中国インターネット発展状況統計報告
2015年 6月25日(中国総合研究交流センター編集部)
2015年1月、中国ネットワーク・インフォメーション・センター(CNNIC)は、「第35回中国インターネット発展情況統計報告書」を発表した。CNNICは、中国中央共産党・宣伝部部長がトップを務める「中国共産党インターネット環境セキュリティ情報弁公室」に設けられた機関であり、定期的に中国のインターネットの発展状況を報告書としてまとめ公開している。この報告書は数多くの関連報告書の中でも影響力のあるものとして位置づけられており、本報告書は中国の関連政策の動向を読み取る上でも非常に参考となる。
一、基礎データ
- 2014年12月時点で、中国のネット利用者の規模は6億4900万人に達し、2014年通年で3117万人の新規増加があった。インターネット普及率は47.9%で、13年比で2.1ポイント増加している。
- 2014年12月時点で、携帯電話でのインターネット利用者の規模は5億5700万人に達し、13年末より5672万人増加している。インターネット利用者のうち、携帯電話でのインターネット利用者の割合は13年の81.0%から 85.8%に増加している。
- 2014年12月時点で、ネット利用者のうち、農村地域でのインターネット利用者の割合は27.5%に達し、その数は1億7800万人に達し、13年末よりも188万人増加している。
- 2014年12月時点で、インターネット利用者のうち、デスクトップパソコンとノートパソコンを利用してインターネットを利用する人の割合はそれぞれ70.8%と43.2%となっている。携帯電話でのインターネット使用率は85.8%で、13年末より4.8ポイント増加し、タブレットパソコンでのインターネット使用率は34.8%、テレビでのインターネット使用率は15.6%となっている。
- 2014年12月時点で、48.6%のインターネット利用者が、中国のインターネット環境は安全、或いは非常に安全という認識を示し、54.5%がインターネット上の情報は信頼できるとし、60.0%がインターネット上の情報をシェアする行為に対し積極的な態度を示している。また、43.8%のインターネット利用者がインターネット上での発言を好み、53.1%のインターネット利用者が自身はインターネットに依存している、或いは非常に依存しているとの認識を示している。
- 2014年12月時点で、中国の登録ドメイン総数は2060万件で、このうち「.cn」のドメイン名は年間2.4%増加して1109万件に達し、中国でのドメイン総数のうち53.8%を占める。また、中国のウェブサイト総数は335万サイトで、年成長率は4.6%となっている。国際帯域幅は4118663Mbpsで、年成長率は20.9%となっている。
- 2014年12月時点で、パソコンを使用する全国の企業の割合は90.4%で、このうちインターネットを使用する企業は78.7%にのぼり、固定ブロードバンドの使用率は77.4%となっている。また、オンラインでの販売・受注はそれぞれ24.7%と22.8%で、インターネットでマーケッティング活動を展開している企業の割合は24.2%となっている。
二、傾向と特徴
インターネット利用者規模の伸び率は鈍化、非インターネット利用者からインターネット利用者への転化は困難
2014年の中国の新規インターネット利用者数は3117万人で、伸び率は著しく鈍化した。また、非インターネット利用者の利用意欲は低下している。非インターネット利用者のうち、今後利用する意欲のある人の割合は2011年の16.3%から2014年の11.1%に低下し、非インターネット利用者からインターネット利用者への転化は継続的に減少している。インターネットを利用しない理由として、パソコンやネットの利用方法が分からないと答えた割合は61.3%で、インターネットに対する知識と応用スキルの不足が大きな阻害要因となっている。
インターネット普及の地域格差大きく、農村地域への重点的な取り組みが必要
中国のインターネットの全面的な普及への取り組みは顕著な成果を収めており、インターネット普及率の地域間(省と省)の格差は1997年の3.37から2014 年の0.24まで下がっている。しかし、経済が発達している省と発展途上の省の間では依然顕著な格差が存在しており、インターネット環境の立ち遅れた省のインターネット構築プロジェクトは長期的なものとなる見込みだ。また、農村地域のインターネット利用者の規模と普及率は絶えず増加しているものの、普及率で都市部との格差は依然として拡大傾向にあり、2014年12月時点で、都市と農村のネット普及率の格差は34ポイントに達している。その理由として、都市化の過程において農村地域のネット普及への取り組みが疎かになっている点が挙げられるが、都市化率が上昇する中、都市と農村の格差を縮めるための模索とイノベーションが求められている。
タブレットが重要なインターネット接続デバイスに、ネットテレビが新たなエンターテインメントモデルに
タブレットの娯楽性や利便性がインターネット利用者の新たなエンターテインメントツールとしての需要を高めている。2014年末の使用率は34.8%に達し、とりわけ、学部卒以上の学歴の利用者の割合は51%、月収5000元(約10万円)以上の利用者の割合は43%で、テレビでのインターネット利用は15.6%となっている。インターネット技術とブロードバンド技術の発展に伴い、テレビとインターネットを融合したネットテレビが共有性、多機能性や操作性を持つことから、現代家庭のエンターテインメント需要に応えている。
リアルタイムネット接続の基礎的地位がさらに安定
リアルタイムでインターネットに接続する人の割合は継続的に上昇しており、全体の90.6%に達する。2014年、携帯端末でのインターネット接続は安定的な上昇傾向にあり、同年12月末時点で91.2%に達し、13年比で5.1ポイント上昇した。携帯端末でのインターネット接続はいつでも、どこでも可能なことから、コミュニティーツールとして、また位置情報の提供ツールとしてその特性を発揮しているが、近年は決済やゲーム、O2Oといった付加価値の高い業務が展開され、その莫大なユーザー数を活かして大きな潜在的ビジネス価値を生み出している。
携帯での旅行予約が爆発的成長期へ
2014年、携帯端末のビジネス分野での応用は爆発的な成長を遂げ、携帯端末でのショッピングや決済、銀行業務といった応用分野の利用者は年々増加し、この1年間にそれぞれ63.5%、73.2%、69.2%増加、その成長幅は他の分野を大きく上回る。また、長きにわたり低迷していた携帯旅行予約分野は、2014年に194.6%の急成長を遂げ、成長が最も速い分野となった。中国国民の休暇スタイルの変化に伴い、携帯旅行予約が新たな段階に入ったことがうかがえる。
インターネット資産運用ブームの終焉、規模安定
2014年12月時点で、ネット資産運用商品を購入するインターネット利用者の数は7849万人に達し、2014年6月比で1465万人増加した。インターネット利用者における使用率の割合は12.1%で、2014年6月比で2ポイント増加した。収益率の低下と株価回復などの要素を受け、ネット資産運用の利用者の爆発的な増加は終わりを迎え、成長速度は緩やかになり、新商品の拡大速度も緩やかになった。
企業のインターネット普及率は高水準、応用分野はネットビジネスモデルのイノベーションに伴い成長
中国の企業ネットインフラはほぼ完備されており、仕事でパソコンを使用する企業の割合は90%前後の水準に達し、ネットの普及率も80%前後を維持している。インターネットに接続する企業のうち、固定ブロードバンドの接続率は長年連続95%を超えているが、インターネットの応用水準には依然大きな成長の余地がある。内部運営措置の向上を図る企業の割合は低く、またマーケティング、電子商取引といった外部運営の面でインターネット活用を展開する企業の割合も低い。これは企業が従来の経営理念の制限を受けているからだと考えられる。今後は伝統企業のビジネスにおいても、ネットと経済活動の全面的な融合が進み、従来のビジネスモデルへの影響と改革の程度がさらに拡大し、伝統企業とインターネット企業の境界線がますます曖昧になり、インターネットが企業の日常経営に一層切り離せない存在になる見込みである。
一線都市のO2Oは量から質へ転換、全国の医療、家事、O2Oの市場潜在力大きく
O2O(Online to Offline)企業は一線都市をターゲットに経営を展開し、顧客のニーズに迎合して急速にその利用者数を大きく伸ばすとともに、一線都市住民の消費力の高さとインターネット応用スキルの高さは利用者数の拡大を一層加速させることとなった。一線都市におけるO2O中間レベル利用者とハイレベル利用者の割合は合わせて39.2%で、O2O消費は量から質へと転換しようとしている。また、二・三線都市のO2O業務も展開されつつあり、巨大な消費潜在力を前にO2O市場は高成長を迎えようとしている。発展の趨勢をみると、飲食、レジャーO2Oは「団体購入」から生まれたもので、「団体購入」市場の構成はすでに安定化しており、今後発展の余地は細分化していくと見られる。一方、医療と家事におけるO2Oの利用は発展が始まったばかりで、医療と家事分野でのO2Oに対する需要が強く、大きな市場潜在力があると見込まれる。
携帯がPCを超えインターネット動画視聴の第一選択端末に
2014 年、インターネット動画の視聴者数は全体的に増加を続けているが、使用率はやや低下している。携帯端末で視聴する人の数と使用率は増加傾向にあるが、増加幅は顕著に縮小しており、インターネット動画分野は安定期に入っている。ここ数年、PC端末での動画視聴者は減少傾向にあるが、一方で携帯端末での視聴者数は増加している。2014年12月時点で、71.9%の動画視聴者が携帯端末での視聴を選択し、その次にデスクトップパソコンとノートパソコンが選ばれ、使用率は71.2%で携帯がパソコンを抜いてインターネット動画視聴の第一選択端末となった。タブレットとテレビでの使用率は23%前後で、インターネット動画視聴の主なツールの一つとなっている。
PCオンラインゲームは依然市場の中核、携帯オンラインゲームのシェアはさらに拡大、テレビゲームは新たな重要市場に
利用者の規模とオンライン時間、およびその収益などから、パソコンオンラインゲームが最も利用者を引きつけるゲーム市場の中核であることがうかがえる。しかし、ネット利用者の全体的な増加幅の減少と人口構造の変化に伴う低年齢層のインターネット利用者の割合減、及びパソコンオンラインゲームユーザーの年齢増加に伴うユーザーの自然減から、パソコンオンラインゲームユーザー数の成長は緩やかになっている。その一方で、オンラインでのゲームとオフラインでのイベント、またテレビ番組とのコラボ、ゲーム競技とスポーツ競技の融合など新たなビジネスモデルも開拓され、成熟したビジネスモデルへと成長しつつあり、パソコンオンラインゲームの新たな発展の方向性となっている。携帯オンラインゲームの爆発的成長は2014年前半にピークに達し、後半には次第に再編期に入り、安定またはゆっくりとした減少傾向が見られる。2015年はこの傾向が継続するとともに、携帯オンラインゲームのシェアはさらに拡大すると見込まれる。2014年のゲーム機販売解禁によりテレビゲームは新たな重要な市場となった。
しかし、目下のテレビゲーム市場の発展情勢からみて、この先1年以内に急速に市場を占めるのはゲーム機ではなくネットテレビである。ネットテレビの成長は、利用者の規模や利用者数の増加率、市場での拡大のいずれをとってもゲーム機より速いが、コストや販売ルート、政策など多くの阻害要素が懸念されているため、ゲーム機メーカーも依然慎重な傍観的姿勢を維持し、大規模な転換には至っていない。そのため、2015年はテレビゲームはまずネットテレビが先に販売を拡大し、ゲーム機の拡大には依然時間を要すると見込まれる。
出典:中国ネットワーク・インフォメーション・センター(CNNIC)「第35回中国インターネット発展状況統計報告書(2015年1月)」
http://www.cac.gov.cn/files/pdf/hlwtjbg/hlwlfzzktjbg035.pdf