鉛冷却炉研究の現状と発展の展望(その1)
2017年 3月 9日
呉宜燦:
中国科学院核能安全技術研究所 中国科学院中子輸運理論・輻射安全重点実験室研究員
博士課程指導教員。先進原子力システム関連の設計研究に従事。
王明煌,黄群英,趙柱民,胡麗琴,宋勇,蒋潔瓊,李春京,竜鵬程,柏雲清,劉超,周涛,金鳴,FDSチーム:
中国科学院核能安全技術研究所 中国科学院中子輸運理論・輻射安全重点実験室
概要:
鉛または鉛合金(まとめて「鉛ベース材料」と呼ぶ)を冷却材とした原子炉は、中性子学や熱流体工学、安全から見て良好な特性を備えており、第4世代先進原子力システム、加速器駆動未臨界炉(ADS)原子力システム、核融合炉の主要な候補炉型の一つとなっている。本稿は、先進原子力システムの発展の傾向と、鉛冷却炉の原子力発展における位置を簡単に紹介し、鉛冷却炉の発展の歴史と現状、鉛冷却炉の基本的な特性、鉛冷却炉の未来の発展の見通しを重点としてまとめた。
キーワード:鉛冷却炉;鉛冷却高速中性子炉;鉛リチウムブランケット;鉛ビスマス合金
原子力は、クリーンで安全、高効率のエネルギーの一種であり、化石エネルギーを大規模に代替する潜在力を持っており、世界のエネルギー構造において重要なポジションを占めている。熱中性子炉の大規模応用には現在、低い資源利用率、放射性廃棄物の蓄積、核的安全などの問題があることから、「熱中性子炉-高速炉-核融合炉」という技術ロードマップが、未来の原子力発展の主流になると考えられる。現在世界で開発されている主な高速中性子炉には、鉛冷却高速炉(LFR)、ナトリウム冷却高速炉(SFR)、ガス冷却高速炉(GER)の3種があり、この3種の高速炉はいずれも、第4世代原子力システムの6種の主要参考炉型の選択肢となっている。2014年1月に「第4世代原子力システム国際フォーラム」(GIF)が発表した「第4世代原子力システム技術ロードマップ更新図」(図1)は、鉛冷却高速炉のモデル応用は2021年から始まるとしており、鉛冷却高速炉は、工業モデル事業を実現する初の第4世代原子力システムとなる可能性がある[1]。このほか高速炉技術に基づいて発展された未臨界炉は、良好な安全性と中性子経済を備えていることから、その研究は中国でも海外でも幅広く重視され、EUや中国、米国、日本などの多くの国がいずれも、長期的な発展計画を制定している。核融合エネルギーは、資源が豊富で、環境への影響が小さいことから、人類のエネルギー供給を根本から解決する潜在的な手段の一つと考えられている。核融合エネルギーの研究は現在、物理検証の段階から工学的検証の段階へと発展している。だが核融合エネルギーの商業応用の実現には、まだ研究開発の長い道のりを歩む必要がある。鉛ベース材料(鉛または鉛合金)を冷却材とした原子炉は、この発展ロードマップにおいて主要な役割を果たし、核分裂炉、核融合炉、臨界炉、未臨界炉のいずれにおいても、鉛ベース材料は、重要な応用価値を持っている。第4世代原子力システムにおいて、鉛冷却高速炉は、6種の参考炉型の一つとなっている。未臨界炉においては、鉛ベース材料は冷却材の第一候補である。核融合炉においては、鉛ベース材料を冷却材とした液体ブランケットが、ブランケットの主流概念の一つとなっている。
図1 第4世代原子力システムロードマップ
Figure 1 Generation IV International Forum Roadmap
本稿では、先進原子力システムの発展の傾向と、鉛冷却炉の原子力システムにおける位置を簡単に紹介し、鉛冷却炉の発展の歴史と現状、性能、未来の応用の見通しを重点として整理を試みる。
1 鉛冷却材料の性能
鉛は重金属であり、密度が高く、硬度が低く、展延性が強く、電気伝導率が低く、熱伝導率が高く、さらに安定性が高く、水と空気と激しい反応を発生することがない。鉛合金は、鉛を基礎材料とし、その他の金属元素を添加して形成された合金または共晶である。鉛合金は融点を大きく下げることができる一方で、その他の性能は鉛と似ており、その他の元素も応用時の機能材料とすることができる。原子力分野でよく用いられている鉛合金には、鉛ビスマス合金と鉛リチウム合金がある。核分裂炉において幅広く採用されている鉛ビスマス合金共晶冷却材の質量百分比は44.5:55.5で、この共晶の融点は鉛ビスマス合金の相図のうちで最低である[2]。核融合炉において採用されている鉛リチウム合金共晶(Pb83Li17)は、鉛リチウム合金の相図のうちで融点が最も低い[3]。表1は、鉛と鉛合金、その他の炉用冷却材の熱物性の比較である[4,5]。
冷却材 | 鉛 (723K,0.1MPa) |
鉛ビスマス合金(723K,0.1MPa) | 鉛リチウム合金(673K,0.1MPa) | ナトリウム (723K,0.1MPa) |
水 (573K,15.5MPa) |
ヘリウム (1023K,3MPa) |
密度/(g/cm3) | 10.52 | 10.15 | 9.72 | 0.844 | 0.727 | 0.001 406 9 |
融点/K | 601 | 398 | 508 | 371 | -- | -- |
沸点/K | 2 023 | 1 943 | 1 992 | 1 156 | 618 | -- |
比熱容量/[kJ/(kg·K)] | 0.147 | 0.146 | 0.189 | 1.3 | 5.457 9(Cp) | 5.191 7 (Cp) |
体積比熱容量/[kJ/(m3·K)] | 1 546 | 1 481 | 1 837 | 1 097 | 3 965 | 7.304 |
熱伝導率/[W/(m·K)] | 17.1 | 14.2 | 15.14 | 71.2 | 0.562 5 | 0.368 |
鉛ベース材料は冷却材として優れた性能を持ち、原子炉の物理特性と安全運転を高めるものとなる。主に、次の長所が挙げられる。1)鉛冷却炉の中性子経済が優良で、発展の持続可能性が高い。鉛冷却材料は、中性子減速能力が低く、捕獲断面積が小さいことから、鉛冷却炉をやや硬い中性子スペクトルに設計し、優良な中性子経済を獲得することができる。またより多くの余剰中性子を利用して核燃料の変換や核燃料の増殖などの多くの種類の機能を実現し、長寿命の炉心を設計して資源利用率と経済性を高めることができると同時に、核拡散の予防にも有利である。2)鉛冷却炉は、熱工学的特性が優良で、化学的不活性が高く、安全性も良好である。鉛冷却材料は、高い熱伝導率、低い融点、高い沸点などの特性を持ち、原子炉を常圧の下で運転することを可能とし、高い出力密度を実現することができる。さらに鉛冷却材料の高密度は、重大事故の下で原子炉が再臨界を起こす可能性を低め、高い熱膨脹率と低い動粘性係数は、原子炉に十分な自然循環能力を確保している。鉛冷却材料は化学的不活性が高く、水や空気と反応して激しい化学反応を起こすことがほとんどなく、水素ガスを発生する可能性はほとんどない。鉛冷却材料は、揮発性放射性核種のヨウ素やセシウムと化合物を形成しやすく、原子炉の放射性ソースタームを低めることができる。
以上の共通の特徴のほか、鉛と鉛ビスマス、鉛リチウムはそれぞれの特性を持ち、異なる原子炉の炉型に応用することができる。鉛を冷却材に使用した高速炉は、高い温度条件の下で運転でき、高い発電効率を備えているほか、融点が高いため、設備内で小規模な漏洩が起こった際に自己封鎖を形成し、鉛が漏洩し続けるのを阻止することができる。鉛ビスマスの融点は鉛より200℃近く低いため、比較的低い温度の条件下で運転でき、炉内設備に対する要求を下げることができ、初期的な応用において優位性を備えている。このほか加速器駆動未臨界(ADS)システムに対しては、鉛ビスマスは、核破砕ターゲットとして高い核破砕中性子の収量を実現すると同時に、良好な熱物性を備え、原子炉との相性も良好である。鉛リチウム中のリチウムは中性子と反応し核融合炉の燃料となるトリチウムを産出する。このため核融合炉のトリチウム増殖剤と冷却材として用いることができる。鉛リチウム中の鉛は、14MeVの融合中性子照射の環境において(n,2n)反応を起こし、中性子の増倍材としての役割も果たす。
2 鉛冷却核分裂炉の研究開発の歴史と現状
鉛冷却材料が核分裂原子炉に初めて用いられたのは1950年代である。世界の主要原子力大国はいずれも、鉛冷却炉の応用研究を展開して来ている。軍事用の原子力潜水艦から商業用の原子力発電所まで、臨界炉から未臨界炉まで、いずれも鉛冷却炉の応用対象である。主要国家によって展開された研究としては次のものが挙げられる。
ロシア:ソ連は1952年、原子力潜水艦向けに原子力推進装置を開発し、鉛ビスマス合金の共晶を冷却材とした原子炉案を打ち出し、鉛ビスマス原子炉を搭載した一連の原子力潜水艦を建造した。最初の実験的原子力潜水艦プロジェクト「645号計画」では、2基の鉛ビスマス原子炉を搭載した原子力潜水艦1隻が建造された。後続の「705号計画」においては、それぞれ1基の鉛ビスマス原子炉を搭載した「アルファ型」原子力潜水艦7隻が建造された。当時、「アルファ型」原子力潜水艦の速度と機動性は大きな印象を与えたが、これは、鉛ビスマス原子炉の敏感な出力調節を拠り所としていた。
ソ連の「アルファ型」原子力潜水艦の発展は、鉛ビスマス原子炉の応用研究を大きく促進したが、その運転においては、鉛ビスマス冷却材の炉内材料に対する腐蝕という問題が明らかとなり、鉛ビスマス炉の性能に影響を与える主要問題となった。大量の研究を通じて、鉛ビスマス中の酸素の含有量を適合範囲内に制御すれば、炉内材料に対する鉛ビスマスの腐蝕は大きく弱まることがわかった。この問題は、ロシアの原子力潜水艦の「645号計画」において発見され、「705号計画」において有効に解决された。だがソ連の各方面における急激な変化やロシアの国家戦略に対する変化の要求、また経済の低迷に伴い、こうした原子力潜水艦の運用を維持する経費が足りなくなった。1990年代、状態は良好だったものの、ロシアの原子力潜水艦には退役処分された。
21世紀に入ると、ロシアは、鉛冷却炉の商業原子力発電所への応用を積極的に推進し、鉛ビスマス原子炉「SVBR-100」と鉛冷却原子炉「BREST-OD-300」の研究開発と建造を展開している(表2)。SVBR-100は、ロシアが開発した小型モジュール鉛ビスマス炉で、ロシアのノヴァ・ヴァロシュ原子力発電所のすでに退役した2号原子炉建屋内に建設され、2019年に発電を実現する計画だ。計画通りに進めば、世界で最初の重金属冷却を採用した商用モデル原子力発電所となる。BREST-OD-300は、ロシアが発展を進める鉛冷却高速炉で、ウラン・プルトニウム窒化物燃料を採用し、炉心の直径は約2.3m、高さは1.1m、約16tの核燃料を搭載でき、原子炉の燃料交換は毎年1回、燃料集合体の炉内での停留時間は5年である。BREST-OD-300はすでに、プロジェクト設計を完了しており、建設は2016年から2020年に行われることとなる。
名称 | SVBR-100 | BREST-OD-300 |
電気出力/MWe | 101 | 300 |
熱出力/MWt | 280 | 700 |
冷却材 | 鉛ビスマス | 鉛 |
一次ループ循環方式 | 強制循環 | 強制循環 |
燃料タイプ | UO2 | PuN-UN |
燃料交換周期/a | 7~8 | 1 |
設計寿命/a | 60 | 60 |
米国:米国も1950年代、初期の金属冷却原子炉の冷却材としての鉛と鉛ビスマスの使用を模索した。だがウラン供給の増加と価格の下落に伴い、液体金属冷却原子炉に対する米国の興味は薄れたが、研究活動が停止されることはなかった。未臨界原子炉の研究においては、米国は1999年、「ATW計画」[7]を正式に始動し、ADSを利用した核廃棄物の変換を計画し、原子炉の第一の冷却方式として鉛ビスマス冷却が考えられた。米国は2001年から、先進加速器技術の応用に向けた「AAA計画」[8]を正式に実施し、加速器駆動による実験装置ADTFを建設し、ADSの安全性や「加速器-ターゲット-炉」の結合の有効性や変換性、実行可能性の検証に用いる計画を立てた。
米国エネルギー省の第4世代原子炉研究計画のサポートを受け、アルゴンヌ国立研究所(ANL)とローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は、小型モジュール鉛冷却原子炉「SSTAR」の研究を展開し[9]、アイダホ国立研究所(INL)とマサチューセッツ工科大学(MIT)は共同で、鉛ビスマス冷却転換炉「ENHS」案を設計し[10]、Gen 4 Energy社は、鉛ビスマス自然循環小型モジュール原子炉「G4M」を設計し、商業化普及を積極的に推進した[11](表3)。
名称 | SSTAR | ENHS | G4M |
電気出力/MWe | 20 | 50 | 25 |
熱出力/MWt | 45 | 125 | 70 |
冷却材 | 鉛 | 鉛ビスマス | 鉛ビスマス |
一次ループ循環方式 | 自然循環 | 自然循環 | 強制循環 |
燃料タイプ | TRUN | U/Pu/Zr | UN |
燃料交換周期/a | 30 | 20 | 10 |
設計寿命/a | 30 | 20 | 10 |
EU:EUは、鉛冷却炉の発展が最も活発な地域の一つであり、第5次・第6次・第7次欧州研究開発フレームワークの長期にわたる支援の下、整った発展ロードマップと計画が形成され、鉛冷却炉の研究計画に参加しているEUの研究機構は20所を超える。すでにゼロ出力実験炉「GUINEVERE」や大型鉛ビスマスプール式統合実験装置「CIRCE」などを含む一連の物理・熱工学・材料の実験装置とプラットフォームが建造されている。現在は、欧州訓練用鉛冷却原子炉(ELECTRA)のスウェーデンへの、鉛ビスマス冷却を採用した加速器駆動未臨界原子炉(MYRRHA)のベルギーへの、欧州鉛冷却実証炉(ALFRED)のルーマニアへの建設が計画され、欧州鉛冷却原子炉プロトタイプ(PROLFR)と欧州鉛冷却商業原子炉(ELFR)の設計活動も展開されている(表4)。
名称 | MYRRHA | ALFRED | ELFR |
電気出力/MWe | -- | 125 | 600 |
熱出力/MWt | ≈85 | 300 | 1 500 |
冷却材 | 鉛ビスマス | 鉛 | 鉛 |
一次ループ 循環方式 | 強制循環 | 強制循環 | 強制循環 |
燃料タイプ | MOX | MOX | MOX |
2013年12月、イタリアの国家新技術エネルギー環境局(ENEA)とアンサルド・ヌクレアーレ(ANSALDO NUCLEARE)社、ルーマニア原子核研究所(ICN)は、財団「FALCON」の設立合意に正式に署名し、「ALFRED」の設計・建造活動を開始した。
2013年10月、ベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)は、「MYRRHA」の初期的なプロジェクト設計契約を締結し、「MYRRHA」プロジェクトの実施に向けて堅実な一歩を踏み出した。2014年、EUの「ALFRED」とロシアの「BREST-OD-300」は協力合意を形成した。鉛冷却高速炉の技術と経験の面で交流と情報共有を行い、鉛冷却高速炉プロジェクトの進展を共同で進める計画だ。
韓国:韓国は主に、「PEACERC」[15]と「URANUS」[16]の2種類の鉛冷却炉に対して設計と技術研究を展開している(表5)。「PEACER」は、ソウル国立大学の「核変換エネルギー研究センター(NUTRECK)」が打ち出した、核廃棄物の変換に用いる鉛ビスマス原子炉であり、鉛ビスマスループ技術の事前研究プラットフォーム「HELIOS」がすでに建造され、熱流体工学と材料の関連研究が展開されている。「URANUS」は、韓国が「PEACER」を土台として打ち出した、40MWe鉛ビスマス炉の概念の一種であり、やはりHELIOS装置上で実験・検証研究が展開されている。
名称 | PEACER | URANUS |
電気出力/MWe | 550 | 40 |
熱出力/MWt | 1 560 | 100 |
冷却材 | 鉛ビスマス | 鉛ビスマス |
一次ループ 循環方式 | 強制循環 | 強制循環 |
燃料タイプ | U-TRU-Zr | UO2 |
日本:日本は、高レベル放射性廃棄物の分離と変換のオメガ(OMEGA)計画を1988年から実施し[17]、日本原子力研究所(JAERI)、核燃料サイクル開発機構(JNC)、電力中央研究所(CRIEPI)がプロジェクトの実施を担当した。オメガ計画の後期研究は、ADSの開発研究に集中し、原子炉の第一候補の型となったのが鉛ビスマス原子炉で、工業的規模の転換炉の設計を完了した。1999年からは、三井造船(MES)とロシアの物理エネルギー研究所(IPPE)が協力し、日本の鉛ビスマス応用技術の開発を始めた。MESは2001年、自社の鉛ビスマスの実験ループの稼動を開始し、鉛ビスマス冷却材と構造材料の腐蝕の実験と研究を展開した。京都大学もADS発展計画を制定し、概念設計や原理検証、工業実証の3段階での実施を通じて、MAの変換量が加圧水型原子炉の10基分に相当する鉛ビスマス冷却ADS装置を建設した。京都大学はさらにベルギーと協力し、EUのMYRRHA計画に参加している[18]。
中国:2009年に中国科学院が知識革新重要方向プロジェクト「加速器駆動未臨界系統(ADS)前期研究」を開始してから、中国内外の主要研究機関に対する調査研究を通じて、鉛ビスマス原子炉をADS原子炉の第一候補の発展方向として確定した。2011年、中国科学院は、戦略性先導科学技術特別プロジェクト「未来の先進核分裂エネルギー―ADS変換システム」を正式に始動した。2030年以降に工業実証用加速器駆動核廃棄物変換システムを建設し、核廃棄物の変換処理の主要技術を掌握する計画が打ち出された[19]。中国科学院核能安全(原子力安全)技術研究所・FDSチームは、中国科学院戦略的科学技術先導特別プロジェクトの支援の下、鉛冷却炉「CLEAR(China LEAd-based Reactor)」に対する全面的な研究開発を展開し[20,21]、3期に分けた実施を経て、研究実験炉「CLEAR-I」から工学的実証炉「CLEAR-II」、さらに最終的には商用原型炉「CLEAR-III」までを実現する計画を打ち出した(表6)。ADSと第4世代鉛冷却高速炉の技術発展の目標と要求に基づき、臨界と未臨界のダブル稼動モードを備えた「CLEAR-I」の全体設計を完了し、初期的な工学的設計と初期的な安全分析、環境影響評価が現在、展開されている。同時に、鉛冷却炉の新概念と応用拡大の研究を積極的に展開し、鉛冷却トリチウム生成炉「CLEAR-T」や鉛冷却水素生成炉「CLEAR-H」[22]、小型モジュール鉛冷却小型炉「CLEAR-SR」[23]などの一連の新概念の設計を完成した。大型液体鉛合金総合実験装置群(鉛ビスマス実験ループKYLINシリーズなど)と鉛冷却炉主要設備サンプル機を建設し、原子炉材料や冷却材の両立性、原子炉の熱流体工学、冷却材の安全などの実験・研究の展開が可能となった。現在、鉛冷却炉の工学的実証試験装置「CLEAR-S」鉛冷却炉ゼロ出力物理試験装置「CLEAR-0」、鉛冷却デジタル(バーチャル)原子炉「CLEAR-V」、強流デューテリウム・トリチウム融合中性子発生器「HINEG」の建設を展開し、鉛冷却炉の主要設備と運用技術の統合試験を展開している。
名称 | CLEAR- I | CLEAR- II | CLEAR- III |
熱出力/MWt | 10 | 100 | 1 000 |
冷却材 | 鉛ビスマス | 鉛ビスマス | 鉛ビスマス |
一次ループ 循環方式 | 強制循環 | 強制循環 | 強制循環 |
燃料タイプ | UO2 | MOX | 窒化物または金属 |
(その2へつづく)
参考文献
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※本稿は呉宜燦,王明煌,黄群英,趙柱民,胡麗琴,宋勇,蒋潔瓊,李春京,竜鵬程,栢雲清,劉超,周涛,金鳴,FDS団隊「鉛基反応堆研究現状与発展前景」(『核科学与工程』第35巻第2期,2015年6月、pp.213-221)を『核科学与工程』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司