中国節水灌漑設備の発展の現状・問題・趨勢・提言(その5)
2017年 1月24日
袁 寿其:江蘇大学国家ポンプ・システム工学技術研究センター研究員
博士指導教官。流体機械と灌漑排水機械の研究に主に従事。
李 紅:江蘇大学国家ポンプ・システム工学技術研究センター
王 新坤:江蘇大学国家ポンプ・システム工学技術研究センター研究員
節水灌漑技術・設備の研究に主に従事。
(その4よりつづき)
2 節水灌漑設備の発展への提言
2.1 丘陵地区における節水灌漑の総合技術研究
2.1.1 貯水・引水・揚水を結合した水資源開発・連合利用技術
(1)雨水貯留技術。
(2)取水ポンプステーションの最適配置技術。
(3)雨水貯留・引水・揚水施設の技術統合。
(4)水資源の関連政策決定と連合利用。
2.1.2 丘陵地区における低水頭発電と太陽エネルギー揚水加圧技術
(1)丘陵地区における小型ダム・溜池・貯水池・小型貯水池の低水頭発電の設備と技術、丘陵地区の太陽光発電技術を開発し、丘陵地区における生活と節水灌漑システムに電力を提供する。
(2)丘陵地区に適した太陽エネルギーソーラーポンプと低水頭発電用ポンプを開発する。
(3)スプリンクラーマイクロ灌漑のキー設備と灌水施肥一体化設備を開発・設置する。
(4)丘陵地区における軽量・小型灌漑ユニットと中型灌漑ユニットを開発する。
2.1.3 丘陵地区における土壤水分コントロール技術
(1)丘陵傾斜地の湿潤土壌の特性と水分分布の法則。
(2)丘陵傾斜地の湿潤土壌の影響因子と影響法則。
(3)丘陵傾斜地の土壤の湿潤均等性の影響因子。
(4)丘陵傾斜地の湿潤土壌の計算モデルと土壤水分運動モデル。
2.1.4 丘陵地区の主要経済作物(工業原料作物)の水需要法則と灌漑制度
(1)丘陵地区の主要経済作物の水需要法則。
(2)丘陵地区の主要経済作物の水分ストレス応答の特徴とメカニズム。
(3)丘陵地区の主要経済作物の水需要と水分ストレスのコントロール技術。
2.1.5 丘陵地区の高効率節水灌漑技術
(1)スプリンクラー灌漑灌水技術。丘陵地区のスプリンクラー灌漑技術の特質、丘陵地区のスプリンクラー灌漑灌水技術のパラメーター計算方法、丘陵地区のスプリンクラー灌漑結合設計、丘陵地区スプリンクラー灌漑パイプネットワークの最適配置・水力設計方法など。
(2)点滴灌漑灌水技術。丘陵地区の点滴灌漑毛管の水力学的特徴、丘陵地区の点滴灌漑灌水技術のパラメーター計算方法、丘陵地区の点滴灌漑システムの輪番灌漑プラン、丘陵地区の点滴灌漑チューブネットワークの最適配置・設計方法など。
(3)丘陵地区に適した家庭用小型井戸、雨水貯留池、溜池などの分散マイクロ水源の移動式灌漑システムモデル。
(4)集中水源と分散水源の利用に適した固定式・半固定式灌漑モデル。これには、ヘッド移動パイプライン固定モデル、ヘッド固定パイプライン移動モデル、主管固定支管移動モデル、ヘッドパイプライン全固定モデルなどが含まれる。
(5)圧力水頭に対するスプリンクラー灌漑、マイクロ灌漑の要求に基づき、作物の栽培地形の勾配状況と結びつけ、丘陵の勾配頂部をマイクロ灌漑(点滴灌漑、モイスチャー灌漑)、底部をスプリンクラー灌漑とする灌漑モデルを研究し、地形の高度差を十分に利用し、システムのエネルギー消費を下げる。
(6)分散マイクロ水源の移動式灌漑ユニットの開発。
(7)丘陵作物の輪作の必要性に適したスプリンクラー・点滴灌漑両用の灌漑モデル。
2.1.6 丘陵地区における節水灌漑キー設備の開発
(1)低エネルギー消費揚水ポンプ、スプリンクラーマイクロ灌漑多機能ポンプ。
(2)丘陵地区の傾斜地に適した低圧散布スプリンクラー・可変散布スプリンクラー。
(3)丘陵地区に適した点滴灌漑灌水装置、施肥装置、濾過装置。
(4)圧力流量コントローラー。
(5)スマート制御装置。
2.1.7 丘陵地区における節水灌漑スマート制御技術
(1)土壤土壌水分状態予測モデル。
(2)作物の水分状况のラージスケール外的表現特徴。
(3)作物の水分欠乏判別モデル。
(4)丘陵地区の経済作物の高効率節水灌漑スマート制御技術。
2.1.8 丘陵地区における節水灌漑技術の統合
(1)丘陵地区のスプリンクラー灌漑とマイクロ灌漑の輪番灌漑プラン、運用作動状況、その協調・最適配置と設計方法。
(2)ユニット灌漑システムの灌水技術、施肥技術、工事・設置、操作・メンテナンス、運用管理技術を統合し、丘陵地区の節水灌漑技術体系を構築する。
2.2 スマート精密灌漑ユニット
(1)軽量・小型スプリンクラー灌漑ユニット。自動移動・可変速稼動・低エネルギー消費の新型軽量・小型スプリンクラー灌漑ユニットを開発する。均等性の高い低圧スプリンクラーや小型肥料(農薬)注入設備、制御調節設備などを統合し、多機能の軽量・小型スプリンクラー灌漑ユニットを開発する。
(2)中型リール式スプリンクラー灌漑ユニットのスマート制御と省エネ、資源消耗削減。
(3)大型スプリンクラー灌漑装置の低圧・精密化。大型スプリンクラー灌漑ユニットの使用に適した低圧スプリンクラー、流量コントローラー、灌水施肥適時モニタリング設備、可変制御設備などを開発し、低圧・精密・多機能の大型スプリンクラー灌漑装置を開発する。
2.3 低コスト・高効率のスプリンクラー・マイクロ灌漑と水・肥料・農薬共同精密制御の技術と設備
2.3.1 低エネルギー消費スプリンクラー・マイクロ灌漑の技術と製品の研究開発
(1)CFD-CAD-CAMの有機的に結合した点滴灌漑製品の設計理論と方法の改善。CADとCFD、CAM技術を有機的に結合し、スプリンクラー・マイクロ灌漑製品の内部流場の計算理論と立体造型の可視化設計方法を構築し、流動シミュレーションと水力性能の予測機能を備えさせ、構造パラメーターの最適化を容易にし、性能の良好なスプリンクラー・マイクロ灌漑製品をスピーディーに開発する。
(2)低圧均等散布スプリンクラー、肥料(農薬)施用に適した均等性の高い専用スプリンクラー、圧力補償特性を備えたスプリンクラー、耐風スプリンクラー、大型スプリンクラー灌漑装置用低圧ミストスプリンクラー、景観スプリンクラーなどを開発する。
(3)微圧で流量が小さく、詰まり耐性が高く、圧力補償性能が優良で、耐久性が高く、安価な点滴灌漑灌水装置を開発する。
(4)クリーンで圧力降下が低く、構造が簡単で、操作やメンテナンスが便利で、自己洗浄の效率が高く、使いやすく耐久性の高い新型点滴灌漑フィルターを開発し、全自動フィルターセットを作り出す。
(5)スプリンクラー灌漑または点滴灌漑システムの作動状況に適した高効率スプリンクラー灌漑・点滴灌漑専用ポンプを開発する。
(6)スプリンクラー・マイクロ灌漑システム専用流量調節装置と圧力調節装置、精密制御設備を開発する。
2.3.2 多機能スプリンクラー・マイクロ灌漑システムの開発
(1)施肥(薬)の可能な多機能スプリンクラー・マイクロ灌漑システム、点滴灌漑やマイクロスプリンクラー灌漑、バブラー灌漑などの多機能を実現できる灌漑システム。
(2)製造価格が低く、エネルギー消費が低く、水力性能が高い大農地低圧点滴灌漑システム。
(3)地下点滴灌漑に適した総合技術や灌水装置、濾過設備、施肥装置などのシステム一体設備を開発し、地下点滴灌漑の設計理論と稼動管理技術を研究し、地下点滴灌漑技術体系を改善する。
(4)人力や電池、太陽エネルギーなどを動力としたマイクロポンプやマイクロ施肥装置、フィルターなどの設備を作り、分散マイクロ水源に適したマイクロマイクロ灌漑システムを開発する。
(5)マイクロ灌漑ジェットパルス発生器を作り、新型ジェットパルス点滴灌漑システムを開発する。
2.3.3 水・肥料・農薬の協同精密施用の設備と技術
(1)駆動エネルギーが小さく、使いやすく耐久性の高い新型水力駆動注(薬)肥装置を開発し、使いやすく耐久性の高い新型ジェットパルス水力駆動施肥ポンプを作り出す。
(2)灌漑・排水共用システムと肥(薬)溶解、ブレンド、配分散布の設備と技術を研究開発し、灌漑・排水・施肥(薬)の一体化の問題を解決する。
(3)精密灌漑施肥と流量濃度制御の技術と設備を開発し、施肥と施薬の一体化した多機能設備を開発し、水・肥料・農薬の同時施用を実現し、作業效率を高める。
2.3.4 スマート精密灌漑の技術と設備
(1)高度に統合されたスマート精密制御の技術と設備を開発する。節水灌漑システムの情報収集技術を改善し、制御精度とスマート化程度が高く、信頼性が高く、操作の簡単な制御ネットワーク、コントローラー、自動バルブ、濾過・施肥設備、作物水需要情報収集設備などを開発する。
(2)ファジィ論理システムとニューラルネットワーク技術、専門家システムに基づく人工スマート制御技術の開発。
(3)使用に適した節水灌漑無線センサーネットワーク技術を開発する。
(4)伝送・モニタリング・意思決定・制御の機能を備えたスマート精密灌漑システムを構築する。
(5)可変精密灌漑の技術と設備。可変給水と施水設備、肥(薬)可変供給設備、定位設備、制御設備などの可変灌漑制御設備を開発し、水・肥料・農薬の可変使用技術を研究する。
2.4 クリーンエネルギー節水灌漑の設備と技術
(1)小型ダム、溜池、貯水池、小型貯水池などの水エネルギーの豊富な地区では、小型水力発電節水灌漑システムを優先的に開発する。
(2)陽光の豊富な地区では、太陽エネルギー節水灌漑システムを開発する。
(3)風力エネルギーの豊富な地区では、小型・マイクロ風力発電灌漑システムを優先的に開発する。
(4)水エネルギーと太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマスエネルギーが相互に補完する節水灌漑システムを構築する。
謝辞
湯躍研究員、劉建瑞研究員、朱興業副研究員、陳超博士、談明高副研究員、方玉建博士らはそれぞれ、中型スプリンクラー灌漑装置やスプリンクラー灌漑自吸ポンプ、スプリンクラーヘッド、大型スプリンクラー灌漑装置、ソーラーポンプ、低水頭発電などにわたる内容を執筆し、本稿全体に対して多くの貴重な意見を提出し、修正を加えた。彼らに対する心からの敬意と感謝を謹んでここに示す。
(おわり)
※本稿は袁寿其; 李紅; 王新坤「中国節水潅漑装備発展現状、問題、趨勢与建議」(『排潅機械工程学報』第33巻第1期,2015年1月、pp.78-92)を『排潅機械工程学報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司