2014年 中国衛星応用の進展について(その1)
2015年 7月13日(中国総合研究交流センター編集部)
2014年、中国の衛星応用事業は着実に進展を遂げた。北斗衛星ナビゲーションシステムの産業への応用と大衆化応用が全面的に展開され、北斗は海外にも進出した。衛星「高分2号」も予定通り打ち上げられ、高解像度リモートセンシングデータは「サブメートル級」時代に突入した。初の低軌道モバイル通信衛星も打ち上げられ、「戸戸通」や「船船通」などのサービスが衛星通信の応用をさらに深化させ、衛星と衛星応用の産業は着実に成熟に向かった。
各項の衛星応用政策・法規が整備
2014年1月22日、国務院弁公庁は「地理情報産業発展の促進に関する意見」を発行・通達した。この中では、今後しばらくの間、「リモートセンシングデータの取得・処理能力の向上」「地理情報装置製造の振興」「地理情報ソフトウェアの研究開発と産業化のレベルの向上」「地理情報とナビゲーション・測位の融合サービスの発展」「地理情報のさらに深いレベルでの応用の促進」の5大分野を重点として発展を進めることが明言された。
1月28日、交通運輸部と公安部、国家安全生産監督管理総局は、「道路運輸車両動態監督管理方法」を共同で発布し、「観光バスやチャーターバス、3類(隣接県間の旅客運輸)以上の路線バス、危険貨物運輸車両は出荷前、基準に合った衛星測位装置に取り付ける」「重型トラックとセミトレーラートラクターは出荷前、基準に合った衛星測位装置に取り付ける」との規定を設けた。
1月30日、国務院弁公庁は「地理情報産業発展の促進に関する意見」を発布し、国家が5年から10年の年月を費やし、地理情報産業の成熟した産業チェーンを形成し、産業の国際競争力を顕著に高める方針であることを明らかにした。意見は、地理情報産業は、近代測量や地理情報システム、リモートセンシング、衛星ナビゲーション・測位などの技術を基礎とし、地理情報の開発利用を核心とし、地理情報の取得・処理・応用に従事するハイテクサービス業であるとした。
3月11日、国家測量地理情報局は、「北斗衛星ナビゲーションシステムの推進・応用に関する若干の意見」を発布した。「意見」は、北斗システムの地上インフラの建設を加速しなければならないと指摘した。第一に、北斗の地上型補強システムの建設を強化する。現存の国家衛星ナビゲーションの連続運用基準局ネットワークの改造を加速し、北斗に対するコンパティビリティを実現する。各地における北斗地上型補強システム建設を統一指導し、統一的な配置、段階的な実施、および北斗地上型補強システムの建設を全面的に推進する。近代測量基準の幅広い使用の推進を加速し、さらに高精度の北斗ナビゲーション・測位サービスをユーザーに提供する。第二に、位置データの総合サービスプラットフォーム建設の水準を全面的に向上させる。国家地理情報公共サービスプラットフォーム「天地図」などの強みとなる資源を十分に利用し、近代測地原点の建設を加速し、位置サービス体系の建設を推進する。地図・地理情報、リモートセンシングデータ情報、交通情報、気象情報、環境情報などの情報資源を総合し、クラウドコンピューティングなどの技術を採用し、総合的な位置データ総合サービスを各種のユーザーに提供する。
4月、中国衛星航法測位サービス協会は、「中国衛星航法測位サービス産業発展白書(2013年度)」を発布した。これによると、2013年の中国の衛星航法測位サービス産業の総生産額は1040億元を超え、2012年を28.4%上回った。このうち北斗の生産額は100億元を超え、産業に占める割合は9.8%に達した。ナビゲーション・測位端末の総販売台数は3.48億台を突破した。2013年末までに、中国の北斗端末の民間保有量は130万セットを超えた。
5月、解放軍総参謀部は「中国人民解放軍衛星ナビゲーション応用管理規定」を発布した。「規定」は衛星ナビゲーションの応用管理業務の規約を定めるもので、衛星ナビゲーション応用の職責や任務、計画、申請の審査・認可、応用組織、技術保障、安全管理などについて明確な規定を行った。
6 月10日、国家発展・改革委員会弁公庁と財政部弁公庁は共同で、「北斗衛星ナビゲーション産業重大応用モデル発展特別プロジェクトの組織・展開に関する通知」を発布し、2014年から2016年まで北斗衛星ナビゲーション産業重大応用モデル発展特別プロジェクトを組織することを決定した。
8月5日、国家発展改革委員会と国家測量地理情報局は共同で「国家地理情報産業発展計画(2014--2020年)」を発行した。「計画」は、地理情報産業発展で得られた成果と直面するチャンスと試練を指摘し、2020年までの中国の地理情報産業発展の総体要求と重点分野、主要任務を打ち出し、政策措置と保障条件を明確化した。「計画」は、測量リモートセンシングデータサービスや測量地理情報装備製造、地理情報ソフトウェア、地理情報とナビゲーション・測位の融合サービス、地理情報応用サービス、地図の出版・サービスなどの7つの方面から、2020年までの中国の地理情報産業発展の重点分野と主要任務を計画した。
8月27日、国家発展改革委員会・工業情報化部・科学技術部・公安部・財政部・国土資源部・住宅都市農村建設部・交通部の8部委は「スマート都市の健全発展の促進に関する指導意見」を共同で通知し、鮮明な特色のある一群のスマート都市を2020年までに建設し、集合と波及の効果を大幅に高め、総合的な競争力を大きく高め、生活向けサービスの保障や改善、社会管理の革新、ネットワーク安全の維持などで成果を収めるとの方針を打ち出した。
10月、国務院は、「『物流業発展中長期計画(2014--2020年)』の発行に関する通知」を発布し、物流の情報化建設のさらなる強化にあたっては、北斗ナビゲーションや「物聯網」(ウーレンワン、モノのインターネット)、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モバイル・インターネットなどの先進情報技術の物流分野への応用を強化する方針を打ち出した。
北斗の応用の着実な推進
2014年、北斗衛星ナビゲーションシステムは、安定的で信頼できる運用を保ち、サービス性能は不断な向上を見せた。システムのグローバルなネットワーク構築もさらに加速され、次世代北斗ナビゲーション衛星の2015年の打ち上げの確保がはかられた。新技術と新体制の試験と検証が展開され、衛星ネットワークに適時に組み込まれた。さらに北斗地上型補強システムの建設も加速された。
1.ナビゲーションのインフラ整備、システムのサービス性能の向上
1月、重慶北斗衛星地上型補強システムが完成した。都市計画や交通ナビゲーション、緊急措置など幅広い分野に応用できる。山間都市における北斗地上型補強システムの設置は全国初となった。
9月11日、国家衛星ナビゲーション高精度サービスのインフラとして「北斗地上型補強システムプロジェクト」の建設が正式に始動された。このプロジェクトは中国兵器工業集団が総体研究機関となり、2015年末までに枠組となるネットワークと一部の地域暗号化網の基準局ネットワークを完成させ、運用を開始し、メートル級精度の測位サービスを提供する。2018年末までに、全国範囲の地域暗号化網の基準局ネットワークを完成させ、メートル級とデシメートル級、センチメートル級、ポストプロセッシングミリメートル級のサービスを提供する。
4月25日、羲和システムの室内外の高精度測位ナビゲーション信号が正式に発信され始めた。11月、国内最初の羲和携帯チップが武漢で発表された。この新製品は、北斗携帯端末を応用したメートル級測位を全国に先駆けて実現した。
2.多くの核心技術でブレークスルーを実現
3月、中国航天科工情報技術研究院の西安航天華迅公司は、第4世代の高性能北斗/GPSナビゲーションチップの開発成功を発表した。第4世代GPSと北斗デュアルモード測位チップはそれぞれ0.11μmと40nmの2規格の製造工程が用意され、そのうち40nmの製造工程は現在、国内の北斗チップのうちで最も進んだ生産技術となっている。この第4世代チップの補足感度は-147dBm、追跡感度は-163dBmに達し、精度は2.5mに及んでいる。
8月、泰斗微電子社のTD1020を採用した中興通訊(ZTE)のスマートフォン「G601U」(BDS/GPSナビゲーション、防塵・耐衝撃・防水)が、最初の商用大量生産を行った。これは中国が自主開発した北斗チップがスマートフォン産業に正式に応用されたことを示すニュースとなった。
航芯1号チップ
10月、杭州中科微電子有限公司は、北斗無線チップと北斗ベースバンドチップを統合した北斗シングルチップの開発に成功した。先進的な55nmの製造工程を採用し、各項目の性能指標は国際的な先進レベルに到達した。国産の北斗チップが全面的にシングルチップ時代に入ったことを示すできごととなった。
11月、2014年上海軍民両用技術促進大会で、上海北伽ナビゲーション科学技術有限公司は40nmの北斗ナビゲーションチップ「航芯1号」を発表した。
12月4日、中国電子科学技術集団第54研究所ナビゲーション専門部は、新たに研究開発された40nm級自動車ナビゲーション用北斗ナビゲーションチップを展示した。
3.産業応用の開発、総合ソリューションの形成
4月1日、「北斗電力高精度時報・全ネットワーク時間同期システム応用モデル」プロジェクトが正式に始動した。同プロジェクトは国網江蘇電力や南瑞集団など6社が共同で実施し、江蘇の企業を拠点として産業応用モデルを打ち立て、北斗システムの電力産業への応用の整った産業チェーンを形成した。
9月、交通運輸部と解放軍総装備部は北京で、北斗に基づく中国海上捜索救助情報システムモデルプロジェクトを共同で始動させた。同プロジェクトは、北斗ナビゲーションシステムの交通運輸分野への2番目のモデルプロジェクトとなる。広大な海洋のユーザーに北斗海上捜索救助用の携帯電話とその他の北斗端末設備40万台を展開し、救助船舶に船上ベースステーションを建設することにより、一般の携帯電話の信号を沿岸のベースステーションではカバーしきれない救助船舶の周囲地域まで拡張した。
9月16日、民政部と総装備部の共催による「北斗衛星ナビゲーションシステム国家総合減災・緊急典型モデル応用プロジェクトのフィージビリティ・スタディ報告審査会」が北京で開かれた。会議では、北斗国家総合減災応用モデルプロジェクトのフィージビリティ・スタディ報告の審査が一致して採択された。
11月、国家発展改革委と財政部は、新彊生産建設兵団が提出した第8師石河子市北斗システム精密農業応用モデルプロジェクト実施プランを認可し、国家戦略的新興産業発展特別項目の資金計画への採用を明確化した。同モデルプロジェクトは主に、農業近代化の推進加速という兵団の総体配置をめぐって、石河子市を委託都市とし、北斗農業機械航法測位サービスプラットフォームと地上型補強システムを建設し、応用政策と基準の研究を展開し、北斗農業応用端末5万台の応用を手配するものだ。
国家気象局はすでに、北斗に基づく海風・海波実験とレーウィンゾンデシステム実験を行っており、北斗に基づく気象予報体系の構築を着実に進めている。海風・海波実験は主に、北斗システムの反射信号を利用し、海風の速度と海波の高度を測定するもの。レーウィンゾンデシステムは主に北斗測位機能を利用し、高層の風力場を観測し、低空の観測データが不正確であった問題を解決するものである。
農業部門と中国衛星ナビゲーションシステム管理弁公室は共同で、「北斗海洋漁業応用モデルプロジェクト」の実施を開始した。同プロジェクトは、遼寧・山東・浙江の3省と大連市で1万1千台余りの北斗中遠洋端末を利用してモデル応用事業を実施し、インターフェースの統一された規範化された市県級陸地監督制御指揮プラットフォーム12個を大連市に設立するものである。
11月22日,航法測位サービス戦略研究と羲和スマートフォン応用に関するシンポジウムで、武漢大学と泰斗微電子、中興通訊が共同開発した北斗高精度測位携帯電話サンプルが発表された。同型機は、中国が自主開発した北斗/GNSSチップを採用し、北斗システムと羲和システムを融合して信号を増強し、1メートル級精度の室外測位能力を実現した。
北斗高精度測位携帯電話サンプル
(その2へつづく)
※本稿は「衛星応用」編集部より許可を得て翻訳・転載したものである。
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