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湖北:オリジナル革新能力の向上を強力に推進

2019年2月4日 劉志偉(科技日報記者)

 昨年末、湖北省武漢市にある国家パルス強磁場科学センターが64テスラのフラットトップパルス磁場強度を実現し、フラットトップパルス磁場強度の世界記録を更新した。

 同センターは2008年に建設が始まり、設備の大部分を独自開発・独自製造しており、国産化率は85%に達する。設立後は、中国国内の科学者が海外へ実験に行く必要がほぼなくなり、またケンブリッジ大学やスタンフォード大学など多くの海外の専門家を引き付けるようにもなった。李亮センター長は、「米国は70テスラから90テスラを達成するまで20年かかり、ドイツは15年かかったが、中国はたった4年だ」と紹介した。

 昨年6月30日、華中科技大学でもう1つの国家級重大科学技術インフラ――総投資額9億元(約146億円)、敷地面積120ムー(約8ヘクタール)、建築面積3万6千平方メートルの精密重力測定ビルとトンネル型実験室の建設が始まった。

 湖北省科学技術庁の杜耘副庁長は、「省党委員会と省政府は最近、『関于加強科技創新引領高質量発展的若干意見(科学技術革新の高い品質の発展の誘導を強化することに関する若干の意見)』(科学技術革新20条)を発表し、重大基礎研究プラットフォームを集中的に構築し、湖北省の科学技術革新のレベルアップに努め、オリジナル革新能力の向上を推進するとの方針を明らかにした」と述べた。

シードファンドが若手に道を開き橋を架ける

 2019年1月の武漢市東湖エリアは、厳冬を迎えていた。中国科学院水生生物研究所の喫茶室で、殷戦副所長と胡煒副所長が科技日報の記者にそれぞれの学術的発展の歩みを語ってくれた。

 殷戦氏は、2005年に海外から帰国して研究活動を行うようになったが、当時は課題に与えられた経費は十分ではなかった。そこで所内の研究者3人と共同で湖北省自然科学基金革新チームとして申請し、ゼブラフィッシュの研究を始めたという。「当時は省の革新チームには20万元のプロジェクト経費しか支給されなかったが、自分にとっては大きな励みになった」と振り返った。

 この経験を土台に、殷氏はさらに努力を重ね、今度は「国家傑出青年科学基金」の申請に成功し、200万元の研究資金を獲得し、それ以降のより高度な研究の基礎固めをすることができた。

 中国共産党の第18回全国代表大会の開催以降、湖北省科学技術庁は革新駆動型戦略を実施し、基礎研究への投資を持続的に拡大し、基礎研究経費を2倍にした。同庁基礎研究処の王東梅処長は科技日報の取材に対し、「現在の基礎研究計画では科学技術のリーダー的人材と次世代を担う若い人材の育成に焦点を当て、科学者が最も創造力を備えた時期に育成支援を提供する。湖北省の基礎研究経費のイメージは『シードファンド』だ」と述べた。

 王処長は続けて、「『科学技術革新20条』は基礎研究への投資を大幅に増やし、省の財政予算で自然科学基金特定プロジェクトを設置することを明確にしている。今年はさらに国家自然科学基金委員会と共同基金も設立する予定だ」と述べた。

 胡煒氏は、「自分は『シードファンド』を通じて一歩ずつステップを上り現在に至る。初めて手にした人材類プロジェクト資金は湖北省の傑出青年基金で、当時は8万元しかなかった。これを足掛かりに、2013年にも『国家傑出青年科学基金』を獲得した。2015年に自分のチームが湖北省自然科学基金革新チームの資金を獲得し、2017年には国家自然科学基金革新チームに選ばれた」と述べた。

 統計によると、ここ5年の間で、湖北省自然科学基金から支援を受けた若手科学者は3,836人、支援経費は2億2千万元に達した。長年の基礎研究人材への持続的な支援により、基礎研究人材の育成における蓄積の成果が現れ始め、高水準の人材チームによる成果がはっきりと現れてきた。ここ5年ほどの間に湖北省では国家自然科学基金のプロジェクト1万1585件を獲得し、獲得した経費は総額65億1千万元に達した。

 ここ5年ほど、湖北省で新たに国家革新チームや国家傑出青年に選ばれるケースが目立って増加しており、2000年以降は国家革新チームのうち43%、国家傑出青年のうち42%を占め、特にここ2年間で新たに増えた国家革新チーム数は北京市に次ぐ全国2位となった。

省・部の国家実験室共同建設がより身近に

 武漢科技大学青山キャンパスにある「耐火材料・金属精錬国家重点実験室」は、省と部が共同建設した重点実験室として、これまでに5年の歳月を重ねている。

 「我々の科学研究経費が大幅に増加し、財政予算からの経費は2倍以上に増えた」。1月16日、同実験室の顧華志常務副室長は科技日報の取材に対し、実験室の5年間の変化を数え上げた。実験室が第1著者として発表したサイエンス・サイテーション・インデックス(SCI)収録論文数は6倍に増え、国内で授与された発明特許件数は2倍に増え、省・部レベルの科学技術コンテストの1等や2等の獲得成果は2倍に増えたという。

 「国家重点実験室として、ハイレベル人材の誘致力は非常に高い」。湖北大学科学技術発展研究院の肖徳院長はこのように述べた。湖北大学生体触媒・酵素工学実験室は昨年、省・部が共同設置する国家重点実験室に正式に選ばれた。国家重点実験室の設立準備のため、この3年間に30人を超えるトップレベル人材を誘致し、その中には「千人計画」などの国家レベル人材5人や、湖北省の「百人計画」や「楚天学者計画」などの省レベル人材20数人が含まれるという。

 耐火材料・金属精錬国家重点実験室には、科学技術成果が移転されたサンプルや部品が多数陳列されている。さまざまな金属精錬に利用される耐火材料があり、中には世界の先進レベル、世界をリードする技術も多い。たとえば短期プロセスで製造可能な高強度で軽量化を実現した自動車用鉄鋼、積載量の大きい高速鉄道のために研究開発された「ナノ構造高強度ベイナイト鋼レール」がある。顧氏は、「うちの実験室と中鉄大橋探査測定設計院集団有限公司、中国宝武集団、中信集団、江陰興澄特殊鋼鉄有限公司などとで共同開発した新型橋梁用鉄鋼材料は、世界初のメインスパン1千メートル以上の鉄道道路併用橋・滬通長江大橋に利用されている」と紹介した。

 前出の杜氏は、「省・部共同建設の国家重点実験室は省立大学における地方経済建設と密接に関わる、優位性を備えた学科の発展を支援し、強化・推進する役割を十分に果たしてきた。これと同時に、産業のオリジナル革新能力の向上に対しても、地域の革新の優位性の形成に対しても、指導的役割を果たしてきた」と述べた。


※本稿は、科技日報「湖北:大力推動原始創新能力提昇」(2019年1月22日付1面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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