中国陸上風力発電の発展状況-その2
2015年 5月27日 金 振(中国総合研究交流センター フェロー)
( その1よりつづき)
○ 買取価格の引き下げと風力発電設備のコストダウンの流れ
2015年1月1日より、5年ぶりに改正された新しい風力発電買取価格が導入れた。中国における風力発電買取価格は、風力資源状況や施工難易度によって4つの風力資源区に分けられ、2014年末までの買取価格は0.51元/kWh~0.61kWhに設定されていた。2015年から、第一類〜第三類風力資源区の買取価格は、1kWあたり、一律に0.02元下げられた(表1)。
価格調整に至った主な政策的背景には、風力発電設備導入の持続的なコストダウンが挙げられる。図6に見るように、この7年間で、中国における風力発電設備の導入コストは、2009年の8000元/kWから半分以上下がり、2015年には4600元/kW前後となった。2020年は、4400元/kW前後まで下がるとの試算もある。
風力発電のコスト vs 火力発電コスト
設備導入コストの低減は発電コスト減にダイレクトに働く。試算によれば、2009年における風力発電コストは0.45元〜0.73元/kWhであったが、2013年には、0.31元〜0.48元/kWhまでに下がった(出典:Zifa Liu and others, The Economics of Wind Power in China and Policy Implications, Energies, 2015)。これは、石炭火力発電の買取価格0.30元~0.50元/kWhとほとんど同じ水準である(図6)。
周知のように、石炭価格の下落のあおりを受けた中国政府は、2014年9月1日より、中国の石炭火力発電の買い取り価格を1kWhあたり平均0.02元引下げた。図7に見るよう地域によって、引下げ率は最大で-6.5%に達している。これが意味することは、石炭価格の下落が発電事業者にもたらすはずだった収益空間が、今回の価格調整によって圧縮されたことになる。また、今後、規制強化が進むにつれ、石炭外部コスト(環境コスト、社会コスト)が増加することが確実視されている点も考慮した場合、石炭火力発電は、発電事業者にとって、従前ほど魅力のある投資分野でなくなりつつあることは明白である。
コスト低減が進んでいる風力発電は、外部コストがほとんど発生しない「安全」な投資分野として注目されている。このような投資心理は、新たな設備導入のブームの呼び水として、今後、関連R&D産業の発展にさらに拍車をかけることになる。このような好循環が形成されつつある現状に鑑みた場合、風力発電コストが火力発電と肩を並べる時代はそう遠くないといっても過言ではない。
今後の展望
2015年4月、国家発展改革委員会のシンクタンクであるエネルギー研究所(ERI)とエネルギー基金会(Energy Foundation)は、中国新エネの導入予測に関する共同研究成果を公表した。本研究は、2050年まで、中国は、全体エネルギー消費量の60%、全体発電の86%に相当する新エネの導入が可能であると指摘した。さらに、2050年までの風力発電設備容量は27億kW、全体発電量の64%に到達可能性があると予測している(出典:Energy Foundation and ERI, CHINA 2050 HIGH RENEWABLE ENERGY PENETRATION SCENARIO AND ROADMAP STUDY, 2015)。この大胆な数値に対し、様々な反対意見が
出ているが、ここではこれ以上の展開はしない。いずれにせよ、この報告書から、中国の新エネの将来をポジティブに捉えようとする時代の流れを読み取ることができよう。
(おわり)