第144号
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山西:石炭頼りからエコ発展へのモデル転換

2018年 9月28日 王海浜(科技日報記者)

 山西省の面積は中国の国土面積の2%未満を占めるにとどまるものの、石炭資源の埋蔵量は中国全土の20%以上を占めている。

 また、中国の主要な原料炭炭鉱16ヶ所のうち、5ヶ所が山西省にあり、コークス、無煙炭などの希少石炭の埋蔵量は、中国全土、ひいては世界最多だ。

 中国政府の計画により建設された重要エネルギー工業拠点である山西省は、中国全土で最大の石炭の産地で、原炭の年間生産量は長年中国でトップ、中国全土の総生産量の4分の1以上を占めている。さらに、累計生産量は160億トン以上で、70%以上が中国全土に送られている。しかし、石炭に過度に依存しているというのが同省の弱点ともなっていた。改革開放(1978年)実施以降、山西省は、石炭をめぐって研究に研究を重ね、資源型経済構造を調整し、エネルギー革命の先頭に立っており、現在は自然に優しい発展を念頭に入れたモデル転換が新たな動向となっている。

環境汚染の原因となっていた廃棄物が高品質合成油に変身

 今年1月1日、潞安集団の180万トンの高硫黄石炭クリーン利用一体化プロジェクト全システムが試運転に入り、基準をクリアした石炭ベースの高品質合成油の生産が始まった。そして、山西の石炭の価格は30倍近くに跳ね上がった。

 この高品質のベースオイルは、石炭液化を基礎に合成された油で、中国国内の技術や製品における空白を埋めた。300ミリリットルの販売価格は約2元(約16.20円)で、コストは1角(1元の10分の1)未満だ。使用されている原料は、以前は廃棄されていた高硫黄石炭や低品位炭だ。山西省の低品位炭の埋蔵量は400億トン以上で、以前は環境汚染の原因となる固形廃棄物でしかなかった。

 山西省の総合改革モデル転換の重大モデルプロジェクトである潞安のこのプロジェクトは、世界最先端技術が多く採用されており、5年かけて中国初の低品位炭の改質産業基地を建設し、1.0版燃料油から、2.0版高品質ファインケミカルへの産業アップグレード、石炭のクリーンで効率の高い利用を実現し、高品質ろう、無臭溶剤、特殊燃料、高品質潤滑油、スペシャリティ・ケミカルズの5大ジャンル、49種類の高品質ファインケミカルを生産できるようになった。

 潞安集団の劉俊義・副総経理によると、生産された高品質石炭ベースの合成油は、最終的に化粧品や食品の原料となり、輸入品に取って代わるようになった。それにより、山西省の石炭は、効率が良くクリーンに利用できる新時代に突入し、中国のテクノロジーイノベーション重大プロジェクトのモデルケースとなり、同省がエネルギー革命の先頭に立つという点で、重要な一里塚となっている。

炭鉱跡地に設置されたメガソーラーが「金のなる木」に

 左雲県鵲児山鎮青疙瘩村の貧困世帯・武建党さんは毎月10日におよそ1000元の発電による収入を得ている。武さんは、「炭鉱跡地にメガソーラーを設置するなんて、以前は夢にも思わなかった」と話す。太陽光パネルが整然と並び、太陽の光に照らされてキラキラ輝き、中間変電所がその中にそびえ立ち、銀色のラインを通して、クリーンエネルギーが遠くへ送られている。同県大同市の店湾鎮に入ると、「炭鉱跡地国家最先端技術太陽パネルモデル拠点」という看板が道路脇の目立つ位置に立っている。

 大同市は1980年代から、少しずつ中国の重要なエネルギー拠点基地となり、膨大な量の石炭が採掘され、左雲、南郊、新栄などの石炭生産に頼って成長してきた県には、合わせて1687平方キロの炭鉱跡地ができた。その跡地に、太陽光発電所や風力発電所を建設するというのは大同市のエネルギー経済モデル転換におけるイノベーションの1つだ。2017年末の時点で、大同市の太陽光発電、風力発電の設備容量は計320ギガワットに達し、山西省の3分の1を占め、国家新エネルギーモデル都市になっている。

 黄土高原北部にある大同市は、植物や木々が少なく、降水量も少ないものの、日照時間は1日平均8時間以上の計算となる年間3000時間以上で、中国で太陽光資源が最も豊富な地域の一つだ。計画では、19年までに、大同市の炭鉱跡地に、300ギガワット分の太陽光発電所を建設することになっている。石炭への依存度を低下させる取り組みを、大同市は長年行っており、モデル転換により、環境も顕著に改善している。山西省環境保護庁の統計によると、「石炭の都」として広く知られる同市の昨年と今年第一四半期(1-3月)の大気の質は同省で1位だった。太陽光発電と風力発電の推進により、石炭が原因の汚染がさらに改善され、排出される炭素の量も減少すると見込まれている。

深い炭層にある資源を掘り起こしクリーンな新エネルギーを生産

 山西省のコールベッドメタンと言うと、晋城市に言及しないわけにはいかない。同市は山西省最多のコールベッドメタン埋蔵量を誇り、その量は6兆8500億立方メートルに達する。同省の70%、中国全土の25%を占める量だ。現在、山西省のコールベッドメタンの生産量は中国全土の約90%を占め、120メガワットの電力を発電する晋煤集団寺河は、世界最大のコールベッドメタンを使った発電所だ。晋煤集団が運営するコールベッドメタンを使った発電所は5ヶ所あり、その設備容量は計199メガワットだ。また、建設中、もしくは建設計画があるコールベッドメタンを使った発電所プロジェクトが10件あり、その設備容量は計107メガワットに達する。

 昨年11月、山西省沁南コールベッドメタン基地は、3年の取り組みを経て、深い炭層縦式水平井コールベッドメタン開発技術の開発に成功し、深い場所に埋蔵し、貯蔵圧力、地殻応力強く、浸透率が低いという地質条件では、コールベッドメタンの生産量が低く、開発のリスクが高いという難題を解決し、深い炭層から1日平均1万5000立方メートル(坑井1ヶ所当たり)のコールベッドメタンを安定して生産することができるようになった。これは世界でも最先端の水準だ。

 山西省党委員会と省政府は、コールベッドメタン産業を、1日も早く同省の多元産業体系の柱となる産業にし、資源型経済モデル転換発展モデル区を構築し、中国全土のエネルギー革命の先頭に立つために新たな貢献をするという目標を打ち出している。

 山西省の榆社県と武郷県で最近、大きなガス田が発見された。コールベッドメタン、シェールガスの埋蔵量は5455億5100万立方メートルで、大型コールベッドメタン産業拠点を建設する資源的条件が揃っているため、山西省はコールベッドメタンを産業の柱とするための堅実な資源的基盤を得た。

石炭ベースの低炭素テクノロジー重大特定項目が大きな成果

 ガス化装置は、石炭のガス化において重要な役割を担う装置で、石炭のクリーンで効率的な利用においてまず必要となる技術だ。しかし、技術開発が遅れていたため中国の化学工業企業の多くは長年、巨額の資金を投じて、海外からガス化技術と装置を輸入していた。山西陽煤化工機械公司は02年から、清華大学の研究開発チームと提携して、第一世代、第二世代、第三世代のガス化装置プロセス技術を次々に開発し、海外企業の技術独占状態を打破し、2つの分野において世界一を記録した。そして、中国企業は、技術ライセンス費用十数億元を節約できるようになったと同時に、低品位炭のクリーンな利用のために新たな方法を発見し、第三代ガス化装置を利用すれば、1機当たり、年間約3000万元の運用コストを削減できるようになった。

 第一世代から第四世代までガス化装置は少しずつアップグレードし、清華大学と山西陽煤化工機械公司の研究開発における提携は大きな成果を収めた。

 山西省の石炭の埋蔵量は中国全土の22.6%を占める。しかし、そのうちの30%以上は硫黄含有量が多く、また灰分も多く、高水分の低品位炭だ。そのため、低品位炭を活用しながらも、いかに汚染物の排出を最大限減らし、石炭利用のエコな発展を促進するかが、山西省だけでなく、中国の石炭産業全体の課題となっている。

 石炭を燃やす火力発電業界であっても、石炭化学工業業界であっても、石炭のガス化が最初の工程で、石炭利用のエコな発展を目指す石炭革命において最も要となる技術だ。山西省科技庁は14年から、このプロジェクトを省のテクノロジー重大特定項目に盛り込んでいる。

 14年から、同庁が実施している石炭ベースの低炭素テクノロジー重大特定項目は、主にコールベッドメタン、石炭化学工業、石炭のコークス化、石炭を使った火力発電、石炭関連の機械・装置、石炭ベースの新材料、石炭業界と農業の組み合わせの7分野をカバーし、80のプロジェクトを立ち上げ、サポートしている。それらプロジェクト実施の過程で、特許出願が265件あり、うち、発明特許が129件で、40件の特許を取得した。

 石炭だけが柱だった山西省には、今では多くの柱ができ、資源に依存していた状態から、イノベーションが牽引力となり、炭鉱跡地にはエコな太陽光発電所ができるようになっている。山西省は現在、経済・社会発展における段階的な目標に向かって取り組んでいる。


※本稿は、科技日報「山西:煤炭大省緑色転型」(2018年10月08日第07版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。