科創板、戦略的新興産業の垣根を越える―関連業界のモデルチェンジ・アップグレードをより良く促進
2019年8月26日 操秀英(科技日報記者)
澳盈資本共同創業者の肖毅氏は、取材に対し「科創板(Science and technology innovation board)の現在までの運営は予想通りで、市場は積極的で前向きな見方が多い。現在は設立初期で標的が少なく、科創板上場企業の株価が高めになっており、これはハイテク業界の発展にとって有利だ」と話した。
8月13日夜の時点で、152社が科創板の上場を申請した。うち5社が受理され、28社が問い合わせを受けている。
肖氏が指摘しているように、科創板の運営は現在安定しているが、常に変化が生じている。
このほど「2019西普会」(中国健康産業合作・発展フォーラム、CPEO)で、上海証券取引所発行上場サービスセンターの彭義剛業務副ディレクターが科創板のターゲット企業・業界拡大に関する発言を行い、注目を集めた。
周知の通り、科創板の位置づけは、国家戦略に合致し、キーとなるコア技術を確立し、市場の認知度が高いハイテク企業をサポートするというものだ。次世代情報技術、先端設備、新材料、新エネ、省エネ・環境保全、バイオ医薬品などのハイテク産業及び戦略的新興産業を重点的に支援する。
彭氏は今回、「科創板は上述の6大戦略的新興産業に限らない。伝統的な業界のうち、インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、AI(人工知能)と製造業との深い融合を促進し、中高級志向の消費をけん引し、品質・効率・原動力の変革を推進する企業がいずれも科創板で上場できるようにする。具体的な業界の範囲は、上海証券取引所が発表し、適時更新する」と述べた。
6大戦略的新興産業を中心とするのを伝統的な産業に拡大するのはなぜだろうか。これでは科創板の独自性をなくしてしまうのではないだろうか。
銀河証券の潘向東チーフエコノミストは、その心配はないと判断した。「科創板の最大の制度面の革新は登録制で、これまでの利益中心の上場基準を打破した。そのため適度な業界拡大により、6大戦略的新興産業に限らず、一部の伝統的な業界の企業を上場させることで、そのモデルチェンジの実現を支援できる。これは科創板の独自性をなくすことはなく、むしろその包括性により、多くの新興業態の企業のA株上場をけん引し、経済のモデルチェンジおよび質の高い発展により大きな貢献を成し遂げる。」
中国科学技術発展戦略研究院の魏世傑副研究員も、「新興技術はすでに業界の制限を突破している。戦略的新興産業も技術の進展に伴い変化・更新されている。そのため業界の制限を設けることが、科創板の融資サービス対象を固定化しかねず、最先端技術の産業化への資金供給が妨げられる」と分析した。
肖氏も同様の見方で捉えている。「新興技術は孤立して存在しているわけではない。ビッグデータやAIなどの先端技術は具体的な業界で応用されなければならない。これらの技術の発展を推進するより大きな意義は、その伝統的な産業の改造にある。科創板の目的は、ハイテク企業の発展を促進することだ。(ビジネス)モデル革新型の企業は科創板に適さないに決まっているが、ハイテクによりモデルチェンジ・アップグレードを実現しようとする伝統的な産業の企業が除外されるべきではない。」
「科創板は利益中心の上場基準を変え、新興技術の発展の法則に合致しており、伝統的な業界に試行錯誤の機会を与えている。より包括的な科創板は、新興技術を利用したモデルチェンジ・アップグレードを目指す伝統的な企業に、より多くのチャンスをもたらす。同時により市場化された科創板では将来的に自然淘汰が生じる。株価は企業の真の価値を反映する。これは実務的に実業に取り組む優秀な経営者を激励することになる。」
※本稿は、科技日報「科創板:将不局限于六大戦略新興産業」(2019年8月15日付1面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。