中国産業用ロボットの産業化発展戦略について
2018年9月19日 譚景春(瀋陽新松機器人自動化股份有限公司)
概要:
中国の産業用ロボットの急速な増加と普及に伴い、ロボットの持つ特徴やその応用分野はますます幅広くなり、初めは工業分野での応用のみであったのが、今や手術や作物の収穫、調査、地雷除去、さらには宇宙ロボットなど、徐々に非工業分野での応用が増えてきた。ロボットの応用範囲に制限はない。創造的な思考さえあれば、様々な種類のロボットを大量生産の補助として役立て、我々の負担を軽減することができる。ロボットのスマート化が進み、ロボットにはさまざまな情報が人工的に組み込まれるようになった。ロボットの頭はますます賢くなり、ロボットのモジュール化、プラットフォーム統一化の趨勢がますます顕著になった。これにより、中国の産業用ロボットの産業化発展はますます勢いづくとみられる。
キーワード:中国産業 ロボット 産業化発展
ロボットの研究開発は比較的複雑なプロセスであり、大量の時間と労力が必要だ。溶接や組立などの作業をロボットに担当させるには、長年の研究が必要となる。産業用ロボットはハイエンド製造設備の重要な一部分であり、ハイエンド技術によるサポートが必要だ。またさらに、技術を基盤とし、情報化された生産設備の情報を融合させ、優秀かつ専門的な中国内外の産業情報源を取り入れる必要がある。こうすることで、比較的先進的な製造技術を有することができ、伝統的な工業経済によるモデルチェンジから技術によるモデルチェンジへと転換し、労働力コストを削減し、技術革新を深めることができる。これは、中国の技術力を示す重要なチャンスでもある。
1 中国内外の産業用ロボット技術と産業戦略の現状
いくつかの先進国、例えば米国では、産業用ロボットの応用は今や工業分野にとどまらず、機械加工業、電子・電気産業、食品産業など様々な分野で応用されており、巨大な先進国に巨大な経済効果をもたらし、工業および産業における困難を解決している。このため、先進国では多くの企業がロボットの研究に着手した。産業用ロボットは先進国においてかなり大きい市場シェアを持つからである[1]。各先進国で幅広くロボットが応用されているのは、先進国の科学技術力は途上国より優位であるためだ。しかも先進国市場では、産業用ロボットの応用範囲が広い。
これに対して中国の産業用ロボット産業は、現在比較的速い発展スピードで年々成長しているものの、先進国と比べるとまだ格差が存在する。中国の工業のスタートは先進国よりも遅れたためだ[2]。現在中国では、電子あるいは電気分野における産業用ロボットの供給量が比較的多く、その次が自動車製造業となっている。これは、中国がいくつかの産業においてロボットによる補助を早急に必要としていることを物語っている。大まかな統計データによると、現在中国の産業用ロボットの売上増加幅は過去数年よりも拡大しており、中国は徐々に第三の産業用ロボット市場になりつつある。2012年には、中国のロボット売上増加幅は世界2位となった。しかし、ここで現時点における中国の産業技術の現状を、しっかりと認識しなければならない。中国の生産技術は比較的立ち遅れており、人件費も安い。このことは、産業用ロボットの製造プロセスに大きな制限をもたらしている。産業用ロボットおよびいくつかの自動化関連設備を開発するには、中国が急速に新型の産業国となる必要がある。中国はこのため、いくつかの先進技術を導入し、社会の発展趨勢を徐々に変化させ、産業用ロボットの現状を変化させていく必要がある。
2 産業用ロボットのコア技術
現在、中国の産業用ロボットのいくつかのコア技術にはある程度の発展が見られるが、産業用ロボットの製造においてはまだ体系的なコア技術がなく、いくつかの先進技術を導入し、現代の産業資源に融合させているだけであり、体系的な資源の統合ではない。これにより、いくつかの大学で減速機、コントローラーなど重要な工業用部品が不足する事態を招いている[3]。
2.1 産業用ロボットの様々な操作技術
産業用ロボットの製造においては通常、人に似せて設計が行われ、実行プログラムが組まれ、人の行為の感知を通じて操作を行う。これには高精度かつ精密な技術によって独立したセンサーを設計しなければならない。こうすることで、ロボットは人と同じような挙動が可能になる。例えば、人間の機械装置の操作をロボットに模倣させることで、機械設備の一連の操作を行うことができるようになる。重要なのは、産業用ロボットの設計において、安全性が高いアクチュエータを選ぶことである。こうすることで、周囲の環境に対するロボットの警戒が高まり、事故の発生や突発的事件の発生を減らすことができる。
2.2 産業用ロボットの自律航法システム
現在、多くの先進国では産業用ロボットにナビゲーションシステムを搭載している。その目的は、ロボットに人間と同じ一定の方向感覚を持たせ、障害物を避けられるようにするためである。産業用ロボットに自律航法システムを搭載することで、ロボットは緊急事態の発生時に、ある程度の応急措置をとれるようになる。現在中国は、ナビゲーションシステムの研究開発でまだ大きな成果は上げられていないが、技術革新が絶えず行われ、いくつかの技術の改良が行われれば、ロボットにも適用できるようになるだろう。例えば、無人の自動駐車システムは自律航法システムの設計を基に生まれた技術であり、事故の発生を減らし、安全運転をサポートすることができる。
2.3 産業用ロボットのヒューマンマシンインタラクション技術
現在中国では、仮想インタラクションインターフェースという技術が開発されている。これは一種のモバイルインタラクティブシステムで、いくつかの簡単なジェスチャーにより、図形を表示したり、操作命令を出したりできるというものだ。産業用ロボットにヒューマンマシンインタラクション技術を搭載することで、ロボットをよりスマート化し、操作をより柔軟にし、さらにインタラクティブデバイスに先進技術を採用することもできる。例えば3Dホログラフィック環境モデリング技術は、ロボットが周囲の環境を感知し、障害物があるかどうかを判断できるようにする。ヒューマンマシンインタラクションの最終目的は、双方が互いに適応できるようにし、人間が抱える困難をロボットが的確に解決し、建設的な意見を出せるようになることである。重要なのは、産業用ロボットの設計において、人とロボットの通常の対話に使われる言語について考慮することだ。こうすることで、人間は学習の過程において言葉を聞いて理解し、学ぶことができる。言葉の意味が分からないために多くの情報がつかめないという状態を避けることができる。
3 中国の産業用ロボットの発展戦略
上述した中国の産業用ロボット発展の現状に関し、早急にいくつかの戦略的措置を講じて、現在の中国の工業市場発展の原動力を変化させる必要がある。こうすることで、産業用ロボットは市場において、良好な発展の空間を得られ、研究開発段階において多くの先進技術を導入することができる。ただし、こうした技術は中国の総合的な発展ニーズに適応する必要があり、ある技術ばかりを重視して中国の総合的な技術能力を軽視するようなことはしてはならない。
3.1 産業用ロボット産業の支援政策の制定
中国は多くの分野で産業関連の政策を発表し、その産業の順調な発展をサポートしている。工業面でもいくつかの政策文書が打ち出されているが、産業用ロボットに関する政策はまだなく、産業用ロボットを開発する多くの企業が直接的な利益を効果的に得られない状態にある。ゆえに、政府関連機関は、詳細かつ科学的で内容の豊富な産業支援策を制定し、産業用ロボットの大幅な改良を後押しすべきである。重要なのは、国の政策において、所得税の政策支援を強化するべきという点である。無利息ローンなど、比較的先進的な政策制度を打ち出す事も可能だ。これらの政策は、国外の関連政策を参考に、中国に適した支援策を制定することができる。こうすることでロボットの生産・開発企業が市場のニーズにうまく合わせられるようになり、最終的に産業用ロボットの安定した産業化・発展を実現することができる。
3.2 ロボット産業の研究開発チーム
市場において一定のシェアを得たいならば、産業用ロボットの研究開発を行う強大な研究開発チームが必要だ。研究開発チームは企業の技術をつかさどる中心的な力であり、技術のコア要素である。大規模なチームを作ることで初めて、市場で着実に地盤を築くことができる。そのために企業は優秀な人材を誘致しなければならず、技術力が高い人材を優先し、人材募集のルートを幾つも開拓し、高い能力と技術力を持つ人材が長期的にキャリアを発展させられるようサポートする必要がある。こうすることで、中国の工業市場の内需を開拓し、中国の工業発展に向け、力強い技術力を保証することができる。
4 結語
上述のとおり、現在、中国の工業は発展途上にあり、自動化・スマート化といった趨勢を示している。しかし国際化・国内化という二重の競争の圧力が高まるに伴い、一部の労働力コストが年々増加を見せており、多くの工業生産の現場では市場での競争力を高め、経済効果を高めるため、「新鮮な血」が必要となっている。ロボットの製造コストは数人の労働者を雇う費用を上回るが、ロボットの作業能力はある程度スマート化している。ゆえに、これも中国の工業生産のニーズに合致していると言えよう。
参考文献:
[1] 張凌燕.我国工業機器人産業化発展戦略思考[J].電子産品世界,2016(6):3-5.
[2] 寧言軍.我国工業機器人技術現状輿産業化発展戦略[J].南方農機,2016(4):85,88.
[3] 張宇洋.我国工業機器人技術現状輿産業化発展戦略[J].商,2015(34):257.
※本稿は譚景春「試論中国工業機器人産業化発展戦略」(『科技創新導報』2018年第8期、pp.131-133)を『科技創新導報』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司