森林作業ロボットの研究動向(その1)
2017年 8月31日
徐 海燕:
南京林業大学スマート制御・ロボット技術研究所、南京林業大学機械電子工程学院
修士課程研究生。主にロボットの機構及び制御に関する研究に従事。
姜 樹海:
南京林業大学スマート制御・ロボット技術研究所副教授、南京林業大学機械電子工程学院
博士。主にロボット技術、スマート制御技術の研究に従事
概要:
森林作業ロボットの研究開発と利用は、森林作業の質と効率を高め、経済成長を促す上で重要な意義がある。本稿では、森林作業の応用領域に即した森林作業ロボットの分類方法を示し、伐採・搬出、森林育成の面から中国内外の伐採・搬出ロボット、苗木植栽ロボット、枝打ちロボット、接ぎ木ロボット、森林整理ロボットおよび消防ロボットの研究動向を詳細に論述した上で、ここ50年における森林作業ロボットの発展の歴史に基づき、今後の森林作業ロボットにおける主要技術と発展の方向性として、多脚移動機構、マルチマニピュレータによる協調作業、マルチセンサ情報融合、新ロボット等の分野に集中すべきことを提案する
キーワード:森林作業、ロボット、森林伐採・搬出、森林育成
森林作業は人類が森林資源を獲得するための重要な手段であり、人間がある種の工具や方法を利用して森林に作用を及ぼし、森林製品(木材、竹材、松脂等)を獲得することを指す。2014年に中国で森林作業により獲得された森林主製品の総生産額は5兆4千億元に達し、中国の経済成長における原動力となった[1-2]。従来の作業機械では複雑な森林環境において使用性能上、一定の制約があることから[3-5]すでに作業上の要求を満たせなくなっていることに加え、近年、人的コストの上昇によって森林作業コストも増加し続けているため、森林作業の質と効率をいかに高めるかが解決の待たれる問題となってきている。ロボット技術が飛躍的に発展している今日においては、問題解決の鍵は森林作業機械の世代交代におかれている。今や、移動ロボットの歩行機構形式は多様で、車輪型、クローラ型、脚型およびハイブリッド型があり、森林の劣悪な地形において優れた環境適応能力があり[6-7]、森林環境下のさまざまな作業をこなすことができる。このため、森林作業における移動ロボット技術の運用は、将来的な森林作業の全面機械化や自動化における発展の重要な方向性となっている。
1 森林作業ロボット研究の概況
森林作業ロボットは特種ロボットのカテゴリーに属し、生産効率を高め、人間の代わりに迅速かつ効率的に森林環境下の各種作業をこなすことができる[8-9]ため、作業者に安全かつ快適な作業環境を提供できる。森林作業ロボット技術は現在までに50年近くの発展を遂げ、その研究は伐採・搬出、苗木植栽、枝打ち、接ぎ木、伐根撤去、消防等、ほとんどすべての林業作業分野に及んでおり[3]、研究分野は森林伐採と森林育成の2つに大きく分類できる。伐採・搬出とは、樹木の伐採と木材の運搬のことを指し、前者は原料(すなわち林木)に対する加工のことであり、これには樹木の伐採や枝打ち、製材等のさまざまな工程が含まれ、一般にその場で作業が行われる。このため、これに対応して、伐採作業ロボットは往々にして多くの工程を統合して作業を行うことができ、1台で多目的に用いられる。これに対し、後者は製品の運搬を行うもので、この対象には林産物、苗木・花卉や野菜等の林産資源が含まれ、一般的にロボット車両を採用して運搬する。育成とは、森林における樹木の生長を育む全プロセスを指し、苗木の植栽から育成、造林までのいずれのプロセスも欠くことはできず、代表的な育成作業ロボットには苗木植栽ロボット、枝打ち・剪定ロボット、接ぎ木ロボット、森林整理ロボットと森林消防ロボットがある。森林作業ロボットの研究開発には一定の難しさがあり、地形の複雑な森林環境において坂を登り、障害物を乗り越え、障害物を撤去する等の難度の高い動作をこなさなければならないだけでなく、迅速に、かつ質と量を維持しながらそれぞれの作業内容を全うする必要がある。また、生態環境の保護も考慮すべき要素である[10]。現在のところ、森林作業ロボットは日本、アメリカ、ドイツ、カナダ、スウェーデン等の林業先進国で発達している[11-12]。これに比べて中国における森林作業ロボットの研究はスタートが遅かったが、その割に多くの優れた実績を上げている。特に国家「863計画」が発表されてからは、森林作業ロボットはロボット技術の専門家から高い注目を集め、ロボット研究の重点の一つとなった[13]。そこで、伐採・搬出と育成の2つの分野から、国内外における伐採・搬出ロボット、苗木植栽ロボット、枝打ちロボット、接ぎ木ロボット、森林整理ロボットと消防ロボットの研究動向について、以下に詳述する。
2 伐採・搬出作業ロボット
森林伐採・搬出作業とは、林木を作業対象として、原木、原材、伐木及び全木等の木材製品を生産する作業活動を指し、林業生産における重要段階としての歴史があり、これには伐採と運搬の2つの領域が含まれる。運搬作業は運搬車両を主としており、この分野では日本でさまざまなロボット車両が開発され、例としては四輪独立駆動式ロボット車両や連結型クローラ車両、クローラ機構ハイブリッド型ロボット車両がある[14]。これに比べ、世界各国の伐採作業ロボット分野の研究は百花繚乱と言うことができ、特にアメリカ、フィンランド、旧ソ連等の林業先進国が世界の最先端を走っている[15]。当初、伐採複合機の機能は単一的で、のこぎりで切る機能しかなかったため、枝打ちや製材等の作業のために他の設備を組み合わせなければならなかったが、フィンランドのPlustech社が6脚式林業マルチ伐採機を発表してからは、ロボットのそれぞれの足の動作がスマート型・リアルタイム制御システムにより自動制御されるようになったことから、伐採複合機はロボット時代に突入することとなった[16]。
Timberjack社は、Plustech社の技術をベースとして、険しい坂や柔らかい林地に適用される6脚式伐採複合ロボットの試験機を開発し、脚部に設置したセンサにより地面の不均一さや傾斜度を感知し、コンピュータ制御システムによりペースを調節して6つの脚が受ける荷重のバランスを取ることによって120cmの障害を越えられるようになり、設定されたプログラムにより伐木、枝打ちや製材を自動的に完了させることができる[17]。旧ソ連中央森工機械研究所のイルクーツク支所では伐木集積ロボットの開発を行っており、このロボットには情報測定システム、執行システムと制御システムが搭載され、コンピュータで設定された操縦・把持・伐採装置のプログラムによりロボットアームを指定方向に動かし、樹木の把持、根部からの伐木、運搬、集積を行うことができる[18]。アメリカで発表されたRottne 2202型、Rocan T型マイクロ車輪型伐採複合機ではコンピュータ固定プログラムによる制御を採用し、伐木、枝打ち、製材作業を自動で完了させることができる。このロボットは機体が小さくて精巧な特徴があるため、作業の際に周囲の樹木に損傷を与えない。また、機械の接地圧力が小さいことから、地表の破壊や樹根の損傷を減らすことができる[19]。これらの機種に加えて、John Deere、Ponsse、Komatsu、Tenber等の企業も、多様な林地に適応する大小さまざまな車輪型とクローラ型の伐採複合ロボットを開発している[20]。
国家863プロジェクトの支援を受けて、中国の研究者も伐採複合ロボットの面で一連の研究業務を行っている。郭秀麗と陸懐民[21]が設計したクローラ型伐採複合ロボットは、SDWY-60型クローラ型油圧ショベルを歩行機構として6自由度ロボットアームを設置し、デュアルポンプ・デュアルサーキット油圧システムによる駆動を採用し、放射基底関数のニューラルネットワーク制御システムを利用することによってロボットによる立木の定位、伐採、集積等の多機能自動循環作業を可能にしている。魏占国、劉晋浩ら[22]が設計した車輪型林木伐採複合ロボットCFJ-30では基板に連結型シャシ構造を採用し、4つのタイヤを備え、全油圧駆動を採用し、伐木、枝打ち、製材、配列作業を一体に集約している。
(その2へつづく)
参考文献:
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※本稿は徐海燕、姜樹海「森林作業機器人研究動態」(『世界林業研究』2017年第30巻2期、pp.51-55)を(『世界林業研究』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司