貴州省、石炭採掘の「自動運転」モード開始
2019年7月9日 何春/何星輝(科技日報記者)
視覚中国より
地下の炭層に点火し、酸素供給量を操作することで石炭に化学反応を起こさせ、石炭ガスを発生させ、パイプを通して石炭ガスを必要としている場所へと送る・・・。SF小説「地火」内で描かれた「120年後の人類がマスターする技術」が現在、なんと貴州省で実現したという。
近年、貴州省はテクノロジーによる石炭業振興を行うことで、伝統的な「非効率で不格好な」スタイルからの脱却に努めている。特にカルスト地形のような複雑な炭層で採掘するという難題に対して、貴州省は、技術ランキングによってカギとなる核心的技術の問題を解決することにより、現地の石炭業のシフトチェンジ・アップデートのシフトチェンジをサポートする。
先ごろ、貴州省科技庁と貴州省エネルギー局は戦略的提携協議を結び、石炭採掘のスマート化と機械化水準を協力して推進させていくこととなった。石炭採掘がハイテクノロジーの急速な勢いに乗るのに伴い、「炭坑に作業員なし、地上には石炭なし、100%のクリーンエネルギー」という石炭鉱業新時代が貴州省に訪れつつある。
「ボタン一つで石炭採掘」で「非効率で不格好な」スタイルから脱却
体中が真っ黒になる鉱山労働者は地下数百メートルの炭坑に入り込み、コツコツと石炭を掘り出し、それを地上へと運んでいく―。貴州ではこのような「非効率で不格好な」スタイルの石炭採掘が徐々に終わりを迎えつつある。
石炭を採掘し、運び、ベルトコンベアで石炭を地上へと絶え間なく送り出す。貴州発耳煤業有限公司では、地上で総合制御室のボタンを押すだけで、地下深くにある石炭採掘装置が「自動運転」モードに切り替わり、「ボタン一つで石炭採掘」が実現される。
同社は2018年5月、ビッグデータと石炭産業を深く融合させることにより、「31004総合機械化石炭採掘の業務面のスマート化改造」を完了させた。貴州はこれにより、「自動運転」モードを開始し、炭坑の奥深くで働く作業員の数を減らしている。
貴州発耳石炭業有限公司の朱加賢・採炭副チーフエンジニアは、「貴州省の複雑な地質という条件下で、スマート化スタイルの運用を成功させる。これは以前では考えられないことだった」と感慨深げに語った。貴州省の炭鉱の多くに石炭やガスが際立つ炭坑があり、地質構造は極めて複雑で、このような条件下でスマート機械化による採掘を実現させるのは、ほぼ不可能だといえる。朱加賢・副チーフエンジニアは、「西南地区にはその前例がなく、中国国内でも業務面でスマート化生産を実現させた好条件の炭坑は少数しかなく、参考にできる成功例がない」と続けた。
これについて、20年以上採炭夫として働いてきた朱加賢氏は、「これはまさに夢のような話で、ほとんど天地がひっくり返るほどの変化だといえる」とした。
しかし、天地がひっくり返るほどの変化はこれにとどまらない。5年前、貴州省科技庁の支援の下、貴州盤江精煤股份有限公司は多方面からの論証を通して、中国鉱業大学と協力して石炭地下ガス採掘技術の難題の解決を試みた。同大学の王作棠教授率いる科学研究チームは烏蒙山地区の山脚樹炭鉱に滞在し、5つの重要技術の困難な課題を克服し、昨年、地下石炭ガス化の点火を成功させた。
地下の石炭を効果的に燃焼し、可燃ガスに変化させ、このようにして掘らずに地下の炭層に含まれるエネルギー成分を直接取り出すことで、石炭採掘が石油や天然ガス採掘と同じように可能となる。王作棠教授によると、石炭の気化は中国エネルギー革命の革新の方向を示しており、貴州省のような石炭大省にとっては、重大な意義を持つとしている。
技術ランキングの公開で複雑な炭層の問題を解決
貴州省は中国南部の石炭資源が最も豊富な省であり、石炭資源の埋蔵量は中国全土で5位となっており、もともと「西南部の石炭の宝庫」という呼び名がある。しかし、不利な事実として、カルスト地形であるため貴州省の炭層の賦存条件が複雑になっており、炭鉱の採掘条件は北方の石炭で有名な省に劣っている。
データによると、貴州省の地下2,000メートルより上に埋まっている石炭資源の総量は2,588.6億トンで、そのうち、すでに707.1億トンが採掘されていることが明らかとなっている。炭層の複雑な賦存条件や採掘技術の制約を受け、現有生産や炭坑建設を行うのは主に貯蔵量約50%の厚い炭層や中程度の厚さの炭層に集中しており、残りの50%にあたる薄い炭層、非常に薄い炭層、急傾斜炭層では基本的に採掘は断念される。
貴州省委員会・省政府の計画によると、96%の現有生産を行う炭坑では2020年に採掘の機械化が実現され、残りの4%は機械化が難しい非常に薄い急傾斜炭層に属している。「カギとなる4%」の炭坑の採掘機械化の問題を解決するには、石炭資源利用の効率を大幅に高めるだけでなく、たくさんの非常に薄い急傾斜炭層を採掘し、ひいては2,000メートル以下の豊富な石炭資源の基礎を固める必要がある。
このため、貴州省科技庁は2017年、技術ランキングを発表し、長年制約を受けていた貴州省の石炭シフトチェンジ・アップグレードの核心的技術の難題を未解決のものとして挙げていた。
貴州省科技庁ハイテク処の楊璟主任科員は、「必要なカギとなる革新的技術が列挙されており、英雄はどこにでも存在し、才能ある者は誰でもその名を刻まれる―。技術ランキングは貴州省の炭坑の実際の状況に対して、1メートル以下の炭層や角度が60度以上の急傾斜炭層における採掘の機械化技術、炭坑の作業員の無人化もしくは少人数化の採掘システム、炭坑設備の小型化・軽量化技術を含む、3つの技術の難関攻略の方向性をまとめている。最後に、貴州省科技庁はこのプロジェクト立ち上げにより、科学技術重要特別プロジェクトを実施し、経費のサポートは4,815万元(1元は約15.7円)以上で、まさに『前代未聞の力の入れよう』である」と語った。
炭層の厚さは平均1.3メートルにすぎず、高ガス炭鉱に属しており、このような条件下で採掘のスマート化を実行する難易度は高い。しかし、貴州衆一金彩黔鉱業有限公司は社会の科学研究と手を結び、率先して技術的な難関を攻略した。現在、同社傘下の岩脚炭鉱はすでに「有人視察、無人管理、遠隔操作による石炭採掘」を実現している。ランキング入りした会社の一つとして、同社は西南地区で初めて薄い炭層での採掘スマート化を実現した民間の石炭企業となり、岩脚炭鉱はスマート化した総合機械化石炭採掘の業務においてもすでに審査を通過している。
現時点で、技術ランキングを通して実施された科学技術重要特別プロジェクトは順調に進んでいる。ランキング掲示に参加した中国鉱業大学の劉盛東教授は、「現在、炭鉱採掘の機械化は多くの地域ですでに実現しているが、採掘の自動化、スマート化はやはり世界的な難題であり、貴州省がもしこの難題をクリアできれば、石炭産業の新たな革命を迎えることになる」とした。
テクノロジーにより、石炭採掘のスマート化始動へ
2018年末、貴州省は十大千億元級「産業航母」を打ち出し、そこに含まれる基礎エネルギー産業の生産額を2022年までに2,200億元まで引き上げ、そのうち、石炭産業の生産額を2,000億元にまで上げるとした。
近年、貴州省の石炭産業は市場の下落という困難を克服し、細部にわたる調整を通して総生産額は2013年の1,395.7億元から、2017年には1,850億元まで上昇し、2,000億元級の産業へと着実に前進している。しかし、その中に含まれる困難は依然として無視できないものとなっている。特に美しい山々や川のある貴州省では、伝統的な資源消費に頼った発展スタイルはすでに継続が難しく、石炭産業は「粗放な経営、鉱山事故の頻発、環境汚染、資源の浪費」という悪循環に陥ってしまう。
石炭をエコなものにし、低炭素化させ、汚染のないクリーンなものにするための解決案はたった一つ、テクノロジーによる石炭業振興だ。このため、貴州省はハイエンド化、エコ化、集約化の目標を打ち出しており、キーワードはシフトチェンジ・アップグレード、質向上と効果拡大であり、その方法がスマート化と機械化だ。
貴州省科技庁の廖飛庁長は、「伝統産業のハイテク技術化は貴州省テクノロジー業務の『最重要事項』であり、基礎エネルギー産業は『煤電煙酒(石炭・電気・タバコ・酒)』と称される伝統産業の代表であるばかりでなく、『十大千億元級工業産業』の中で筆頭となっている。私たちはこれを秘策・突破点とし、伝統的な機械エネルギーを新しいエネルギーにし、『十大千億元級工業産業』のハイエンド化、エコ化、集約化の模範を構築し、『斜陽企業があるだけで斜陽産業はない』と証明する」と述べた。
貴州省科技庁と貴州省エネルギー局は5月20日、戦略協力協定を結び、双方が変革的技術で石炭産業革命を推進すると明示し、貴州省のエネルギー産業の高品質な発展を共に促し、全国の重要なエネルギー基地の建設を加速させるとした。
協定に従い、貴州省は2022年前後に石炭採掘の100%機械化を実現させ、2030年前後に「炭鉱の無人化、地上に石炭なし」を実現させる。しかし、装備の面だけでは採掘の完全な無人化が不可能なのは明らかであり、方法論においてのイノベーション、工法や規則においての改善が必須であり、技術革新や制度のイノベーションという「両輪稼働」により産業変革が推進される。
今後、貴州省科技庁と貴州省エネルギー局は共同の資金援助、産業基金などの方法で、石炭の地下気化、炭柱なしの採掘、「ビッグデータ+炭鉱」の深い融合、スマート電力供給、およびエネルギー分野、その他の技術研究・応用に関して、プロジェクトのサポートを行う。貴州省エネルギー局は調整組織関連の会社に応用シーンを提供し、省クラスのテクノロジー計画プロジェクトを申請する。貴州省科技庁は関連プロジェクトのサポートを行い、カギとなる技術の難関攻略を統合的に計画し、成果の応用モデルを整える。
テクノロジーイノベーションを自発的に行い、最終的にはカルスト地形の貴州省の石炭採掘の自動化・スマート化の開始という難問を解決しなければならない。
※本稿は、科技日報「在貴州 採煤開啓"無人駕駛"模式」(2019年6月24日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。