第109号
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中国の大学サイエンスパークについて(その6)

2015年10月26日  康琪(中国科学技術発展戦略研究院体制管理研究所 シニア研究員)

その5よりつづき)

事例1 同済大学サイエンスパーク

1 発展プロセス

 同済大学サイエンスパークは、科技部と教育部が共同で認定した国家級大学サイエンスパークである。百年以上の歴史を誇る名門大学である同済大学の独自性ある学科と人材の優位性、豊かな研究成果、強い科学技術力がその土台となっている。同済大学サイエンスパークは、政府の政策誘導を推進力とし、大学の有力な学科を委託先とし、パークの空間的拡張やサービスプラットフォームの構築などを通じて、大学からスピンオーバーする知識と人材とを積極的に取り入れ、大学の研究成果の転化と知識を土台とした起業に有利な空間と発展環境、優れたサービスを提供してきた。

 2002年6月24日、教育部と科技部は「北京理工大学などによる国家大学サイエンスパークの建設開始の同意に関する通知」(国科発高字[2002]188号)を発布し、同済大学サイエンスパークによる国家大学サイエンスパークの建設開始にも同意した。

 2003年6月18日、上海同済企業管理センターと上海同済科技実業株式有限公司、上海五角場ハイテク連合発展公司は、サイエンスパークの運営主体となる「上海同済サイエンスパーク有限公司」を共同投資によって設立した。7月21日、同済大学サイエンスパークは、国家大学サイエンスパーク認定に向けた科技部と教育部の評価を受け入れた。10月16日、科技部と教育部は、同済大学サイエンスパークの国家大学サイエンスパークの認定を許可した。

 2003年10月、上海同済サイエンスパーク有限公司は、関連団体と協力し、無形資産の注入によって、電子工業部第二十三研究所の土地(サイエンスパーク邯鄲路基地)の共同開発を開始し、プロジェクトの建設・開発を担当する「上海同文置業有限公司」を設立した。2007年1月、上海同済サイエンスパーク有限公司は、新たな投資と増資を通じて、上海同文置業有限公司の登録資本を1000万元から3000万元に拡大し、同公司の株式の83%を保有する親会社となった。12月、上海同済サイエンスパーク有限公司は、上海市科技起業センターとの協力を通じて、パーク内の小企業の育成とインキュベーションを担当する「上海同済サイエンスパーク・インキュベーター有限公司」を共同設立した。

 2004年6月、「上海同済楊浦科技起業発展有限公司」が「上海同済楊浦科技起業パーク有限公司」に改名した。

 2006年10月、企業の発展戦略の調整に基づき、上海同済楊浦科技起業パーク有限公司と上海同済サイエンスパーク有限公司の再編・合併が行われた。合併後の社名は「上海同済サイエンスパーク有限公司」に統一され、登録資本は1.72億元に増加した。

 2007年、同済サイエンスパーク傘下の子会社である「上海同済サイエンスパーク企業管理有限公司」と「上海同済サイエンスパーク・インキュベーター有限公司」の再編・合併が始まった。2008年10月、再編・合併が完了し、社名は「上海同済サイエンスパーク・インキュベーター有限公司」に統一され、登録資本は800万元となった。

 2010年、上海同済サイエンスパーク有限公司は、同済サイエンスパーク浙江慈渓基地の開発・建設を担当する「浙江同済産業パーク株式有限公司」を投資参加によって設立させた。

 2010年11月、上海同済サイエンスパーク有限公司と上海市普陀区政府は共同投資によって、サイエンスパーク滬西エリアの建設(前期分)と企業誘致サービスを担当する「上海同普科技起業有限公司」を設立させた。サイエンスパークの同エリアは、「独自技術のイノベーション基地」「サイエンス企業のインキュベーション基地」「イノベーション・起業人材の育成基地」「官・産・学・研の結合模範基地」として建設され、科学技術分野のイノベーション型の高成長企業を重点とした起業誘致が行われるものとして計画された。

 2011年9月28日、上海同済サイエンスパーク有限公司が60%、常熟大学サイエンスパークが40%を出資し、「常熟同済サイエンスパーク有限公司」を共同設立した。登録資本は8000万元だった。常熟同済サイエンスパーク有限公司は、同済(常熟)サイエンスパークのプロジェクトの開発・建設を担当するものとされ、敷地面積は1万5325平方メートル、延床面積は6万3000平方メートルに及んだ。

 2012年3月31日、科技部と教育部は共同で、2011年度の国家大学サイエンスパークの実績評価の結果を発表した。同済大学国家大学サイエンスパークはこれで、「A類(優秀)国家大学サイエンスパーク」と認知され、全国トップ10にランクインした。

 2012年5月17日、同済大学技術移転センターが正式に開設された。同センターは、上海同済技術移転サービス有限公司が運営を担当することとされた。同公司は、上海同済サイエンスパークと上海同済資産経営有限公司の共同出資によって設立され、同済大学国家大学サイエンスパークの重要な構成要素とされ、パークと民間に向けた開放的なサービスプラットフォームとなっている。

その7へつづく)