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高速鉄道車両の「シェアNo.1ドア」はいかにして作られたか

2019年7月4日 張文莉(科技日報特派員)、張曄(科技日報記者)

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「復興号」車両生産ライン(視覚中国より)

 現在、高速鉄道は多くの人が最初に選ぶ移動手段となっている。都市鉄道と高速鉄道の急速な発展により、車両とそのキー部品は国産化の必要に迫られている。そして車両ドアはまさにキー部品の一つである。

 先ごろ行われた江蘇省科学技術奨励会議で、南京康尼機電股份有限公司(以下「康尼」と略称)と南京工程学院の共同プロジェクト「高速車両ドアシステムにおけるキーテクノロジー研究開発および応用」が、江蘇省科学技術一等賞を受賞した。

 現在、高速鉄道「復興号」車両ドアの80%以上は彼らが共同で研究開発したものだ。現在では、「康尼製ドア」は中国における「地下鉄車両ドア」と「高速鉄道車両ドア」でそれぞれシェア1位となり、鉄道車両ドアの世界市場で32%に達するシェアを占め、3年連続で世界一の座を守っている。

地下鉄車両ドアの長年の欠陥を変えた小さなイノベーション

 長期にわたって、都市鉄道交通車両の重要部品である車両ドアは輸入に頼ってきた。以前、国外企業は数十年にわたり、技術障壁を利用して車両ドアシステム分野で700項目近くの特許を出願し、水も漏らさぬ特許保護体制を構築し、技術の独占によって市場を独占してきた。

 しかし中国国内の都市鉄道車両は常に負荷の高い運行状態にある。通常の状況下で、車両ドア故障は車両運行上の故障の30%前後を占めており、車両ドアの深刻な故障は列車の運行停止を引き起こし、さらには乗客の安全が脅かされる事態まで招くこともある。

 車両ドアは「スライディングプラグドア(中国語では『塞拉門』)」とも呼ばれる。それは主にこうした車両ドアには「塞(押し込む)」と「拉(スライドする)」の二つの動作があるためだ。つまり、ドアを閉める場合は、車内あるいは車外からドア閉合部を閉塞し、ドアを開ける場合は、ドア閉合部から一定距離のところまで開いた後、車体の内側か外側に沿ってスライドする。

 スライディングプラグドアの「ドア閉塞が難しい」ことは攻略を急がねばならない車両ドア開発上の難題だった。一般のスライドドア(ドアが滑車に連結され、固定レール上を移動可能なドア)は取付が容易で、車内が乗客で比較的混雑している時でも正常な障害検知を保証できる。しかしスライディングプラグドアはそれとは異なり、車両内が乗客で混雑している場合、スライディングプラグドアは最後にドア閉合部から一定距離近くまで移動すると同時にドア板を車両の内側に向かって移動させる必要があり、しかも乗客の体を押し込むため、乗客の体の抵抗によってドア板が受ける反作用が大きすぎると、自動ドア検知システムの障害検知機能が作動して、ドアを閉める動作がすばやく行えなくなってしまう。

 そのため康尼の研究開発スタッフはスライドドアとスライディングプラグドアの長所を併せ持った新型微動スライディングプラグドアを開発し、スライディングプラグドア閉合時の移動距離を縮めることで、車両混雑時のドア板に対する乗客の体の抵抗作用を大きく減らした。また、ドアが閉まる過程で受ける力の状態を変え、ドア閉合時のリード角を小さくした。

 鉄道交通の車両ドアシステムに係わる技術は多い。スライディングプラグドアの難題のほかにも、康尼のドアシステムでは以前、上海地下鉄車両の実車テスト時に開閉がスムーズにいかない問題が生じたことがある。プロジェクトの総合請負企業であるシーメンス社は康尼に3ヶ月で解決するよう要求し、解決できなければ他社製品に切り替えると言ってきた。地下鉄ドアを「閉める」か、会社を閉めるか―。この状況が、康尼に飛躍的なイノベーションを迫ることになったのである。

 当時、康尼機電チーフエンジニアの史翔氏は、地下鉄車両ドアの開閉はジャッキの原理と似ており、同じようにスクリュー回転による駆動とドアに連結されたナットの移動を利用して実現されていることに思い至った。ただ、スクリューのピッチが大きいために自動でロックできないだけだ。もしドアを閉じる位置でスクリューピッチを小さくできれば、ジャッキのようにドアをきっちりと閉めることができる。最終的に、この「ロックされない状態でのドアクローズ」という発明特許は現在の都市交通車両ドアロックの国際的に主流の技術となり、以前とは逆に国外企業にとって特許の壁となった。

 現在では、すでに20万セット以上の康尼製地下鉄車両ドアが北京や上海、広州、南京など中国国内の地下鉄の100に迫る路線に導入され、中国の地下鉄車両ドアシステムの国産化を真の意味で実現した。

高速鉄道車両ドアの「三高一無」問題を攻略

「2007年、高速鉄道が開通し『和諧号』の運行が始まったが、高速車両ドアのキー技術と市場は完全に国外企業に独占されており、車両ドアは全て輸出に頼っていた」と語る史氏は、十数年前の状況をまだはっきりと覚えている。

「高速鉄道の車両ドア研究開発には四つ難点があり、『三高一無』と呼ばれていた」と史氏は語った。史氏によると、「三高」は「高空力圧駆動負荷」、「高水準の寒さと強い風・砂ぼこり」、「高強度電磁干渉」で、「一無」は時速が350キロに達する車両ドアの設計理論やテスト評価体系・基準が世界にもまったく存在しなかったことを指す。研究開発チームは十数年にも及ぶ技術研究により、高速車両ドアシステムの四大難点を一つ一つ攻略していった。

 史氏の説明によると、列車が高速運行中に起こる高空力圧駆動負荷は、車両ドアの密封性を失わせ、ドアの脱落を引き起こす。この問題に対し、彼らは新型駆動機構と密封技術を持つ車両ドアを開発し、車体の制限機構を利用して空力圧駆動負荷を均衡化することで、車両ドアの複合的な運動を実現し、車両ドアの外側への脱落を防止すると同時に車両ドアの安全性と気密性を強化した。この車両ドアは遮音性が高く、車内の騒音がより小さく、圧力変動による鼓膜への影響がより小さく、乗車時の快適性が著しく向上した。

 また冬季になると、北方地域は気温がマイナス40度まで下がる非常に寒冷な気候になり、西部地域は風と砂ぼこりが強いため、「車両ドアが凍結して開かない」、「潤滑油脂が効かない」、「車両ドアの運動摩損が激しくなる」といった影響が出る。史氏は、「我々は『グラファイト』という素材の潤滑機能を巧みに利用し、素材自体の固体潤滑性を持つ自己適応回転螺旋伝動・リード変更ロック装置を発明し、伝動とロックの一体化を実現することで、寒冷による車両ドア運動の阻害や、強い風や砂ぼこりで細かい砂が入り込むために発生する車両ドアシステムの摩損激化という難題を解決し、高速鉄道車両ドアの信頼性と適応性を高めた」と語った。

 最後の「一高」は動力分散方式列車の高強度電磁干渉で、この問題により車両ドアの通信信頼性が下がり、ドアを開く際に異常が起こる。高強度電磁干渉問題に対し、研究開発スタッフはイーサネットと冗長MVB(多機能ビークルバス、Multifunction Vehicle Bus)の複合ネットワークおよび故障診断技術を採用し、新世代の高安全性スマートドア制御装置と遠隔スマート維持管理システムを開発した。ドア制御装置は国際的に最高レベルの安全等級SIL4認証(10--8/h)を取得し、安全等級が2段階上がった。

「一無」については、南京工程学院が設計に関する専門書『鉄道車両ドア設計システム』と『動力分散方式列車車両ドア』を編集。中国基準を作り上げ、業界で唯一CNAS国際認証を取得した車両ドア試験室と評価体系を確立した。

 史氏は、「ちょうど十年を経て、動力分散方式鉄道列車『復興号』一番列車のすべての車両ドアに完全な自主知的財産権を持つ康尼製品が採用された。高速鉄道『和諧号』の車両ドアも徐々に我々の製品に切り替えられつつある」と語った。


※本稿は、科技日報「軌道交通"第一門"如何築成」(2019年6月21日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。