管理が厳格化する新エネルギー自動車―今後は不法な資金集めの手段とならない
2018年11月28日 陳亜瑩(『中国新聞週刊』記者)/神部明果(翻訳)
「自動車産業投資管理規定」の公布・施行が近い。これにより、新エネルギー産業の盲目的な規模拡大、不適切な便乗行為が規制され、投資の適正化や管理監督の厳格化も進み、安易な投資、低 レベルな重複投資が制限されることになるだろう。
この規定と対をなすかのように、わずか2日後には工業・情報化部が「新エネルギー自動車生産企業 (第一群)の特別公示」で企業リストを公表し、12カ月以上生産停止している新エネルギー自動車〔以下、N EV〕メーカー30社を明らかにした。規定に従い、7日以内に工業・情報化部の再検査に合格しなければ、NEV生産企業の資格は抹消される。
新エネルギー業界はすでにシビアな管理期間に突入しており、適者生存のための淘汰もまもなく始まろうとしている。
見せかけの繁栄
中国のNEV販売台数は世界トップレベルのようにみえるが、実情は異なる。総生産販売台数のわずか3%にすぎないNEVが、なんと200社以上の自動車メーカーにより生産されているのだ。中 国自動車工業協会のデータによると、2018年1月~7月のNEV販売台数は、前年同期比97.1%増の50万台に迫りつつある。
産業規模の拡大と成長とともに、深層レベルの問題が浮き彫りになってきている。
現在、中国の新エネルギー産業は分散傾向にあり、製品の技術水準は玉石混交で人気車種や世界的な高級車ブランドが存在しない。にもかかわらず無謀な規模拡大や過熱する投資合戦の兆しがみえる。レ ベルの低い一部の企業が、安かろう悪かろうのビジネスモデルで市場を乱しており、これが全体的な産業発展の水準にも影響を与えている。
NEV投資事業をめぐるこれまでの不完全な管理規則が原因で、不純な動機を抱えた技術力を持たない企業が一斉に自動車業界に押し寄せた。その結果、産業自体は未発達にもかかわらず、生 産能力だけがすでに深刻な過剰状態に陥っている。
概算によれば、2017年1年間に公開された全国各地の計画生産台数は1200万台に届く勢いで、関連投資額は約4000億元に達している。これらのデータは今年も伸び続けている。
実のところ、NEV生産企業約200社のうち生産資格を持つのはわずか15社で、その他多くの企業は、量産と販売を急ぐあまり次々と政策の抜け穴を利用し、O EMや生産資格の不法取得などの手段に出ている。また、生産資格をもつ15社のうち、NEVを販売中の企業は6社のみとなっている。
吉利自動車〔GEELY〕の李書福会長は以前こう指摘している。「NEV生産資格はあるが、自動車生産の技術力が皆無なうえ、『資格』に物を言わせ至る所で投資を募るような企業が存在する。その反面、実 力もあり実際に生産を望んでいる企業が資格を取得できていない」
こうした状況は、優れた企業を支援し、NEV産業の発展を促進するという政府の当初の趣旨に全くそぐわない。より効果的な規則づくりに向けて、発展改革委員会は昨年5月22日以降、N EV生産資格の審査業務を一時停止している。
業界レベルの底上げを目指して
「自動車産業投資管理規定」の施行が秒読みとなった今、上記の問題の徹底的な改善が望まれる。さらにNEV生産資格の審査再開も期待されている。
「自動車産業投資管理規定」の意見募集稿には、純電気自動車〔BEV〕新規投資事業に関し、より具体的な要件が追加された。投資地域、建設規模、生産能力、品質、生産内容範囲、燃料電池基準、生 産規模の拡大範囲などについての記載がある。
浙江省湖州市長興県の企業内で自動車動力用リチウムイオン電池を生産する工業用ロボット。写真/視覚中国
具体的には、第4章第15条に「単独でのBEV新規投資事業に関し、以下の状況にあてはまる省では投資を禁止する。①NEV保有比率が全国平均以下である、② 製品区分が同等のNEV生産資格を有しているが、稼働していない、③製品区分が同等の既存EV新規投資事業における生産台数が、投資規模の80%に達していない」との規定がある。一 部の地方政府が地元企業を保護する手段は、まもなく閉ざされようとしている。
意見稿では、ガソリン車投資事業に関して生産能力の拡張が厳格に制限されたほか、NEV投資事業についても数値化した条件が付与された。単独でのBEV新規事業においては持続的な開発能力が求められ、B EV生産規模についても、乗用車は10万台、商用車は5000台を下回ってはならないと規定された。
さらに特筆すべき点として、意見稿第1条には「全ての株主は事業が完成し、かつ生産量が生産規模に達するまで株式資本を売却・譲渡してはならない」とある。
つまり、NEV事業は今後、不法な資金集めの温床とはなり得ない。一方で資格審査の再開を待ちわびる準備万端のNEVメーカーにとっては好機といえる。
このほか、古い生産能力の淘汰や、ゾンビ企業の清算も順調に進んでいる。工業・情報化部は5月までに「自動車生産企業への特別公示」を3度にわたり実施し、立ち後れた企業の技術刷新、構 造転換と高度化を促している。また、NEV生産企業への特別公示も9月3日に正式に公布されたが、この公示には12カ月以上生産停止しているNEV生産企業として、某 有名自動車メーカーが複数含まれていたのは注目に値する。これらの企業は、9月9日の公示期間終了までにデータを修正する必要がある。参入要件を満たせないか破産した企業は資格を抹消されることになる。
2018年は、NEV業界への管理監督政策が大きく変わる節目の年だったといえよう。科学技術部、工業・情報化部、財政部、生態環境部、発 展改革委員会さらには商務部などの関連政府機関が続々と政策の方向性を明確化させており、NEV産業への厳格な管理が始まっている。
※本稿は『月刊中国ニュース』2019年1月号(Vol.83)より転載したものである。