包頭青年イノベーション・起業拠点―社会組織も「孵化」
2019年5月8日 李宝楽/張景陽(科技日報記者)
気温が上がり、花が咲き誇る春の訪れとともに、内蒙古(内モンゴル)自治区包頭市内では、水色のシェア自転車「哈羅単車(Hellobike)」を街の至る所で目にすることができるようになった。どこにでもあるため、非常に便利で、決済も瞬時に終わり、短距離なら快適に移動することができるというのがシェア自転車の最大の特徴だ。包頭稀土ハイテク産業開発区青年イノベーション・起業拠点が新プロジェクトとして実施し投入した哈羅単車は包頭市の市民の間で好評を博している。
2017年7月、包頭稀土ハイテク産業開発区は、同自治区初の中国共産主義青年団が独自に立ち上げ運営する青年イノベーション・起業拠点と社会組織インキュベート拠点を設置し、「包頭稀土ハイテク産業開発区青年イノベーション・起業拠点」と命名した。同拠点は約1年の運営を経て、稀土ハイテク産業開発区の特徴を備え、地域社会の発展にマッチし、青年のイノベーション・起業をサポートする「発展ロード」を形成するようになっている。筆者はこのほど、この「青年による起業・イノベーションの拠点」を取材した。
機先を制し、青年による起業・イノベーションの道を切り拓く
「哈羅単車」は現在、包頭市のシェア自動車業界では、ユーザーのリピート率が最も高いブランドになっている。哈羅単車・戦略発展総監の呉伝凡氏は、「前期の調査研究の結果や統計を見ると、包頭市では、自転車が壊される行為があまり見られないことが分かっている。また、包頭稀土ハイテク産業開発区では、起業の良いムードが出来上がっており、当社はこの都市が気に入っただけでなく、青年イノベーション・起業拠点がプロジェクトを呼び込み、それをサポートしようとする誠意を見て、その将来性を見込んでいる」と、青年イノベーション・起業拠点でプロジェクトを実施した理由を説明した。
青年イノベーション・起業拠点は、同自治区初の中国共産主義青年団が企画し、独自に立ち上げ運営する起業・インキュベーション拠点だ。この拠点が設置された理由について、稀土ハイテク産業開発区・中国共産主義青年団工作委員会の劉嘉書記は、「習近平総書記が以前、『青年がいる所に、中国共産主義青年団の組織を設置し、青年の必要に応じて、その組織は的を絞った業務を展開しなければならない。そして組織が、青年と意思の疎通を図り、サービスを提供し、青年の強固な砦となるよう努力しなければならない』と指摘した。それが、青年イノベーション・起業拠点を設置するきっかけとなった」と説明した。
「大衆による起業・イノベーション」の時代が到来し、青年が自主イノベーション・起業の道を選択するよう奨励されているものの、包頭市は、青年イノベーション・起業の政府によるサポート体制や全体的な意識や能力などの面で、課題もたくさんあり、その解決が急務となっている。そのような時代背景の下、包頭稀土ハイテク産業開発区は、「中国共産主義青年団組織は何ができるのか」を常に考え続けてきた。
劉書記は「当委員会はイノベーション業務スタイルとサービスの手段を堅持して、青年にとって身近な中国共産主義青年団を構築し、『政府による資金助成、中国共産主義青年団主導の管理、政府による公衆監督、社会民衆の受益』という運営スタイルを採用し、地域内の青年がスキルを身につけ、成長、発展し、交流し、協力し、ウィンウィンとなるための架け橋を作るほか、良いムード作りをして、1人でも多くの有識青年がハイテクパークでイノベーション・起業するよう導いている」と、青年イノベーション・起業拠点の設置と発展の全体的な構想について説明する。
イノベーションに取り組む企業や起業者の発展における資金面での問題を解決するために、青年イノベーション・起業拠点は、資金を「増やす」方法と、支出を「減らす」方法の両方を駆使している。「増やす」方法としては、融資機構とのマッチングを促進している。例えば、内蒙古匯徳投資管理有限公司や華創倶楽部内蒙古分会、草原天使VC倶楽部などのベンチャーキャピタル投資機構と積極的に連携し、起業プロジェクトのために融資ルートを拡大させている。これまでに、金融系マッチングサービスが24回展開され、包頭市悠貝成長科技有限公司と内蒙古萌蒙達網絡科技有限公司はその場で融資することで合意。融資額は100万元(1元は約16.7円)に達する見込みだ。「減らす」方法としては、政策ボーナスを実施し、一連の融通性を備えた的を絞った入居、インキュベーションや審査などをめぐる制度を制定し、拠点に入居する企業に無料でオフィスを提供したり、無料で不動産管理サポートを提供したり、イベント会場を無料で提供したり、さらに、同拠点での起業コストを約2万元節減できるようにしている。
2018年12月、青年イノベーション・起業拠点は、正式に内蒙古青年起業インキュベーターに認定された。劉書記は、「機先を制すると言っても、時間ではなく、系統化された政策サポートやイノベーションの業務構想を制することを考えなければならない。青年イノベーション・起業拠点は、中国共産主義青年団組織の資源や中国共産主義青年団の政策を十分に活用して、その組織と政府の推進力、ハッカースペースの自発力、社会の参加力、市場化運営力を統合し、最終的にそれらを合わせて強大な力にしてこそ、本当の意味での『機先』だ」との見方を示す。
企業だけでなく社会組織も「孵化」する特殊な拠点
2018年7月19日、包頭市固陽県は水害に見舞われ、包頭青年イノベーション・起業拠点内の2つの社会組織が時を移さず被災地に援助の手を差し伸べた。包頭市自然健康心理職業育成学校の教師と学生、そして兵士は二手に分かれて被害が深刻だった西闘鋪鎮に行き、被災者にカウンセリングを行って、自信を取り戻せるようサポートした。
業界の繋がりや地の利、同じ志を持つ者同士の繋がりなどを活用して、業務を継続的に拡大し、青年イノベーション・起業拠点は中国西部地域では初めてのサービス聯盟・包頭市社区サービス聯盟を設立した。同聯盟は、産業の面で、青年起業家が団結して発展できるよう導き、起業する青年のネットワークを開拓し、さらに、専門分野に焦点を絞り、小さな手掛かりから青年の起業と地方の発展の融合深化を促進している。
青年イノベーション・起業拠点では企業だけでなく、社会組織も「孵化」している。包頭市コミュニティサービス聯盟の李翠娥・秘書長は「これまでに、青年イノベーション・起業拠点で、76の社会組織が孵化した。また、もうすぐ孵化する社会組織も12あり、418人の再就職が確保された。このような孵化スタイルにより、ハッカースペースは全く新しい意味合いを持つようになっている。企業やプロジェクトが孵化すると同時に、社会組織は存続が難しいという問題を解決し、さらに、リニューアルした社会組織が、効果的に青年イノベーション・起業に利益をもたらしている」と評価する。
数十の社会組織が、青年イノベーション・起業拠点に利益をもたらし、社会の必要に応じたサービスを提供することで、内部の発展や内部サービスの面で、青年イノベーション・起業拠点の管理部門に新たな啓発を与えている。社会組織のマーケティングや管理、融資などの面の知識が不足していることや、潜在リスクの予測が十分でないことなどに的を絞り、同拠点は、中国共産主義青年団組織としての中心的役割を積極的に果たし、資源のマッチング能力を際立たせ、斬新で独特のサービス体系を構築し、拠点内に「ワンストップ」式の総合サービスホールを設置。企業登録を皮切りに、企業が運営の過程で直面する各種硬直的サービス需要を解決し、起業家が起業の道において、後悔したり、憂慮したりすることがないようにし、拠点のブランド効果を少しずつ強化している。
内蒙古築夢啓航企業サービス有限公司はその典型的なケースだ。同社の孫瑞総経理は取材に対して、「当社は中小企業を対象にした代理記帳サービスに力を入れており、会社登録、代理記帳、起業バックアップ、財税、テクノロジーサービスなどを提供している。そして、企業サービスにおいてネックとなっていた部分を解決し、企業の市場へのサービス提供を規範化し、スマート企業サービスの新生態を実現している。発展の各一歩が、青年イノベーション・起業拠点が提供するサポートと密接な関係がある。同拠点は大きなサービスも、小さなサービスも的が絞られている」と語った。
※本稿は、科技日報「包頭青創基地:社会組織也能"孵"」(2019年4月15日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。