科学技術イノベーション、低侵襲技術の中国の夢を叶える
2019年6月28日 余昊原(科技日報実習記者)
「欧州のシリコンバレー」と呼ばれるダブリンで6月、世界的に有名な第27回欧州胸部外科学会(ESTS)が開かれた。世界トップレベルの胸部外科の専門家・学者および代表的な企業などが集まり、業界の発展の流れと今後の見通しについて議論した。上海逸思医療は展示規模が最大の中国企業として、世界に中国の技術の進展を披露した。同社のESTSの参加は2回目。
同社のラリー・ヘイズ副総裁は「中国の胸部外科低侵襲手術の全体的な技術は、過去10年で驚きの進歩を遂げた。これにより中国の病院はより高い臨床能力を持つようになった」と話した。
写真1 記者に医学の経験を語る逸思医療のラリー・ヘイズ副総裁
医学の進歩、中国の胸部外科低侵襲技術が徐々に先頭集団に
昨年のESTSでは、中国内外の胸部外科専門家が「肺がん低侵襲手術を学ぶのため、東洋に行こう」という概念を打ち出すとともに、中国の肺がん低侵襲手術技術を高く評価した。中国の外科医訓練水準の向上に伴い、中国の病院で実施される低侵襲手術は従来方式の手術を徐々に上回ってきている。
四川大学華西病院副院長、胸部外科主任の劉倫旭氏もかつて、中国の胸部外科低侵襲手術はすでに各方面で世界水準をリードしていると指摘している。肺がん手術を例とすると、2016年の調査結果では、中国の三級病院(地区、省または全国をエリアとし全面的な医療サービスを展開し、500以上のベッド数の規模を有する、研究能力も備えるハイレベルな病院)における低侵襲手術の割合が70%に達していた。米国の割合は40%を上回ったばかりで、欧州全体では約25%に留まっていた。
写真2 専門家と学者に自社製機器の特徴を紹介している逸思医療の技術者
業界が台頭、中国の医療機器が国際市場に進出
中国の胸部外科低侵襲手術の台頭には、医療機器地場メーカーの力強いサポートが不可欠だ。科学技術の発展と研究開発水準の向上に伴い、国産の革新型低侵襲機器も世界で頭角を現すようになった。より多くの国産医療機器が輸入品の代替を実現しようとしている。
中国医療機器業界発展報告書によると、中国の医療機器の市場規模は2018年だけでも5,250億元(1元は約15.7円)にのぼり、2017年と比べ約18%増となった。
ラリー氏によると、中国のハイエンド低侵襲外科ブランドである逸思医療は取得した特許と出願中の特許の合計が世界で140件を超えているという。アジア・欧州・南米・オセアニアなどの国・地域に内視鏡ステープラー、超音波止血メス、外科手術機器などの製品を提供し、国際市場進出の第一歩を踏み出した。
写真3 専門家と学者に自社製機器の特徴を紹介している逸思医療の技術者
革新と発展、業界の期待は高品質・廉価な製品開発の新たな次元へ
医療機器が発展を維持するためには、技術革新を率先して行いボトルネックを解消し、カギとなる技術の開発・応用・研究を行い、医師・患者の双方にコストパフォーマンスの高いより良い臨床サービスを提供する必要がある。発展は市場におけるトップクラスの製品を製造するだけでなく、製品ラインナップおよびサービスの拡張を行わなければならない。
ラリー氏は取材に対し、「当社を例とすると、昨年は売上の25%を研究開発に当て、新製品とソリューションの開発に多くの人手と資金を投入し、臨床結果を改善した。そして外科医により多くの柔軟性をもたらしている。精密でパーソナライズされた製品およびサービスをひとつに融合することで相乗効果を生み、病院の競争力を高めることができた」と語った。
※本稿は、JSTが参加する国際科学技術メディア連盟に提供された記事「科技創新鋳就微創技術中国夢」(科技日報、2019年6月17日付)を日本語訳/転載したものである。