第110号
トップ  > 科学技術トピック>  第110号 >  中国の海岸帯の直面する脅威、管理の実践、「十三五」科学技術サポート活動の重点―青島市・東営市・連雲港市を例に(その3)

中国の海岸帯の直面する脅威、管理の実践、「十三五」科学技術サポート活動の重点―青島市・東営市・連雲港市を例に(その3)

2015年11月20日

張 傑:国家海洋局第一海洋研究所

略歴

1963生まれ。内モンゴル自治区包頭市出身。博士、研究員。研究テーマ:海洋リモートセンシング技術・応用研究。


王 進河:東営市海洋・漁業局
崔 文連:青島市環境監視測定セントラルステーション
趙 新生:連雲港海域使用保護動態管理センター
馬 毅:国家海洋局第一海洋研究所

その2よりつづき)

3 中国海岸帯管理「十三五」科学技術サポート活動の重点

 現在の海岸帯管理の実践行動に基づき、「十三五」(第13次5カ年計画、2016-2020)期間の海岸帯総合管理の科学技術サポート活動の重点をまとめ、「成功技術の普及」「新技術の応用研究」「監視測定予報体系の研究と構築」「海岸帯管理業務のシームレスな結合」の面からそれぞれ論じる。

3.1 成功技術の普及

 海域の映像監視は、管轄海域の現状をリアルタイムで動態的に監視測定することを可能とする。東営市はこの技術を利用し、石油作業台や港湾、堤防などの監視測定を展開している。海域立体監視指揮車は、海洋災害の応急監視測定で優位性を持っている。連雲港は全国に先駆けてこれを配備し、データ伝送や画像処理、指揮、通信などの業務をこの指揮車によって実現している。Xバンドレーダーは、石油流出や海氷を監視測定する有効な手段である。東営市はXバンドレーダー監視測定システムを建設し、石油流出の測定や艦船の識別などに応用している。3地級市は現在、これらの監視測定技術の応用で成功体験を蓄積しており、全国の沿岸地級市での普及・応用が期待されている。

3.2 新技術の応用研究

 無人機や無人船、水中ロボットなどの無人設備の海洋監視測定における応用技術の研究を強化する。海岸帯や海域での精密監視測定と違法行為証拠収集への無人機使用の高効率・機動力・高解像度という優位性を発揮する。無人船による接近観測を利用し、新型の海洋調査観測方法を発展させ、従来型の有人船舶による作業を一定程度代替し、人材の投入とコストの支出を減らす。水中観測での不足を補うため、水中ロボットなどの国際的な先進設備を導入し、カスタマイズされたセンサーを搭載して水中データを観測することを検討する。

3.3 監視測定予報体系の研究と構築

 海岸帯監視測定には、大気の観測、陸地の監視測定、潮間帯の監視測定、水面の監視測定、水中の監視測定などが含まれ、海陸空の多層的な観測が必要となる。既存の監視測定体系を土台として、複数のプラットフォーム・手段・学科からなる立体総合監視測定技術体系を早期に構築し、水文気象や環境汚染、赤潮、石油流出、海洋生態要素などの監視測定任務を遂行することが求められている。監視測定体系の構築を通じて、衛星・航空・無人機・レーダー・陸上配備監視測定ステーション・船舶・ブイ・無人船・水中ロボットなどの監視測定プラットフォームによる相補的な協同作業を実現し、全方位的な立体作業を遂行し、海岸帯地区の十分なカバーと立体精密監視測定データの大量の取得を実現する。効率的なデータ伝送と通信のネットワークを構築し、海岸帯の監視測定データのすばやい記録・伝送・配布などの機能を実現する。高い時空解像度に基づく遠隔操作と実測のデータに基づき、国外の優れた予報モデルを参考とし、高潮や赤潮、緑潮、石油流出、富栄養化、海岸侵食などの予報技術と災害損失評価モデルに関する研究開発を行い、データ取得や予報、産品制作、分析、配布などからなる業務化された監視測定予報体系を形成する。

3.4 海岸帯管理業務のシームレスな結合

 海岸帯管理業務は、複数のプラットフォーム・手段・研究分野からなる総合技術活動であり、業務活動と新技術、新方法、監視測定体系、予報体系などが有機的に結合した系統的な事業である。我々は、既存の業務活動と結びつけ、新技術や新方法などとの相互補充を実現し、業務監視測定の水準と予報能力を高めると同時に、新技術や新方法と既存の業務体系とがぶつかり合う点にも特に注意し、そのスムーズな連結を実現し、その優位性を活用し、既存の業務体系へのシームレスな接合を進める必要がある。

4 結語

 中国の海岸帯は、人類が最も密集し、開発活動が最も活発で、経済が最も発達したエリアであり、資源開発と環境保護という矛盾が最も際立ったエリアでもある。海洋災害が頻発し、人類の開発活動が激しいことから、中国の海岸帯エリアは現在、厳しい脅威に直面している。沿岸各都市は、長年の努力とモデル事業を通じて、海岸帯管理において一定の成果を上げてきた。本稿は、中国の海岸帯エリアが受けている圧力と直面している脅威を概論し、青島市・東営市・連雲港市の海岸帯を例として、海岸帯の総合管理において取られている関連措置の実践を紹介し、その現状と不足とを総括したものである。海岸帯と近隣海域では、映像や無人機、立体監視車、Xバンドレーダーなどの技術による複数の手段の監督管理が実現され、地域の海洋環境監視測定と予報の実践が展開された。だが無人機や無人船、水中監視測定などの新技術装備の応用は十分に深まっているとは言えない。既存の監視測定体系においては、監視測定の要素が少なく、多くの要素からなる全方位的で全天候型の立体監視測定は実現できていない。少量の監視測定データだけでは、地域の予報の精度を保証することはできない。

 東営市と連雲港市、青島市の海岸帯管理の実践を総括・分析した上で、本稿は、「十三五」期間の中国の海岸帯総合管理の科学技術サポート事業の重点として次の4点を提案する。(1)3地級市の海域映像監視や海域立体指揮車、Xバンドレーダー技術の面での技術経験を参考とし、全国の海岸帯地級市において、この種の成功技術の応用普及を展開する。(2)無人機や無人船、水中ロボットなどの無人設備の海洋監視測定における応用技術の研究を強化し、新技術の海岸帯業務における普及を推進する。(3)複数のプラットフォーム・手段・学科からなる総合監視測定技術体系を構築し、海陸空の多層的立体監視測定を発展させ、監視測定所と監視測定設備の配置密度を高め、高精度・高時空解像度の監視測定データを大量に取得し、予報結果の精度を高め、データ取得・データ伝送・予報・分析・製品の製作・配布などからなる業務化監視測定予報技術体系を形成する。(4)成熟技術・新技術・新方法・新監視測定予報体系・海岸帯管理業務を協調的に結合し、シームレスな接合をはかる。

(おわり)


※本稿は中国科学院海洋研究所より許可を得て翻訳・転載したものである。
【原文】http://www.marinejournal.cn/hykx/ch/reader/create_pdf.aspx?file_no=20150203&flag=1&journal_id=hykx&year_id=2015