知能ロボットの現状及び発展(その2)
2016年 8月31日
任福継:合肥工業大学情感計算・先進智能機器安徽省重点実験室教授、徳島大学教授
主な研究テーマ:ロボット
孫暁:合肥工業大学情感計算・先進智能機器安徽省重点実験室副教授。
主な研究テーマ:感情コンピューティングとロボット
(その1よりつづき)
2 知能ロボットの関連技術と発展動向
2.1 知能ロボットの関連技術
知能ロボット技術の水準をはかるにあたっては、一定の技術指標と標準が存在する。ロボットの能力評価の指標には、(1)知能程度:主にロボットの外界に対する感覚と感知の能力を指し、記憶・演算・比較・鑑別・判断・決定・学習・推論などの能力が含まれる、(2)機能特性:主にロボットの任務の融通性やある分野における汎用性、空間占有などを指す、(3)物理性能指標:一般的に、ロボットの力や速度、信頼性、共用性、寿命などを指す――が含まれる。ロボットの構成要素には一般的に、アクチュエータや駆動装置、センサー装置、制御システム、複雑な機械などが含まれる。以下では、これらいくつかの方面から、知能ロボットの関連技術を紹介する。
1)アクチュエータ
ロボットのアクチュエータは、ロボットの本体である。ロボットのアーム(ある場合)は一般的に、開ループ空間リンク機構を採用し、このうち対偶(回転対偶または移動対偶)は関節と呼ばれ、通常、関節の数がそのままロボットの自由度の値となる。関節の配置形式と運動座標形式の違いに基づき、ロボットのアクチュエータは、直角座標式や円柱座標式、極座標式、関節座標式などの類型に分けられる。特定の応用場面においては、擬人化を考慮し、ロボット本体の関連部位を、基盤やウェスト、アーム、リスト、ハンド(ホルダーまたは末端アクチュエータ)、走行部(移動ロボットの場合)などと呼ぶ。
2)駆動装置
駆動装置は、アクチュエータの運動を駆動する装置であり、制御システムの発する指令信号に基づき、動力ユニットを通じてロボットに相応の動作をさせるものである。駆動装置には電気信号が入力され、線変位・角変位量として出力される。ロボットの使用する駆動装置は主に電力駆動装置であり、ステッピングモーターやサーボモーターなどがある。このほか特定の場合の特定のニーズに応じて、液圧や空気圧などの駆動装置も採用される。
3)センサー装置
ロボットは一般的に、各種のセンサーを通じて外界の情報を獲得する。ロボットの内部運動や作動状況、外界の作動環境などの情報をセンサーでリアルタイムに測定し、必要に応じて制御システムにフィードバックし、設定された情報と比較した後、アクチュエータを調整し、ロボットの動作が既定の要求に符合するようにする。測定装置としてのセンサーは大きく次の2種類に分かれる。一つは内部情報センサーで、ロボットの各部分の内部状況、例えば各関節の位置や速度、加速度などの測定に使われ、測定した情報をフィードバック信号としてコントローラーに送り、閉ループ制御を形成する。
もう一つは外部情報センサーで、ロボットの作業対象や外部環境などにかかわる情報を取得し、ロボットの動作を外部状況の変化に適応させ、よりハイレベルな自動化を実現し、さらにはロボットにある種の人間の「感覚」を与え、知能化発展を実現するものである。例えば視覚や聴覚などの外部センサーが取得する作業対象や作業環境などの関連情報を利用して、大きなフィードバック回路を構成し、ロボットの作業精度を大きく高めることができる。
4)制御システム
一つは、集中式制御であり、ロボットの全部の制御を一台のマイクロコンピューターで完成する。もう一つは、分散(級)式制御であり、複数のマイクロコンピュターによってロボットの制御を分担する。例えば上下二級のマイクロコンピュターによってロボットの制御を共同で行う際には、マスターコンピューターは通常、システムの管理・通信・運動学・動力学を計算し、下級のマイクロコンピュターに指令情報を送るのに使われる。下級のスレーブにあたる各関節はそれぞれ一つのCPUに対応し、補間演算とサーボ制御処理を行い、特定の運動を実現し、マスターコンピューターに情報をフィードバックする。作業任務の要求の違いに応じて、ロボットの制御方式は、逐点制御と連続軌跡制御、力(トルク)制御に分けられる。
5)知能システム
知能システムは、人間に似た知能や行為を生むコンピューターシステムである。知能システムは、従来のノイマンコンピューター上で自己組織的または自己適応的に稼働することができ、新世代の非ノイマン構造のコンピューター上での自己組織的または自己適応的な稼働も可能である。「知能」が指すものは幅広く、その概念自体も絶え間なく進化しており、その本質にはさらなる模索が求められている。このため「知能」という語には、完全で確実な定義を与えるのは難しい。だが一般的には次のように表現されている。
知能とは、人類の大脳が行う比較的高級な活動の体現されたものであり、少なくとも知識の自動的な取得・応用能力、思考・推論の能力、問題解決の能力、自動学習の能力を備えている。知能ロボットの「知能」とは、人類の知能に似た機能を実現することを指す。知能システムには、処理の対象にデータだけでなく知識が含まれるという大きな特徴がある。知識の表示・取得・アクセス・処理の能力があることは、知能ロボットシステムと従来の機械システムとの主要な区別の一つである。このため知能システムとは、知識処理に基づくシステムでもあり、これには、▽知識の表示語言、▽知識の構成ツール、▽知識ベースを構築・維持・検索する方法と環境、▽現存の知識のリユーズのサポート――が必要となる。
知能システムは往々にして、人工知能による問題解決モデルによって結果を取得する。従来のシステムにおいて採用されていた問題解決モデルと比べると、次の3つの特徴がある。(1)その問題解決アルゴリズムは往々にして非確定型または啓発式のものである。(2)その問題解決は大幅に知識に依存している。(3)知能システムの問題解決は往々にして、指数型の計算複雑性を備えている。知能システムにおいて通常採用されている問題解決方法は大きく、検索・推理・計画の3つの種類に分けられる。知能ロボットシステムと従来のシステムのもう一つの重要な区別は、知能システムに現場感知(環境適応)の能力が備わっていることにある。現場感知とは、それが位置する現場の現実世界の抽象物とインタラクションし、現場への適応を実現することである。このインタラクションには、感知と学習、推理、判断、これに応じた動作が含まれる。人々が言う自己組織と自己適応とはこれを指す。
6)知能マンマシンインタフェースシステム
知能ロボットはまだ完全に自律的に稼働することはできず、人間とのインタラクションが必要となる。完全に自律的なロボットだとしても、リアルタイムの任務執行状況を人間にフィードバックする必要がある。知能マンマシンインタフェースシステムとは、よりフレンドリーで自然な自己適応性の高いマンマシンインタラクションをロボットがユーザーに提供することを可能とするシステムである。知能インタフェースハードウェアにサポートされた知能マンマシンインタフェースシステムには主に、▽自然語言によって人間とマシンとの直接的な対話を実現する、▽音声や文章、図形、図像などの多くの媒介によって人間とマシンとの交流を行う、▽さらには脳波などの生理信号を通じて人間とインタラクションする、▽ユーザーの種類の違いに自己適応する、▽ユーザーの需要の違いに自己適応する、サポートされるコンピューターシステムの違いに自己適応する――などの機能を持つ。
2.2 知能ロボット技術の発展の現状
知能ロボットは、第3世代ロボットである。この種のロボットは、多くの種類のセンサーを備え、複数のセンサーが得た情報を融合し、変化する環境に有効に適応し、高い自己適応能力と学習能力、自律機能を持つ。知能ロボットには多くのカギとなる技術があり、これらの技術は、知能ロボットの知能性の高低にかかわる。カギとなる技術は主に、次のいくつかがある。
(1)マルチセンサー情報融合技術。マルチセンサー情報の融合とは、多くのセンサーから得られた感知データを総合し、信頼性と精度、全面性のより高い情報を産出し、融合したマルチセンサーシステムは、測定対象の特性をより全面的に正しく反映し、情報の不確定性を除去し、情報の信頼性を高めることができる。(2)ナビゲーション・位置計測技術。自律移動ロボットのナビゲーションにおいては、局部でのリアルタイムの障害回避にあたっても、全局の計画にあたっても、ロボットまたは障害物の目下の状態と位置を正確に把握し、ナビゲーションや障害回避、経路計画などの任務を完了する必要がある。(3)経路計画技術。最適経路計画は、特定の、またはいくつかの最適化原則に基づき、ロボットの作業空間において、初期の状態から目標の状態までを結ぶ、障害物を回避できる最適経路を見つけることである。(4)ロボット視覚技術。ロボット視覚システムには、図像を取得・処理・分析し、可視的に出力・表示するイメージング技術が含まれる。核心的な任務となるのは、特徴の抽出と図像の分割、図像の識別である。(5)知能制御技術。知能制御の方法によってロボットの速度と精度を高める。(6)マンマシンインタフェース技術。マンマシンインタフェース技術は、人間とロボットの交流をより便利で自然なものとすることを研究する。
(その3へつづく)
※本稿は任福継、孫暁「智能機器人的現状及発展」(『科技導報』第33巻第21期、2015年11月,pp.32-38)を『科技導報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司