第133号
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セラミックス付加製造技術研究の進展(その2)

2017年10月31日

伍 海東、周 茂鵬:広東工業大学機電工程学院

劉 偉:広東工業大学機電工程学院准教授

伍 尚華:広東工業大学機電工程学院教授

その1よりつづき)

2 インクジェット押出技術を土台とした付加製造技術

 インクジェット押出技術を土台とした付加製造技術の共通点は、ノズルを道具として利用することにある。ノズルによる押出を行う材料は、セラミックス-高分子の混合物でも良いし、バインダーでも良いし、セラミックスインクでも良い。ノズルから押し出される材料の違いに基づき、熱溶解積層成形技術(Fused Deposition Modeling,FDM)、3D印刷技術(Three-Dimensional Printing,3DP)、インクジェット印刷技術(Ink-Jet Printing,IJP)に分類される。以下では、その原理と、セラミックスにおけるその発展状况を詳しく紹介する。

2.1 熱溶解積層成形(Fused Deposition Modeling,FDM)

 熱溶解積層成形(Fused Deposition Modeling,FDM)の成形原理は、コンピューター制御を通じて、セラミックス-高分子材料を熔化装置に送り、熔点をちょうど上回った温度で高分子材料を熔化し、ノズルからx-y平面に押し出して単層の輪廓を形成し、z軸での移動の制御を通じて、立体部品の成形を実現するというものである[37]。成形されたグリーン体は、バインダー除去と焼結後、最終的なセラミックス部品を獲得することができる。だが適切な粘度と強度、接着性能を備えたセラミックス-高分子複合フィラメントの製造は難しく、成形精度は比較的低い。このため主要な研究は現在、優れたセラミックス-高分子複合フィラメントをいかに製造するか、成形工程をいかに最適化するかに集中している。

 成形工程の面では、Rangarajan[38]らが、Si3N4の成形工程を研究した。Ashwin Hattiangadiら[39]は、熱溶解積層法に基づく多孔セラミックス成形を探究した。Samar Jyoti Kalitaら[40]は、足場の構造設計やPP-TCP複合フィラメントの処理、成形過程の制御などの面からそれぞれ、足場の物理的特性や機械的性能、生物適合性を具体的に分析した。Amit Bandyopadhyayら[41]は、PZT粉末含有量が50-55vol.%の熱可塑性フィラメントにFDC直接成形を施し、階段状構造のPZTセラミックス部品を獲得した。製造されたPZT部品は優れた電気機械的性能を備え、センサーへの適用性が高い。Gwenae ̈lle M. Lousら[42]は、FDCを利用してセラミックス/樹脂圧電超音波変換器を製造し、粉体処理技術の最適化を通じて、焼結後のサンプルの密度を96%に高め、その性能は従来の製造方法の結果に迫るものとなった。

 セラミックス-高分子複合フィラメントがより適切な粘着性能を備えるようにするため、Sriram Rangarajanら[43]は、複合フィラメントの物理的性質と流動学的特性、その機械的性能を詳しく研究した。さらに表面活性剤を利用して粉体を処理し、最後にセラミックス複合フィラメントに後処理をし、必要なパラメーター性能を獲得した。またフィラメントを製造しなければならない面倒を回避するため、Anna Bellini[44]らは、FDM技術に基づき、一種の新型の押出システムを開発した。この押出システムは主に、高精度の位置決めシステムを備えた超小型押出機からなり、フィラメントを粒子状材料で代替した。この代替は、FDM技術の応用範囲を広げた。

2.2 3D印刷(Three-Dimensional Printing,3DP)

 3D印刷(Three-Dimensional Printing,3DP)の基本的プロセスは、ノズルを通じて、x-y面にバインダーを噴射して粉末粒子を粘着させ、単層を形成し、z軸を通じた制御によって下方に移動し、再び材料を広げ、バインダーを噴射する。この繰り返しによって、3Dグリーン体を獲得することができる[2]。3D印刷成形技術の応用範囲は比較的広く、材料の選択も幅広い。だが成形の精度は低く、表面が比較的粗く、製造された部品の密度も比較的低い。このため特殊な方法(後続含浸などの工程)を取らなければ、緻密さの実現は難しい。研究者らは、3DP成形技術の研究を展開し、とりわけ後処理技術を重点として研究している。

 Jooho Moonら[45]は、セラミックス3DP技術に用いるバインダーは、粉体層に浸透できるのでなければならず、適切な表面張力と粘度を備えている必要があると論じた。Jaedeok Yoo[46]らは、傾斜を備えた複合多層ZTAセラミックスの特性とその製造工程を理論と実験の両面から詳しく研究した。

 成形精度の面では、M Lanzettaら[47]の研究が、成形サンプルの精度と表面の品質にとっては超薄層が有利であることを証明した。Shu Caoら[48]は、double-smoothingに基づく超薄層の方法を研究した。この方法を用いれば、厚さ55μmの超薄層を実現でき、成形したグリーン体の密度は70%を超えた。3DP成形技術の発展を制限している最大の原因は、密度の高いセラミックス部品の獲得が難しいことである。密度を高めるには主に、次の3種の方法がある[49]

 第一の方法は、焼結助剤を添加することである。Fieldingら[50]は、TCPにZnOとSiO2を転化し、密度を90%から94%に高めた。第二の方法は、3DPが製造した多孔グリーン体に含浸を行うことである[51]。Beiya Nanら[52]は、TiC多孔セラミックスを作り、1600℃-1700℃でケイ素を孔中に熔化・浸透させ、反応によってTi3SiC2とTiSi2、SiCの複合セラミックスを生成した。その曲げ強さとビッカース硬さ、電気抵抗率はそれぞれ293MPa、7.2GPa、27.8μΩ・cmに達した。第三の方法は、3DPで製造したサンプルの焼結前に冷間等方圧加圧または温間等方圧加圧処理を行うことである。Yooら[53]は、Al2O3セラミックスグリーン体を温間等方圧加圧処理後に焼結し、密度92%、曲げ強さ324MPaのセラミックスサンプルを獲得した。

2.3 インクジェット印刷(Ink-Jet Printing,IJP)

 インクジェット印刷(Ink-Jet Printing,IJP)は、サーマル方式のインクジェット印刷とピエゾ方式のインクジェット印刷を主に採用したオンデマンド型のインクジェット印刷装置である。セラミックス粉や有機物などをセラミックスインクとして配合し、セラミックス部品の成形に応用する。コンピューターでインクの滴下する位置を精密制御し、点から面、面から立体への3D成形を実現する[54]

 インクジェット印刷(Ink-Jet Printing,IJP)技術はすでに幅広く応用されているが、応用されるのは一般的にマイクロ部品であり、液滴の精度の制御も難しい。さらにその固形分濃度は一般的に低く、成形過程に長時間の乾燥が必要となる。大型部品を製造すると収縮率が大きく、所要時間が長く、精度も保証しにくい。このためプリンターの設備とセラミックス粉体のインク中の分散体積分率を改善し、成形の精度を高める必要がある。

 成形精度の制御の面では、Rui Douら[55]が、10vol.%ZrO2のインクの液滴に対する研究を行い、乾くと偏析が起こりやすく、液滴はコーヒーステインのようになり、成形精度に深刻な影響を与えることを発見した。10wt.%のPEGを添加すると偏析現象を有効に抑え、成形精度を有効に高めることができる。だがこの精度はノズルの大小の制限も受ける。このためD. Z. Wangら[56]は、電気流体力学によるインクの噴射を通じて、液滴の大小がノズルの制限を受けないようにし、精度を高めた。10vol.%のZrO2懸濁液を用いて100層を堆積し、高温焼結を経て、壁厚100μmの緻密なZrO2薄壁を実現させた。これは普通のノズル式インクジェット印刷を30%近く下回る壁厚である。

 このほかC. Ainsleyら[57]は、高温下でAl2O3ナノパウダーをパラフィンに溶解し、これにボールミリングを加え、Al2O3ナノパウダーをパラフィン溶液中に均質に溶解させ、固形分濃度40vol.%のスラリーを作り、圧電式インクジェットプリンターを利用して、直径28mmの小型インペラーを製作した。Tianming Wangら[58]は、パラフィン油/ワックスを媒質として固形分濃度40vol.%に達するPZTスラリーを調合し、インクジェット印刷の方式を用いたセラミックスグリーン体を製造し、脱脂と焼結を行って、目立った変形がなく、完全な緻密に迫り、気孔率が1%を下回るPZTセラミックスの獲得に成功した。

3 デジタルライトプロセッシング技術に基づく付加製造技術

 デジタルライトプロセッシング技術(Digital Light Processing,DLP)ではまず、映像信号をデジタル処理し、光を投影する。図3の原理図が示すように、具体的には、DLP投影技術とは、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)を主要処理部品としてデジタル光学処理過程を実現する。デジタルライトプロセッシング技術に基づくこの付加製造技術は、SLAに基づく光造形技術と極めて似通っている。だがSLA技術との最大の違いは、DLPは面成形であり、成形速度が速い一方、SLA技術は逐点スキャンであり、成形速度が遅いことにある。

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図3 DMDに基づく付加製造技術模式図[60]

Fig.3 Schematic diagram of additive manufacturing based on DMD device

 DLPは、その他の付加製造技術と比較して、次のいくつかの独自の長所がある。(1)単層硬化速度が速い、(2)成形精度が高い、(3)システムの構造が簡単で実現し易い――。以上の長所を持つことから、DLP光造形技術は、新型のセラミックス付加製造技術の一種として、セラミックス製造の過程において非常に明るい見通しを持っている。DLPの光造形型技術に対する研究はまだ少ない。

 Hamid Chabokら[59]は、精度の高いグリーン体の製造に成功し、Cu2O-PbOを焼結助剤とし、ゾルゲル法を採用し、550℃で90minのバインダー除去と1150℃で90minの焼結を行い、焼結PZTセラミックスを得た。焼結後の完成品の収縮率は7-8%で、相対密度は最高で80%に達した。Song xuanら[60]は、セラミックス流延成形技術を、底から上へのマスク投影技術と結合し、光造形に基づく新たな掩膜投影技術(MIP-SL)を開発し(図4参照)、Al2O3セラミックスの成形工程を詳しく研究し、密度93%のAl2O3セラミックスの製造に成功した。図5は、製造されたセラミックスのグリーン体である。

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図4 光造形に基づくマスク投影技術[60]

Fig. 4 Mask-image-projection-based stereolithography (MIP- SL) process by integrating ceramic tape-casting and bottom-up projection methods

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図5 MIP-SL技術に基づいて製造されたセラミックスグリーン体[60]

Fig. 5 Green parts fabricated by the tape-casting-integrated MIP-SL processs

 オーストリアのLithoz社は、Lithography-based Ceramic Manufacturing(LCM)という名の技術の開発に成功した。DLPに本質的に類似した光造形技術であり、2015年には、相対密度99.3%、曲げ強さ427MPaに達するAl2O3セラミックスの製造に成功した[61]

 Erika Zanchettaら[62]は、Lithoz社の製造した設備を採用し、感光性セラミックス前駆体プレポリマーを利用し、DLP光造形と結合して、SiOCマイクロ部品の製造に成功した。

4 結語

 以上の論考で、セラミックス付加製造技術の特徴を総括し、近年の研究の重点を中心として論じ、この技術が成形において優位性を持ち、豊かな研究成果が上がっていることを示した。だがセラミックス付加製造技術の研究にはまだ不足がある。例えば、高精度で高性能のSi3N4やSiCなどの非酸化物セラミックスの研究は少ない。また多機能複合セラミックス材料の研究もほとんどなされていない。これは今後の重要な研究方向となると考えられる。

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※本稿は伍海東,劉偉,伍尚華,周茂鵬「陶瓷增材製造技术研究进展」(『陶瓷学報』2017年第38巻第4期、pp.451-459)を(『陶瓷学報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司