14.03 15890 0.026
水稲のわら 6260 1 6260 196 9 8.92 12545 0.021
小麦のわら 4275 1 4275 177 6.12 14.12 14635 0.028
とうもろこしの茎 5287 2 10574 203 5.31 7.51 15472 0.014

4 結論

 農作物の茎を原料とするバイオマス発電システムの純エネルギー生産率指標は約14~20であり、エネルギー再生可能指標は概ね95%~96%である。このことから、農作物の茎による発電はエネルギー貢献度が非常に高く、かつそのエネルギー投入には非常に高い再生可能性が備わっていると言うことができる。農作物の茎による発電を発展させることは、社会へのエネルギーの供給増加に対して肯定的な作用を及ぼすのである。

 バイオマス発電は、技術的ルートによってライフサイクルの総エネルギー投入量が比較的大きく異なってくる。しかし、その化石エネルギー投入比率は概ね約4%~5%である。まず、バイオマス資源作物の栽培過程で投入される化石エネルギーがその中では最大であり、約40%~50%となっている。これは主に施用する窒素肥料を川上で工業生産する際のものである。次に、加工保管過程での化石エネルギー投入比率は概ね25%~30%であるが、これは主に茎の梱包工程で機械が消費するエネルギーである。また、発電所への運搬過程での化石エネルギー投入比率も小さくなく、バイオマス発電の規模が大きいほど発電所運搬過程の化石エネルギー投入比率も大きくなっている。

 発電効率とバイオマスの種類は、バイオマス発電システムのエネルギー貢献度に影響を及ぼす二大要素である。社会へのエネルギー貢献度を高めるという観点から考えると、発電効率の高いバイオマス発電技術を発展させ、農作物の茎による発電ではとうもろこしの茎という資源を燃料として多く利用するべきである。

 システムの合理化という観点から考えると、茎の発電所への運搬距離を最適化し、梱包機械の処理量を高めることが有効かつ実行可能な方法である。梱包機械の処理量を高めるには、農業用機械技術の水準を高めなければならない。茎の発電所への運搬距離を最適化するには、発電所を建設する前に必ずバイオマス資源の量的分布との最適な位置関係について検証してから、発電所建設地や収集保管施設の建設地の選定に当たらなければならない。

参考文献:

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