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トキの全ゲノム配列図が完成

中国科技日報     2011年 6月14日

 西安交通大学と中国のゲノム産業大手「華大基因」(BGI、本社・深セン市)は今年4月15日、記者会見を開き、トキの全ゲノム配列図が完成したと発表した。鳥類のゲノム解析プロジェクトおよび全ゲノム配列図が完成したのは世界で4例目。トキの保護や生命現象の解明に重要な科学的価値と戦略的意味合いを持つ。

 トキは中国国家1級保護鳥類で、世界絶滅危惧鳥類の1種。進化において独特の位置付けにあり、急速に絶滅に向かっている。1960年、国際保護鳥に指定。現在は陝西省洋県とその周辺地域に約1千羽が分布するのみとなっているが、自然繁殖能力はなお低い。トキのゲノム配列図の完成は希少鳥類の保護に重要な理論的依拠を与えると同時に、絶滅危惧種に関する分子マーカーと種の絶滅危機に対する早期警報に戦略的意味合いを持つ。

 トキの全ゲノム解析ブロジェクトには全ゲノムショットガン配列決定法(WGS)が採用され、中国で自主開発されたアセンブリング・ソフトウェア「SOAP denovo」でアセンブル(データの組み立て)を実行、トキのゲノムサイズは約1.37ギガバイト(Gb)。アセンブルで得られたN50コンティグ(Contig)長は22.2キロバイト(kb)、N50スキャフォールド(Scaffold)長は5.09メガバイト(Mb)以上。トキのゲノム配列図はトキのゲノム研究を進める基礎であり、配列解析と研究を通じてトキのゲノム情報を把握し、生物進化に関する重要な遺伝子を探索し、データバンクと分析プラットフォームを重点的に構築することは、トキの機能ゲノムミクスとエコロジーの後続研究を支える科学的保障となる。同研究を通して、遺伝子の角度から、トキの繁殖力低下や幼鳥の死亡率の高さなどの問題を解明することができるほか、野生種群と飼育種群の遺伝子スクリーニングおよび遺伝子マーカーの研究を行うことにより、トキの疾病に対する早期警報や新たな健康飼育技術の構築が可能となる。また動物絶滅という生命現象の解明や動植物の遺伝資源の保護、希少動植物の司法鑑定の実施に向けた基礎固めにもつながる。

 トキのゲノム計画は西安交通大学と華大基因の共催、陝西漢中国家トキ保護局、陽明大学、中国鳥類学会、中国科学院蘭州大学など中国国内の機関および米国、日本、オーストラリアなど海外の科学者の協力で行われている。