中国の資源環境の収容制約―地域の差異と類型化(その2)
2016年 3月 3日
(その1よりつづき)
1.2 データ処理
利用可能土地資源の潜在力算定にかかわる図像資料には、デジタル地形図(国家基礎地理情報センター、1000m×1000m)、土地利用現状図(2000年、中国科学院地理科学・資源所)、県級行政区画図(2004年、国家基礎地理情報センター)があり、統計データには、県別土地利用台帳データ(2000年と2008年、国土資源部)、人口データ(2008年、国家統計局)がある。データ処理には、図像資料の準備、図形の整合と重ね合わせ、データ取得、空間分析などの段取りがある。(1)デジタル地形図を底図として、「>3000m」「3000—2000m」「2000—1000m」「1000—500m」「<500m」の区分で全国の地形標高分級図を作る。「<3o」「3o—8o」「8o—15o」「15o—25o」「>25o」の区分で全国地形傾斜分級図を作る。(2)デジタル地形図または土地利用図を基準図とし、その他の図を投影変換し、それぞれの図をトリミングし、整合とトリミングを施した図を重ね合わせ、複合図を作り、データ取得と空間分析に用いる。(3)重ねあわせた複合図を土台として、指標算定方法の要求と必要なパラメータに応じて県別データの算出と計算を行う。(4)指標算定方法に照らして利用可能土地資源潜在力を計算し、土地資源に対して収容制約度の分級を行う。
利用可能水資源潜在力の算定のデータ処理には4つの段取りがある。
(1)各県級行政単位の1956年から2000年までの多年平均水資源量を収集する。各河川流域の水文・生態の特徴を根拠とし、水資源評価技術大綱に照らして、河道生態の水要求量と制御不能な洪水量を計算し、地表水利用可能量を算出する。各県級行政単位の1956年から2000年までの多年平均地下水資源量を収集する。各水文地質単位の水文特徴を根拠とし、地下水系統生態水要求量と利用不能な地下水量を計算し、地下水利用可能量を算出する。地表水利用可能量と地下水利用可能量を足して、本地区の開発利用可能水資源量を算出する。
(2)各県級行政単位の2005年の農業・工業・住民生活・都市公共の実際の水使用量と生態用水量を収集し、開発利用水資源量を計算する。
(3)域内河流の上流に近い水門観測所のここ10年の実測平均年流量データを収集・計算し、多年平均入境水資源量とする(相応するデータの条件がない地区では、2005年の実測データで代替する)。γ値に基づいて、入境開発可能利用水資源潜在力を計算する。
(4)公式に基づいて、利用可能水資源潜在力と一人当たりの利用可能水資源潜在力を計算し、水資源に対して収容制約度の分級を行う。
環境ストレス度の算定にかかわる化学的酸素要求量排出量とSO2排出量のデータは、中国環境統計年報(2005—2008年、中国環境監測総站)を元にしている。地理区域総量制御系数A値の選択は、「地方大気汚染物排出標準制定技術方法」(GB/T13201-91)に照らして確定する。区域総量制御系数Aの具体的な数値は、公式A=Amin+0.1×(Amax-Amin)に照らして確定する(表1参照)。データ処理にあたってはまず、数値の自然分布法則に照らして、大気環境ストレス度(SO2)、水環境ストレス度(化学的酸素要求量)に対する等級区分を行う。その後、大気環境ストレス度(SO2)と水環境ストレス度(化学的酸素要求量)の等級区分の分布図を空間的に重ねあわせ、二者の最高の等級を環境ストレス度の等級とし、総合的な等級区分を行う(表1)。
地区 | A値の範囲 | A値の提案 |
新彊、西蔵、青海 | 7.0—8.4 | 7.14 |
黒竜江、吉林、遼寧、内蒙古(陰山以北) | 5.6—7.0 | 5.74 |
北京、天津、河北、河南、山東 | 4.2—5.6 | 4.34 |
内蒙古(陰山以南)、山西、陜西(秦嶺以北)、寧夏、甘粛(渭河以北) | 3.5—4.9 | 3.64 |
上海、広東、広西、湖南、湖北、江蘇、浙江、安徽、海南、台湾、福建、江西 | 3.5—4.9 | 3.64 |
雲南、貴州、四川、甘粛(渭河以南)、陜西(秦嶺以南) | 2.8—4.2 | 2.94 |
静風区(年平均風速<1 m/s) | 1.4—2.8 | 1.54 |
生態制約度の算定にかかわる図像資料には、利用可能土地資源潜在力の部分ですでに紹介したもののほか、中国科学院地理科学・資源所の中国植被類型分布図(1:400万)、中国地形類型分布図(1:100万)、全国第2回土壌侵食リモートセンシング調査成果図などがある。
関連データには主に、砂漠化、土壌侵食、石漠化、水源保持、防風防砂、生物多様性保護などの分級標準データがある。分級閾値は「省級主体機能区域区分技術規程」を参照のこと。データ処理は次の4つの手順によって行われる。
(1)1kmメッシュデータを採用し、砂漠化・土壌侵食・石漠化脆弱性の分級標準に基づき、生態脆弱性の単一因子分級を行う。水源保持・土壌保持・防風防砂・生物多様性保護の重要性分級データに基づき、生態重要性の単一因子分級を行う。
(2)生態脆弱性と生態重要性の単一因子分級図をそれぞれ複合処理し、脆弱生態系に現れた1kmメッシュ生態系脆弱類型が単一型であるか複合型であるかを判断し、重要生態系に現れた1kmメッシュ生態系重要類型が単一型であるか複合型であるかを判断する。
(3)単一型生態系脆弱類型区域に対しては、単一因子の脆弱性の程度に基づき、生態系の脆弱性程度を画定する。複合型生態系の脆弱類型に対しては、最大制限要素法を用いて生態系脆弱性に影響する主導的な要素を確定し、主導的な要素となる単一因子の脆弱性程度に基づき、生態系の脆弱性程度を画定する。生態重要性程度の確定もこれに類する。
(4)1kmメッシュの生態系脆弱性程度と重要性程度の分析結果に対し、区域総合方法と主導要素方法、類型合併方法などを用いて、生態系の脆弱性と重要性の程度の分級を行う。
(その3へつづく)