世界で影響力のある中国企業(その1)
2015年 8月14日 金 振(中国総合研究交流センター フェロー)
近年、中国企業の海外進出が加速しており、世界的な影響力をもつ中国企業の数も増加しつつある。業種(分野)別に見た場合、アリババと騰訊(Tencent)といったIT関連企業の躍進が目立つ。本 稿では、1)企業ブランド価値、2)企業価値(時価総額)、3)M&Aの実績に関する3種類のデータをもとに、世界で影響力のある中国企業について整理すると同時に、日本や韓国との比較も行った。3 種類のデータに限る場合、中国企業の実績は日本と韓国のそれを、それぞれ上回る結果となった。日本企業の世界影響力の相対的な低下と中国勢の台頭が加速しているといってもよい。本 稿が日本企業の国際戦略分析に少しでも役に立つことを願う。
世界Top500ブランド企業ランキング
2015年2月、Brand Finance社は、ブランド価値の高い世界トップ企業500社をランキング化した調査結果「世界Topブランド企業500/2015」を発表した。
ランクインした国別企業数を見た場合、第一位はアメリカであり、全体の37%に相当する186社を輩出している。そのつぎを追うのが中国と日本であり、それぞれ40社がランクインした(図1、表1)。第 四位のイギリスは39社、五位であるフランスと六位のドイツが、それぞれ33社と30社を抱えている。お隣の韓国は12社がこのランキングに入った。
図1 世界Topブランド企業にランクインした国別企業数・割合(2015年)
出典:Brand Finance, Global 500 2015に基づき、CRCCの金が作成
http://www.brandfinance.com/images/upload/brand_finance_global_500_2015.pdf
表1 世界Top500企業ブランドにランクインした中国企業名、ブランド価値
調査結果に基づいた試算によれば、2015年2月まで、Top500企業のブランド価値総額は4.6兆ドルに達している。ブランド価値は、企業のブランド戦略やブランド使用料レート、ブ ランド収益率などを考慮して計算され、将来において想定される経済成長率や税負担などの要素も加味されている。ブランド価値ベースで見た場合、アメリカのランクイン企業186社が全体総額に占める割合は44%で あり(図2)、ランクイン企業数ベースで見た割合37%(図1)を上回っている。また、ランクイン企業数ベースでは肩を並べていた中国と日本は、ブ ラント価値ベースの計算では中国が日本を480億ドル上回る結果となり、順位にも差がついた。
図2 世界Top500ブランド企業にランクインした国別ブランド価値・割合(2015年)
出典:Brand Finance, Global 500 2015に基づき、CRCCの金が作成
http://www.brandfinance.com/images/upload/brand_finance_global_500_2015.pdf
中国企業ブランド価値を業種ごとの国内割合で見た場合、通信・IT分野(12社)のシェアがもっとも大きく、36%を占めている(図3)。その次に、銀行(33%)、石油・ガス(10%)、保険(9%)な どが並ぶ。一方、機器製造(5%)、不動産(2%)、鉄鋼(1%)は少数に留まった。
図3 世界Top500企業ブランドにランクインした中国価値の業種ごとの国内割合(2015年)
出典:Brand Finance, Global 500 2015に基づき、CRCCの金が作成
http://www.brandfinance.com/images/upload/brand_finance_global_500_2015.pdf
特に近年、eコマース分野において急成長を遂げているアリババや京東(JD.com)、スマートフォンメーカーである小米(Xiaomi)の活躍が目立つ。アリババは、国 内最大オンライン決済サイト支付宝(Alipay)やネットショッピング天猫(Tモール)などを傘下に置くネットビジネス最大手である。中国のインターネット・ショッピングは、2 008年の210億ドルから拡大し続け、2014年には3,900億ドルに達した(出典:A.T.Keanrey, China’s E-Commerce Market in 2014)。中 国国家統計局の最新データによれば、2015年1月から6月まで、社会消費品小売総額(141,577億元)に占めるインターネット・ショッピング売り上げの割合は11.6%までに拡大した(出典:中国統計局「 2015年6月社会消費品小売総額の成長率10.6%」)。
図4 ランクインした中国通信・IT企業の業種内割合
出典:Brand Finance, Global 500 2015に基づき、CRCCの金が作成
http://www.brandfinance.com/images/upload/brand_finance_global_500_2015.pdf
IT/eコマース分野はさらに、三大電話・通信会社(伝統Big 3)とそれ以外のIT企業(新興企業)に分けることができるが、IT新興企業のブランド価値の割合は47%に達し、伝統Big 3の53%i i " " " " / / に近づいている(図4)。これには、中国IT新興企業のさらなる活躍を期待する市場心理が反映された評価結果であると見てもよい。例えば、北 京に本社を置く中国スマートフォン大手小米( Xiaomi)" の 場合、/ 2 009年に創業したにもかかわらず、わずか5年で、年間6千万台を販売する世界第4位の会社までに成長した(2014年)。2 015年6月時点における世界シェアは5.3%で あり、引 き続き4位を守っている( 表2)。
表2 2015年&2014年、4月~6月までのスマートフォン出荷台数、市場占有率
出典:IDC Worldwide Quarterly Mobile Phone Tracker, July 23, 2015に基づき、C
RCCの金が作成
http://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS25804315
2015年Top500ブランド企業ランキングでは、前年から49社が入れ替わった。新たにランクインした企業を国籍ごとに整理すると、一位はアメリカであり17社がランクインしている。中 国と日本はそれぞれ7社があがっており、第二位に並んでいるが、業種には大きな違いが見られる。新たにランクインした日本企業7社の構成は、保険分野が4社、通信分野1社、物流分野1社、自 動車部品メーカ1社であったのに対し、中国の場合、IT/eコマース分野3社、製造分野2社、鉄鋼業1社、銀行業1社の構成となっている。2015年は、中国のIT/eコマース企業の躍進が目立つ年でもある。
( その2へつづく)