中国におけるp53遺伝子治療の基礎及び臨床研究
2010年 6月23日
張珊文:北京腫瘤医院主任医師
1947年4月生まれ。1970年北京医学院を卒業。現在北京大学臨床腫瘤学院、北京腫瘤医院主任医師、教授、博士課程指導教員を務める。中華放射腫瘤学会温熱療法委員会主任委員、アジアハイパーサーミア学会副理事長、国際ハイパーサーミア学会理事、『International Journal of Hyperthermia』編集委員。1975年から腫瘤の科学研究に従事し、1987年と1993年の二度にわたり日本に留学し腫瘤温熱療法メカニズム研究に携わり、癌遺伝子が熱抵抗性を生じることを明らかにする研究において成果を上げた。1996年以降国家自然科学基金の課題を引き受け、野生型p53遺伝子が胃癌細胞の放射敏感性と熱敏感性の制御に対し重要な調整作用を果たし、ヒトp53組換えアデノウイルスが胃癌細胞の放射敏感性と熱敏感性を著しく高めることを証明し、臨床試験に信頼できる実験的根拠を提供した。2001年以降中国のヒトp53組換えアデノウイルスでⅡ、Ⅲ、Ⅳ期の頭頸部扁平上皮癌を治療する臨床試験を主管し、関連の論文を19篇発表、世界初のヒトp53組換えアデノウイルス(Gendicine)の中国での販売に貢献した。中国の遺伝子治療の開拓者、先導者である。Gendicineの6年の追跡調査による陽性結果は2009年JCOに発表された(IF17.157ポイント)。
要約
基礎研究は、がん抑制遺伝子p53が放射、異常高熱及び殺細胞性抗癌剤により誘発されるDNA損傷への細胞応答に重要な役割を果たし、Adp53を使ってのトランスフェクションは悪性形質の抑制及び逆転の結果となり、従来型治療に対する感作を誘導することを示している。Adp53(登録商標Gendicine®)は2003年10月に中国のSFDA(国家食品及び薬品監督管理局)により市場での販売が認可され、それ以来、Gendicine®は鼻咽頭腫瘍、頚癌、膵癌、肝臓癌、及びその他の癌に成功裡に使用されている。この検証は中国におけるp53の遺伝子治療の臨床及び基礎的研究のもっとも包括的な概括評価である。
前文
その構造及び機能がよく知られ、幅広く細胞のゲノム守護者と見なされているがん抑制遺伝子p53は細胞周期制御、アポトーシス、及び腫瘍細胞増殖の抑制、特に放射、異常高熱及び殺細胞性抗癌剤により誘発されるDNA損傷への細胞応答での転写因子として、重要な役割を果たす。
基礎的実験
p53遺伝子と腫瘍細胞の放射線感受性の関係の研究がZhangらによって報告された。p53ステータスが異なる4種類のヒトの胃癌細胞株(BGC823細胞株)――野生型p53を含むBGC823-wtp53細胞(W)、変異型p53を含むBGC823-mutp53細胞(M)、p53遺伝子を持たないBGC823-vect細胞(neo)、及びBGC823親細胞(823)――がこの研究で使用された。これら4種類のヒトの胃癌細胞株は4Gyの放射線で治療された。野生型p53遺伝子細胞(W)のみが、放射8時間及び24時間後のG1期で強度の細胞周期の停止を示した(それぞれ、元の個体数の67.9%及び61.1%)。その他の変異型p53遺伝子を持つ3種類の細胞株は放射8時間及び24時間後のG1期では細胞周期の停止をほとんど示さなかった。W細胞ではアポトーシス細胞の代表的なサブG1ピークが放射8時間及び24時間後に観察され、アポトーシス細胞率はそれぞれ13.0%及び15.3%であった。その他の3種類の細胞株は放射後、アポトーシス応答を示さなかった。この研究は野生型p53遺伝子が胃癌細胞株の放射の後に、細胞周期の停止、及び腫瘍細胞のアポトーシスを促進することを示した。p53遺伝子の変異はこの応答を無効にし、細胞株の内因性の放射線抵抗性を増加する1,2。
野生型p53遺伝子(Adp53)を含む組換えアデノウイルスが、異なった遺伝子ステータス(W, M, Neo及び823)を持つ4種類のヒトの胃癌細胞株に形質導入した。p53タンパク質の発現が、免疫組織化学分析法及びウェスタンブロット法で検知された。細胞生存は薬剤感受性テストにより評価した。アポトーシスの決定にはTUNEL法を使用した。Adp53に感染している4種類のヒトの胃癌細胞株に4Gy放射をし、細胞周期分布及びアポトーシス率をフローサイトメトリーで分析した。G2/M停止、アポトーシス、及び腫瘍細胞増殖の抑制は100 MOI(感染多重度)のAdp53による感染により誘発され、これが野生型p53の高い形質転換効率及び4種類のヒトの胃癌細胞株の中のp53タンパク質の強い発現の原因となった。in vitroのアポトーシス率により放射線生物学的な有効性を評価すると、Adp53のアポトーシス増感比は放射量が4Gyでそれぞれ、W細胞で3.0、M細胞で3.6、neo細胞で2.2、及び823細胞で2.5であった。野生型p53(W)細胞及び変異型p53(M)細胞の腫瘍異種移植をしたヌードマウスにAdp53の腫瘍内投与を直接行い治療した。48時間後、マウスの腫瘍に6Gyを放射した。相対的な腫瘍増殖曲線は腫瘍の縮小を示した。in vivoのAdp53の抗腫瘍増感比は6Gyでそれぞれ、野生型p53(W)細胞を移植した腫瘍では1.41、及び変異型p53(M)細胞を移植した腫瘍では1.91であった。この研究はAdp53の移入は、細胞内因性のp53 status3,4からは独立して、細胞アポトーシス、in vitroのヒトの胃癌の放射線感受性、及びin vivoの腫瘍の放射線感受性を増加することを証明した。
ウイルスベクターを使用する通常のp53と取り換えると、悪性形質腫瘍の抑制及び逆転につながり、放射線増感を誘発する。これは放射線抵抗性の悪性形質を放射線感受性のものに転換する新しい戦略である。Adp53は腫瘍治療にとって強い放射線増感剤としての役目を果たすことができる。これらの結果は腫瘍臨床試験でのp53遺伝子治療と放射線治療の併用を裏付ける。
臨床メカニズムの研究
Adp53(登録商標Gendicine®)はヒトのp53遺伝子をコードするE1置換された複製不全組み換えアデノウイルスである。Gendicine®は2003年10月に中国のSFDA(国家食品及び薬品監督管理局)により市場での販売が認可されたp53遺伝子治療薬である。Adp53特効のp53 mRNAはAdp53の腫瘍内投与の48時間後に採取された17の評価可能サンプルの中の16(94.1%)の組織サンプル中でRT-PCR分析により検知された。Adp53の腫瘍内投与の48時間後に採取された腫瘍サンプルでのp53遺伝子及びp53標的遺伝子の発現は、免疫組織化学分析法(IHC)により分析された。細胞周期関連遺伝子p21とアポトーシス関連遺伝子Baxの発現量の上昇、及びVEGFの発現量の減少はIHCを使って、Adp53注射後の腫瘍生検で観察した。免疫組織化学分析法(IHC)の以前及び以後の陽性細胞スコアはそれぞれp53(p=0.050)で1.44と2.48、p21(p=0.015)でそれぞれ0.32と0.88、Bax(p=0.088)でそれぞれ0.92と1.63、及びVEGF(p=0.308)でそれぞれ2.80と1.50であった5。
臨床研究
2001年10月から2003年5月までの間、Adp53遺伝子治療と放射線治療を組み合わせた治療を受けている上咽頭癌(NPC)患者(GRTグループ)42名と、放射線治療のみを受けている40名の対照NPC患者(RTグループ)に対し、無作為化対照臨床試験の比較を行った。GRT及びRT、いずれのグループも約70%の患者はIII期或いはIVa期の進行した段階にあった。GRTグループでは、1x1012 vp(ウイルス粒子)の一回用量のAdp53の腫瘍内投与を1週間に一度、8週間に亘って直接的に、或いは放射線の前の鼻咽頭内視鏡検査または超音波検査機の誘導に従い行った。これと並行して放射線治療(35回に分けて70Gy)を鼻咽頭腫瘍及び頸部リンパ節に対し、GRT及びRTのいずれのグループにも行った。患者及び腫瘍の有害事象及び有害反応をそれぞれモニターした。治療2カ月後の時点で、GRTグループの完全奏効率はRTグループの2.73倍(66.7% vs 24.4%)であった。6年間の追跡調査データは好結果を示した。Adp53は、GRTグループの5年の局所腫瘍制御率を、RTグループ(P=0.002)で治療した患者と比べ、有意に25.3%増加した。GRTグループの5年間の全生存率及び5年間の無病生存率はRTグループより、それぞれ7.5%(P=0.34)及び11.7%(P=0.21)高かった。用量制限毒性及び有害事象はAdp53投与後の一過性の熱以外は観察されなかった5。
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)患者に対する放射線治療を組み合わせたAdp53の安全性と有効性を研究・評価した。2001年10月から2003年5月までの間、Adp53遺伝子治療と放射線治療を組み合わせた治療を受けている36名のHNSCC患者(遺伝子治療及び放射線を受けているGRTグループ)と、放射線治療のみを受けている33名の患者(放射線治療のみを受けているRTグループ)に対し、多施設無作為化対照臨床試験の比較を行った。GRTグループでは、患者たちに1x1012ウイルス粒子量のAdp53の腫瘍内投与を1週間に一度、8週間に亘って実施し、並行して放射線治療も施した。何れのグループにも1回2Gy、週5日で照射を行う通常分割照射を実施し、7~8週間、35回の分割照射で全体量70Gyが原発腫瘍、或いは頸部リンパ節に照射した。治療期間中及び治療後に患者たちの有害事象をモニターし、腫瘍はその有害反応をモニターしチェックした。我々はまたCTを使って、40Gy、70Gy、及び検証(治療の2カ月後)点での二つのグループの間の即時応答率を比較した。研究は、Adp53がGRTグループ(P < 0.05)の患者に有意な放射線増感作用を誘発したことを証明した。検証点では、Adp53で治療した腫瘍の完全奏効率はRTグループの腫瘍の3.31倍(64.3% vs 19.4%)であった。用量制限毒性及び有害事象はAdp53投与後の一過性の熱以外は観察されなかった5。Adp53の腫瘍内投与は頭頸部扁平上皮癌患者においては安全で有効であり、Adp53が頭頸部扁平上皮癌治療において潜在的に有効な遺伝子放射線増感剤であることを示唆している6,7。
Adp53は、2004年4月から中国のSFDA(国家食品及び薬品監督管理局)により市場販売が認可された。製品は主に鼻咽頭腫瘍及びその他の頭頸部癌で使用されるが、頸部、膵臓、肝臓、及びその他の末期段階の癌、特に従来の方法では安易に治療出来ない軟部肉腫でも、承認適応症以外であるが使用されている。局所動脈内注入及び胸腔内/腹腔内注入療法も用いられるが、Adp53は通常、固形腫瘍に直接注射する。我々は静脈内注射はしない。現在、p53遺伝子治療は大抵の場合、放射線治療、温熱療法、或いは化学療法と併用されている。これまで中国で3000人以上の癌患者がAdp53で治療を受けた。これは世界中で最大の遺伝子治療グループである。
腫瘍抑制遺伝子p53の機能低下は様々な解剖組織上の癌に頻繁に起こる事象である。子宮頚癌はリスクの高いヒトパピローマウイルス(HPV)による感染と非常に関係がある。ウイルスの癌蛋白質E6はp53遺伝子機能に作用し、中和することが出来た8
子宮頚癌は、世界中の女性の間で二番目に日常的な悪性腫瘍である。疾病末期の予後は芳しくない。化学療法と放射線治療を併用している末期の子宮頚癌患者と放射線治療だけを受けている患者との比較において、メタアナリシス(22の試験、3837患者数)を行った。化学療法から有意な総合的利益は統計的にはなかった9。
数十年に亘って、放射線治療は代表的な治療法であった。世界中の統合的データの分析で、FIGO(国際産婦人科連合)のI、II、III、IVa期5年間の全生存率はそれぞれ、79.4%(36416患者数)、59.8%(52877患者数)、39.8%(45562患者数)及び8.9%(6476患者数)であった。放射線治療を受けたFIGOの患者(141331患者数)全体の5年間の全生存率は55.3%であった10。
2002年3月から2009年9月まで、Zhangらは北京大学付属北京ガン病院で、FIGOのIIB後期段階(8人)とIIIB段階(17人)の合計25人の子宮頚癌患者を治療した。患者たちには放射線と併せAd-p53による治療を施した。放射線治療を受ける直前に、患者たちには一回1x1012ウイルス粒子量のAdp53の腫瘍内投与を1週間に一度、6週間に亘って実施した。それと並行して、患者の骨盤全体に対し合計40 Gyの放射線外部照射(EBR)を20回に分けて行った。子宮周りのブーストは平均10-15Gyで実施した。高線量率(HDR)腔内照射を放射線外部照射の間、或いはそれが終了後に20-25Gyの用量でA点に対して実施した。全ての患者が治療の後に完全奏功(CR)を経験した。唯一、治療後41カ月後に肺転移が原因で一人の患者が亡くなった。放射線治療とAd-p53を併用して受けている患者の5年間の生存率は85.7%で、これは従来の放射線療法のみを受けている患者よりも30%高かった。臨床結果は後期段階の子宮頚癌を治療するための承認適応症以外のGendicine®の使用を支持しているようである。
膵臓癌はアメリカのガン関連死の4番目の原因であり、膵臓癌のケースは中国でも年々増加している。この疾病の死亡率は高く、5年間の生存率は2%以下である。診断、腫瘍細胞生物学、及び薬剤耐性発現に対する理解の進歩にも関わらず、膵臓癌の末期患者の平均的な全体生存は3から5カ月しかない。10%から15%の患者の腫瘍のみが膵臓癌の初期の診断で切除可能である。初期の切除後でも、これらの患者の平均的な生存は12から16カ月しかなく、5年間の生存率は10から15%.である。残念なことに、原発性の膵臓癌の80から90%は、初期の診断の際にすでに血管内に侵襲が広がっていることから、切除が出来ない。これらの患者の予後は有効な治療法がないことから絶望的である。現在実施されている第一線の化学療法及び放射線治療は局部的な疾病の寛解につながるだけである。局部的に進行した疾病の最適な化学・放射線治療法はまだよく定義されていない。強度変調放射線治療や定位的放射線治療と言った新しい放射線治療、及び分子標的治療剤の使用も芳しくない。p53癌抑制遺伝子は70%までの膵臓癌で変異が見られる。p53変異を持つ腫瘍は一般的に非常に悪性で、従来の数多くの治療法に対して抵抗性を持っている。ヒトの膵臓癌細胞株の成長抑制が、組換えAd-p53ベクターで形質導入後、培養液中で観察された。同様の成長抑制現象が、Ad-p53の腫瘍内投与を受けた後のマウスのヒトの膵臓癌皮下腫瘍モデルで発見された11。これらの発見はAd-p53が臨床における膵臓癌治療に有効であることを裏付けている。
2002年の5月から2008年の6月まで、切除不能の膵臓癌患者9人(4人は原発性癌で、5人は転移性癌)を北京ガン病院で放射線治療と併用してGendicine®を使って治療した。いずれの患者も一回1x1012ウイルス粒子量のAdp53の腫瘍内投与を1週間に一度、6週間に亘り超音波ガイダンスを使って行った。Gendicine®注射後の患者に対し、1回2Gy、週5回の通常の分割法で、全体用量50から55Gyの放射線療法を並行して行った。9人の患者の平均生存期間は14.7カ月であり、これは手術を受けている初期段階の膵臓癌患者の平均生存期間に匹敵するものであった。9人の患者の中の一人がまだ治療後3年以上生きていた。これらの予備的な臨床データは、放射線治療を併用したGendicine®治療が治療困難な膵臓癌に対して有益な成果を挙げることを示唆している。
進行肝癌(HCC)に対するAdp53と経カテーテル肝動脈化学塞栓術(TACE)の併用療法の有効性と安全性を評価するために、82人の進行HCC患者グループを対照群としてTACEのみで治療し、68人のHCC患者で構成されるもう一つの群を、p53治療グループとして、Adp53注射を併用したTACEで治療を行った。p53治療グループの総有効率(CR+PR)は58.3%、他方、対照群のそれは26.5%で、有意差(P<0.05)が認められた。p53治療グループの生存率は、3カ月、6か月及び12カ月でそれぞれ、89.7%、76.1%、及び43.3%、他方、対照群はそれぞれ68.2%、37.0%、及び24.0%であった。このことは、p53治療グループの生存率が対照群(p=0.0002)と比較して有意に増加したことを示唆している12。
1997年から2001年まで中国国家自然科学財団(National Natural Science Foundation of China)の支援を得て、Zhangらはヒトの胃癌細胞株の温度感受性に対し腫瘍抑制遺伝子p53が及ぼす効果についての研究を完了し、野生型p53遺伝子が熱ショック処理の後のS期細胞周期停止及び腫瘍細胞のアポトーシスを促進し、その結果、腫瘍細胞の本来の温度感受性を高めることを発見した。
Zhangらはヒトの胃癌細胞株へ移入されたAdp53の温度感受性の効果の研究を完了した。この準備的な研究はAdp53の移入がin vitroの細胞アポトーシスと温度感受性、並びに細胞内因性のp53 statusから独立した、in vivoの腫瘍温度感受性を増加させることができたことを証明した。これらの結果は臨床試験でのp53遺伝子治療と温熱療法の併用の有効性を裏付けている13,14。
2001年10月から2009年12月まで、Shan-wen Zhangらは北京ガン病院で臨床研究を実施し、末期癌患者の治療のためのAd-p53と温熱療法の併用についての安全性及び有効性を評価した。50人の末期癌患者が本臨床研究の対象となった。50人の患者の中、26人は扁平上皮癌、7人が腺癌、そして17人が軟部肉腫であった。癌が再発した44人の患者は従来の治療が効かず、6人は原発腫瘍で今回、この研究の対象となるまでは治療を一切受けていなかった。44人の患者の中、34人の患者は以前手術が失敗し、30人の患者は放射線治療が以前うまくいかず、そして21人の患者は以前、化学療法が失敗していた。今回の臨床研究では、ヒト野生型p53(wtp53)遺伝子をコードするE1置換複製不全組換えアデノウイルスである組換えアデノウイルス(rAd-p53)を使用した。50人の患者には1x1012 vp(ウイルス粒子)の一回用量のrAdp53の腫瘍内投与を1週間に一度、合計で4から54(平均7.7)回行った。毎週、rAd-p53注射の2日から3日後、表在性腫瘍に対しては温度を43~44℃にセットした915MHzのマイクロ波装置で1時間、また深在性腫瘍に対しては温度を42~43℃にセットした41MHzの無線周波数装置で1時間、合計4から29(平均8.2)回、温熱療法を行った。50人の患者の中、29人には平均58Gy用量(30から76 Gyまで)の放射線治療を併用して追加し、6人の患者に対しては平均2サイクル(1から4の間)シスプラチン化学療法を併用して追加した。治療の結果、CR率は18.0%((9/50)、PR率は20.0%(10/50)、従って、有効率は38.0%、一方、SD率は56.0%(28/50)、PD率は6.0%(3/50)、従って非効率は62.0%であった。治療後、9人の腫瘍が消え、その他の41人の中、22人(53.7%)のケースはCTイメージで、腫瘍壊死で50%以上の低吸収域(LDA)があった。50人の患者には、rAd-p53投与後の一過性の熱以外は、用量制限毒性及び有害事象は観察されなかった。平均19.0カ月(3から69カ月)の長期間の追跡調査で、26人の患者が局所再発、そして12人の患者が遠隔転移で死亡した。50人の患者の平均生存期間(MST)は19.0カ月(95% CIは13から26カ月)であった。50人の患者の1年、2年、3年、4年及び5年間の全生存率(OS)はそれぞれ、44.7%、18.8%、14.1%、14.1%、及び14.1%であった15,16。結論として、末期癌に対し温熱療法を併用したAd-p53は安全で、また有効性があり、p53遺伝子治療は末期癌では温度増感性の面で有効であった。
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