第107号
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中国における産学研連携の概況(その2)

2015年 8月 6日 孫福全(中国科学技術発展戦略研究院院務委員)

その1よりつづき)

2.現状と成果

2.1 産学研連携の持続的推進

(1)産学研連携による論文件数[3]

 論文総数と共同論文総数の推移を見ると、産学研連携の4つの方式すべてにおいて顕著な増加傾向にある。ただし、高等教育機関と研究開発機関の学研連携の場合には、主に学術研究論文を指す。

 

図表1 産学研連携方式別の論文・共同論文総数の推移

図1

 

図表2 産学研連携方式別の論文総件数に占める共同論文の比率

図2

(2)産学研連携による特許件数

 産学研連携の4つの方式別に特許申請件数を比較すると、連携する各機関が共同で申請する特許申請件数は順調に伸びていることがわかる。ただし、学研連携、産研連携、産学研連携の場合は、産学連携の場合に比べ低い水準に留まっている。(図表3)しかし、産学連携の場合だけを見ると、双方が2011年に申請した特許の総件数は2001年当時の24.6倍に達しているが、共同申請件数では同時期の11.9倍に過ぎない。

 

図表3 産学研連携方式別の特許申請件数、共同申請件数及び共同申請の割合

図3

(3)企業からの委託研究による科学研究費

 2009年から2012年にかけて、企業からの委託研究による研究開発機関に支払われた科学研究費は298,323万元から474,153万元と上昇傾向にあり、その年平均伸長率は14.7%に相当する。また、全科学研究費に占める企業からの科学研究費は、比較的安定しており目立った増減は見られない。一方、企業より高等教育機関に支払われた科学研究費も1,716,703万元から2,604,821万元へと増加はしているが、年平均12.9%の伸長率に留まり、全科学研究費は下降傾向にある。

 

図表4 研究開発機関における科研費の内訳

図4

 

図表5 高等教育機関における科研費の内訳

図5

2.2 産学研連携の多様化(大学の産学研連携形式の多様化)

 第1は、交流プラットフォームの構築である。フォーラムやシンポジウム、成果展示会、商談会などを共同開催し、情報と技術の交流を行う。大学院生の共同育成や実習拠点の共同設立などを通して、人材交流とともに知見を相互に交換する。

 第2は、連携プロジェクトの展開である。これには企業による研究開発の委託や研究開発機関の技術移転、産学研連携による重要課題対応などが含まれる。一部の企業は技術的課題を解決するため、公開入札の方式を通じて研究開発機関との連携を図っている。たとえば、金川グループホールディングスは技術的課題をシンポジウムウの形式で国内の100以上の機関に向けて発表し、数十にのぼる研究機関と協力関係を構築した。課題の入札方式も、多くの企業が産学研を結びつけるために行う典型的な方法である。

 第3は、科学研究拠点の共同設立である。連合実験室や工学技術センターなどが含まれる。たとえば、上海交通大学と宝製鋼株式会社は、自動車用鋼板使用技術連合実験室を共同設立し、自動車用鋼板の総合形成技術と溶接技術の開発を行った。レノボグループホールディングスと北京航空航天大学は、高性能計算応用連合実験室などを共同設立している。

 第4は、研究開発組織の設立である。共同出資あるいは技術参加の形で研究開発組織を設立し、技術開発と産業化を行う。たとえば、北京化工大学と寧波海天株式会社は、寧波海天化工科技株式会社を共同設立し、化学工業の新製品と新技術の開発に取り組んでいる。また、中国チャイナ·ネットコム·グループホールディングスと北京北郵通信技術会社、上海アルカテル株式会社、華為技術株式会社は、ブロードバンド業務応用技術国家プロジェクト実験室株式会社を共同出資によって設立した。

 第5は、産業技術革新戦略連盟の構築である。企業、大学、研究開発機関間の共通のニーズに基づき、企業を主体として連盟は構築される。知的財産権と技術標準の形成を主要な柱とし、経済原理に基づいて運用され、法律により制約・保護される持続的で安定的な協力関係を契約をもって構築することにより、明確で効果のある利益共同体を形成する。これにより、リソースの共有と開発コストの引き下げ、リスク分散、開発機関の短縮、市場の拡大が可能になる。

 産業技術革新戦略連盟には、新世代石炭化工産業技術創造戦略連盟のような産業別のものもあれば、紹興繊維産学研戦略連盟のような地域的なもの、自動車軽量化技術革新戦略連盟や高効率省エネアルミニウム電解技術革新戦略連盟のような産業と地域にまたがるものもある。

その3へつづく)


[3] 中国科学院文献情報センターの特定テーマ研究報告「世界科学技術発展の情勢と産学研連携の分析」。