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リチウムイオン電池の発展にさらなる「管理」を

2019年3月4日 李禾(科技日報記者)

視覚中国より

業界管理弁法は技術革新の重視に加えスマート・エコも奨励―

 中国はリチウムイオン電池の主要生産国の一つである。2014年にリチウムイオン電池の生産量が52億8,700万個に達し、世界の総生産量の71.2%を占め、10年連続で世界首位の座を守っている。2 018年の生産量は121億1,400万個で、2014年の2倍以上となった。

 リチウムイオン電池業界の急速な発展に対応し、管理を強化して産業のモデルチェンジとレベルアップを促すため、工業・情報化部はこのほど、「鋰離子電池行業規範条件(リチウムイオン電池業界規範条件)(2018年版)」および「鋰離子電池行業規範公告管理暫行弁法(リチウムイオン電池業界規範公告管理暫定施行弁法)(2018年版)」を公布した。こ の新たな規範文書は2019年2月15日から正式に実施されている。

リチウムイオン電池産業の市場規模は820億元

 携帯電話や電動自動車、電動工具、デジタルカメラ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス等の急速な発展により、リチウムイオン電池を必要とする製品やシーンはますます増えている。統計によれば、2018年の中国のリチウムイオン電池の市場規模は820億元に達した。リチウムイオン電池メーカーによる技術革新や性能・安全性の向上によってリチウムイオン電池のニーズは今後も増え続けると見られ、2 024年までに中国のリチウムイオン電池産業の市場規模は1,500億元を超えると予想されている。

 浙江天能能源科技股分有限公司でテクニカルディレクターを務める孫偉博士は科技日報記者のインタビューを受けて、「現在、中国のリチウムイオン電池産業は世界的な市場シフトによって受注が増え、急速に発展している。市場全体の規模拡大が続いており、川上・川下産業の連動が進んで産業チェーンが徐々に成熟しつつある。また、産業構造の調整によって各地への積極的な進出が促されており、国 内トップ企業の台頭が加速し、『強者がますます強くなる』状況が続いている」と答える。

 現在、中国の長江デルタ、珠江デルタ、京津冀(北京市・天津市・河北省の総称)等はリチウムイオン電池産業の集積地となっているが、ハイエンド向けのリチウムイオン電池は技術障壁が高いため、将来的には北京市や江蘇省、上海市等を代表とする技術の集約地が既存技術によるリードを基盤にハイエンド向け電池材料の独占的地位を維持し続けるとともに、新エネルギー自動車において駆動用バッテリーに対する性能要求が高まるにつれ、これら地域の優位性がさらに顕著になるだろう。

 しかし、孫偉博士は、「リチウムイオン電池産業の将来性は良好とは言え、発展の足かせとなるボトルネックも無視できない」と指摘する。「安全性技術のボトルネックとしては、安全構造の設計をおろそかにすると熱暴走現象が頻発すること」や、「製造技術が高品質製品の要件を満たさない場合には、電池パックの一致性問題の改善が必要となること」、「コストが高止まりしており、材 料のコア技術においてブレイクスルーが待たれること」、「標準体系に欠陥があるため、制定・改正業務が急務であること」、「市場秩序が混乱しており、企業の無秩序な競争が深刻であること」、「安全管理責任が一定のレベルに達しておらず、業界管理の役割が効果的に発揮されていないこと」、「グリーン製造(地球に優しい製造)・スマート製造は始まったばかりのため、指導を促進する必要があること」等の例が挙げられるという。

技術革新、スマート製造・グリーン製造を重視

 これまでの「鋰離子電池行業規範条件」および「鋰離子電池行業規範公告管理暫行弁法」は工業・情報化部が2015年に公布したものだ。今回の改正は、中国のリチウムイオン電池産業のこの3年あまりの発展と実践をベースとしており、いずれの規範文書も初の改正となる。改正のハイライトは何であろうか。

 最大のハイライトは、これまでの生産能力重視から技術革新重視へと方向転換した点であり、2015年版に盛り込まれていた生産能力に対する要求が削除されたことだ。たとえば、「 電池の年間生産能力は1億ワットアワーを下回らず、電池の正極材料・負極材料の年産能力はいずれも2,000トンを下回らないこと」等が削除されている。その一方で、技術革新に関するいくつもの条項が新たに追加されている。例としては、「研究開発経費はその年の企業の主力事業収入の3%を下回らないこと」や、「企業に対し、ハイテク企業資格又は省級以上の研究開発機構、技 術センター等の資格の取得を奨励すること」等である。

 孫偉博士によれば、新規範文書では企業の生産規模と技術工程について新たに基準を設けたほか、用語もさらに科学的で正確になった。たとえば、「電池の正極材料・負極材料中の磁性異物および亜鉛、銅 等の金属不純物の検査能力」で使われる「磁性異物」という言葉は2015年版の「鉄」からの変更であり、リチウムイオン電池の新材料の研究開発と利用にふさわしいものになっている。

 二つ目のハイライトは、メーカーに対する検査能力と品質管理要求の引き上げである。「検査に関しては、新規範文書では、企業は製品の品質検査能力を持たなければならないことが新たに定められ、かつ、満 たさなければならない要件について明確に規定されている」と孫偉博士は語る。たとえば、リチウムイオン電池メーカーは、基準に定められる電池サイクル寿命や高低温放電等の電気特性検査能力等を有しなければならないことが定められ、かつ、材料メーカーの検査能力についても基準が定められている。

 たとえば、新規範文書では、電池の正極材料・負極材料中の磁性異物および亜鉛、銅等の金属不純物の検査精度は、これまでの「1ppmを下回らないこと」から「10ppbを下回らないこと」に改正され、条 件が100倍も引き上げられた。さらに、検査要件のみならず、品質管理システムの向上も強調されている。たとえば、生産プロセスにおいては、「磁性異物と金属不純物の基準超過」等も認識されなければならない。

 第三のハイライトは、新規範文書では内容がさらに科学的かつ具体的になり、特に枝葉末節の技術指標が削除され、その代わりにスマート製造、グリーン製造の内容が盛り込まれたことである。

 これについて、孫偉博士は、「新規範文書では企業における『自動化設備のグレードアップを促進している』」と分析する。つまり、「グリーン(地球にやさしい)・サプライチェーン」を築き、資 源の節約や環境保全性を指針として調達、生産、マーケティング、リサイクルおよび物流体系を構築し、サプライチェーンにおける利害関係者が業界基準および規範を遵守するよう促し、拡大生産者責任制度を実施し、廃 棄リチウムイオン電池の回収処理体系を確立することである。また、企業に対しては、『グリーン工場評価通則』(GB/T 36132)等の要求を参考にグリーン工場を建設することを奨励している。特に、環 境保護分野に関しては新たな規範を定め、先進的設備による省エネ・環境保護効果を強化している。たとえば、環境汚染が深刻で、エネルギー使用が旧式の、国が淘汰を命じる設備の使用が禁じられている。また、社 会的責任が強調され、「社会的責任を履行し、貧困地区において投資・起業すること」が奨励されている。これは、国の貧困支援政策と密接に関係している。

業界の適者生存、秩序ある競争にプラス

 中国のリチウムイオン電池産業は長きにわたり「優良生産能力の不足」の状態にある。たとえば、駆動用バッテリー分野では、上位10社以外のメーカーの市場需要は合計で約13%でしかないが、業 界総生産能力の約55%を占め、そのほとんどがローエンド向けの生産能力であり、生産能力の利用率は約10%しかなく、業界全体の生産能力の利用率指標を引き下げている。このほど公布された「 鋰離子電池行業規範公告管理暫行弁法」においては、適用される企業の事業範囲から「新エネルギー自動車用駆動用バッテリー」が削除されたが、2016年のリチウムイオン電池生産量に占める駆動用バッテリーの割合は45.08%であった。

 上海交通大学汽車工程研究院の殷承良副院長は、「鉛蓄電池やニッケル水素電池等の技術に取って代わる形で、現在、リチウムイオン電池が大きく発展しているが、駆 動用バッテリーメーカーが約200社もあるという中国の業界規模も巨大すぎるため、合併再編の必要に迫られている」と考えている。

 2018年の第3四半期までの事業レポートでは、中国の中小電池メーカーで大幅な赤字が報告されている。新規範文書では新エネルギー自動車向けの駆動用バッテリーは範囲に含められていないが、こ のことは自動車用駆動用バッテリー業界の発展と規範化に必ずや影響を及ぼすと業界関係者は見ている。

「リチウムイオン電池業界の立場から見れば、新規範文書で安全性やスマート製造等の問題に関して明確な規定がなされたことは、リチウムイオン電池メーカーが秩序のない競争から秩序ある競争に移行し、健 全に発展する上で役立つ」。「規定の内容がさらに具体化され、操作性が高まり、スマート製造やグリーン製造の概念がさらに明確になったことも、企業の発展にとっては方向性の明確化につながるとともに、発 展過程においても『準拠となる制度が存在する』ことにつながる」と孫偉博士は語る。


※本稿は、科技日報「譲鋰離子電池発展更有“理”」(2019年2月20日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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