第129号
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中国の科学技術の事業状況―科学技術部記者会見より(その1)

2017年 6月 27日  科学技術部国際合作司

解説

 中国の科学技術部の賀徳方政策法規・監督司司長、許倞イノベーション発展司司長、張暁原資源配置・管理司司長、葉冬柏国際協力司司長らは、科学技術部が開催した記者会見(2017年2月16日)において、中国の科学技術政策ついて最新のデータを交えながら議論を行い、科学技術政策の現状を示しながら将来についても展望を示した。ここからイノベーション促進のための諸政策やイノベーション人材の育成、各プログラムのロードマップ、国際協力の方針などに関する科学技術部の考え方が見て取れる。(中国総合研究交流センター編集部)

 2月16日、中国科学技術部(省)は記者会見を行い、政策法規・監督司の賀徳方・司長、イノベーション発展司の許倞・司長、資源配置・管理司の張暁原・司長、国際協力司の葉冬柏・司長らが中国の科学技術政策、地域のイノベーション、科学技術経費及び中央財政の科学技術資金管理、国際科学技術協力などの状況を紹介した。

科学技術政策に関する状況

1、総合的に系統立てて、協力を得て推進されている科学技術体制改革。 2015年8月に発表された「科学技術体制改革を深化させる実施方案」は、2020年までに完了させるべき10分野の対策32項目、任務143項目、明確なタイムスケジュール、ロードマップを示している。科学技術体制改革の範囲は、科学研究の分野から経済、社会などの関連の分野へと拡大し、力を注ぐポイントも研究開発管理からイノベーションサービスへと移行し、受益者も科学技術者から一般庶民へと拡大している。また、改革の関連性や複雑性、影響力も大きく向上し、改革の全面的な深化の重要な部分を成すようになっている。現時点で、同方案が示している2020年までに完了させるべき任務のうち、全体の58%に当たる83項目が完了している。また、60項目が段階的成果を上げており、5年間の目標うち、約3分の1の期間で3分の2の任務を完了したことになる。

2、大きな成果を得た重点科学技術イノベーション政策。 イノベーションの面で企業を奨励するための優遇政策を整備する面で、企業研究開発費用の追加控除、ハイテク企業の税制優遇、企業研究開発設備の加速減価償却などの政策を制定、整備し、企業がイノベーションを進める上での負担を減らし、サポートを強化。2015年、中国全土で追加控除の優遇を活用した企業は5万3600社に達し、減額・免除された税額は759億元と、2008年に比べて約6倍増となった。調査によると、追加控除政策を活用した企業の97.5%が研究開発を強化している。科学技術成果の他分野への転化の面において、中国政府は「科学技術成果転化促進法」、「『科学技術成果転化促進法』に関する若干の規定」、「科学技術成果転化行動方案」などを相次いで打ち出し、これらは科学技術成果の転化業務を促進する「三部作」となっている。関連当局や地方も関連する政策文書を相次いで打ち出し、政府が科学技術成果の使用や処置、収益権などを完全に移譲し、審査・認可、届出を廃止し、収益を転化して全額企業に帰し、科学技術者に対する奨励の割合を大幅に引き上げ、株式報酬を獲得した科学技術者を税制の面で優遇し、リーダー格の科学技術者が転化報酬を受け取ることを許可し、責任者による価格決定免責メカニズムを構築している。

3、科学技術を推進するチームの立ち上げを計画。 中央人材業務協調グループの指導の下、科学技術部は、海外ハイレベル人材招致「千人計画」や中国国内のハイレベル人材をサポートする「万人計画」に真剣に取り組み、着実に実施し、科学技術イノベーション起業人材の育成、招聘任務を果たし、科学技術人材のために事業発展のためのプラットホームを提供している。「千人計画」において科学技術部は、国家重点イノベーション、重点実験室、起業人材などのプラットホームの組織、届出、評価、認可などの業務を担当している。これまでに「千人計画」に選ばれた専門家は全12回で計5208人、うちイノベーション・起業系の人材が4577人となっている。「万人計画」においては、2012年の実施から、科学技術部の推薦をうけて、すでに1200人以上が選ばれている。「イノベーション人材推進計画」においては、2012年の実施から、前4回のイノベーション人材推進計画で選出が確定したのは青年科学技術イノベーションリーディング人材が1081人、科学技術イノベーション・起業人材が733人、重点分野のイノベーションチームが255チーム、イノベーション人材育成モデル拠点が123ヶ所だった。

地域イノベーションに関する状況

 地域は、国のイノベーション発展の基礎であり拠り所となる。科学技術部は、党中央、国務院の手配に基づき、先導、推進、奨励改革、基礎保障などを強化し、イノベーション型国家の建設推進をサポートし、一定の進展を見せている。

 科学技術部は関係当局と共同で、北京と上海の科学技術イノベーションセンター建設を以下の4つの面から重点的に推進している。▽基礎科学研究の拠点の配置を最適化し、オリジナルイノベーションのウィークポイントを改善する▽一連の重大科学技術プロジェクトを実施し、産業イノベーションの基礎を固める▽各種イノベーション主体の共同発展を推進し、科学技術イノベーション全体の機能を向上させる▽科学技術体制の改革を深化させ、イノベーション・起業の環境を整える。ビッグサイエンス技術イノベーションセンター建設の青写真が既に完成し、北京懐柔と上海張江の総合性国家科学センターの建設が加速している。また、Superintense Ultrafast Laser Facility(SULF)のユーザー機能や総合極端条件実験装置などのビッグサイエンス装置の建設が間もなく始まる予定で、航空用エンジン・ガスタービン、バイオ医薬、ハイエンドチップなどの一連の戦略科学技術プロジェクトの実施も加速している。

 イノベーション型国家の建設には省が主体となる必要があり、大・中・小都市のイノベーションの発展を統一して計画し、全国レベルで多くの場所が牽引する良い構造を形成しなければならない。2013年以降、科学技術部は、江蘇省、安徽省、浙江省、陝西省の4省でイノベーション型省の試験ポイント建設の展開を促進し、イノベーション要素を集める能力や総合実力・産業競争力、イノベーション・起業の環境、イノベーションの社会民生発展サポート、政策体制・ガバナンス構造などの面におけるサポートを重点的に行っている。同4省の研究開発(R&D)経費は中国全土の25.7%、ハイテク企業は中国全土の28.3%、ハイテク産業の付加価値増加値は中国全土の29.2%を占めている。昨年、科学技術部は湖北省や広東省、福建省のイノベーション型省建設の展開へのサポートを強化し、地域のイノベーション発展を牽引する役割を果たした。その他、科学技術部は国家発展改革委員会と共同で、合肥市や深センなどの61都市でイノベーション型都市の試験ポイント建設を展開し、昨年は、「イノベーション型都市建設業務ガイド」を発表、都市レベルで地域イノベーションのハイポイントを構築している。2015年、同61都市のハイテク企業は5万8146社に達し、中国全土で76.7%を占めた。ハイテク産業業務の収入は9兆1200億元で、中国全土の65.1%を占めた。

 末端の改革の探求やパイオニア精神を尊重することは中国がイノベーション発展の分野で大きな成果を得るためのカギとなっている。科学技術部は関連当局と共同で北京・天津・河北、上海、広東、安徽、四川、武漢、西安、瀋陽の8地域の全面的なイノベーション改革試験を推進し、市場や政府の役割を果たす効果的なメカニズムや科学技術と経済の深い融合を促進する有效な手段、イノベイターの原動力、活力を刺激する効果的な手段、イノベーションを深く開放する効果的なスタイルなどを模索している。調査・評価によると、知的財産権保護、人材の出入国管理、科学技術成果の転化、軍民融合、イノベーション・起業の奨励、科学研究経費管理、金融イノベーションなど、169項目の改革の実施が加速している。

 国のイノベーション調査制度は、イノベーションの主体となっている企業や研究機関、高等学校などに対して行う科学的でルールに基づいた統計調査を基礎に、国のイノベーション能力をモニタリング評価する制度で、イノベーション型国家の建設の進捗を垂直分析し、中国のイノベーション発展の水準を水平比較する点で重要な意義がある。2012年以降、科学技術部は関連当局と共同で、企業、大学、研究機関などのイノベーション活動の統計調査業務を系統立てて展開し、国、地域、国家高新技術産業開発区などのイノベーション能力のモニタリング、評価報告などを続々と発表し、地域のイノベーション発展やイノベーション型国家の建設を策定する上で、重要な参考材料を提供している。統計によると、中国のイノベーション能力は世界18位にまで順位を上げている。2016年には科学技術進歩の貢献率が56.2%に達したと見られている。R&D経費は2010年の2.18倍に当たる1兆5440億元に達し、R&D人員のフルタイム当量は2010年比で49.2%増となる381万人となり、それぞれ、世界2位と1位となった。サイエンス・サイテーション・インデックス(SCI)に収録された中国の科学技術論文は29万件と、2010年比で2倍に増加し、世界2位になったほか、中国国内の特許申請量と取得数はそれぞれ世界1位と2位になった。

その2へつづく)

(発信元:科学技術部 2017年2月16日)


本稿は「科技部挙行新聞記者会介紹中国科技工作情況」『中国科技通訊』2017.NO.06を科学技術部国際合作司の許可を得て転載したものである。