感染症予防研究関連トピック
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漢方薬の新型インフルエンザ発熱緩和効果を証明

中国科技日報     2012年 3月14日

 医学学術誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」はこのほど、中国人学者による臨床研究結果を発表した。同研究は、液状の漢方製剤が新型インフルエンザ(H1N1)が 引き起こす発熱症状を効果的に緩和し、タミフルと同等もしくはそれ以上の効果を持つことを示した。

 首都医科大学付属北京朝陽医院(北京呼吸疾病研究所)からの情報によると、タミフルと液状の漢方製剤(麻杏甘石湯と銀翹散の加減方)による新型インフルエンザ治療に関する臨床研究は、同 研究所および中国衛生部北京医院の王辰教授が中心となり、中国の11の病院による研究チームと共同で実施した。

 同研究が同学術誌で発表されたことは、国際的な権威を持つ医学学術誌が中国の漢方薬研究を認めたことを示す。同研究は科学的な方法により、漢 方薬が新たな呼吸器系伝染病と突発的な公共衛生汚染に対応できることを証明し、漢方薬研究の世界進出について象徴的な出来事となった。同文章が発表されると世界から注目を集め、ア メリカ公衆衛生局の公式サイトを含む3万以上の世界主流サイトで、関連報道が転載された。

 同研究は合理的かつ厳格なEBM(根拠に基づく医学研究)により、軽度と診断された410例の新型インフルエンザ成人患者を、「比較対照組」、「タミフル組」、「漢方薬組」( 麻杏甘石湯と銀翹散の加減方湯剤を使用)、「タミフル+漢方薬組」の4組に分けた。その結果、比較対照組の発熱は26時間持続し、タミフル組は20時間、漢方薬組は16時間持続した。タ ミフル+漢方薬組の発熱時間は15時間となった。統計データの分析により、3つのグループの発熱時間は比較対照組を著しく下回り、漢方薬が発熱時間を短縮できることが明らかになった。

 麻杏甘石湯と銀翹散加減方には炒めた麻黄(エフェドリンが含まれる)が含まれている。一部の国はエフェドリンを含む薬物の服用を禁じている。欧米の学者は麻黄による副作用を懸念しているが、同 研究グループは次のように説明している。漢方剤に使用される麻黄の量は少なく、漢方では安全な範囲内とされている。また同研究で麻黄が含まれる漢方薬を服用した205例の患者のうち、麻 黄による心拍数の増加や高血圧といった副作用が見られず、安全性の高さが証明された。

 2009年秋、インフルエンザの感染に対応するため、漢方および西洋医学の専門家は漢方薬のインフルエンザ予防・治療効果を直ちに研究し、タ ミフルが不足した場合やウイルスがタミフルに耐性を持った場合に備えるよう主張した。漢方および西洋医学の専門家は議論を重ね、中国で「熱病」の 治療に使用される麻杏甘石湯と銀翹散の加減方を統一処方とすることを決定した。これらの漢方薬に使用される12種の原材料は、産地とロットナンバーが同一の煎じ薬とした。液状の漢方製剤を生産する上で、厳 格なマニュアルを採用することにより、煎じ薬の成分を一定化させた。同研究グループは下準備を経て、現代科学により漢方製剤の効果を証明する、突 発的な呼吸器系疾患等にとって重要な意義を持つ同研究をスタートさせた。