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高速鉄道が「中国速度」で疾走―青島市城陽区の交通産業「先頭車」

2019年8月29日 王建高(科技日報記者)、王作岩(科技日報特派員)

 膠州湾、黄海に面する山東省青島市からは、このところ次々と良いニュースが飛び込んできている。それは中国初の時速600キロの高速リニアモーターカーの試作車が、当地で正式にラインオフしたといったニュースなどだ。これは、中国国家重点研究開発計画「最先端鉄道交通」の重点特定プロジェクトの成果で、中国は高速リニアモーターカー技術の分野で重要なブレイクスルーを実現したことを意味している。このほかにも青島大港税関の職員が青島港大港港区1号埠頭で、スリランカに輸出する高速列車9編成90両の輸出許可手続きをスピーディに終えたことも明らかになった。この高速列車は新型気動車(S14)で、通関・輸出許可手続き後に船積みされスリランカに向かう。現時点で、青島港からスリランカに4度に分けて、気動車52編成、合計390両が輸出されている。

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時速600キロの新世代高速リニアモーターカーの試作車の模型(画像は中車四方股份有限公司提供)

 中国唯一の高速鉄道、地下鉄の車両の生産、鉄道交通コアシステムの研究開発製造、国家基礎応用技術協同イノベーションプラットフォームが一体となった産業群エリアである青島市城陽区は現在、中国ハイエンド装置技術のイノベーションの「新しい名刺」と世界の鉄道交通産業の発展を牽引する「先頭車両」を構築している。城陽区党委員会書記、青島鉄道交通産業モデルエリア工作委員会書記を務める王波氏は、「当区は鉄道交通を、『重点発展1333』産業の最重要ポイントとし、区の総力を挙げて鉄道交通産業モデルエリアの建設を促進し、国家高速列車技術イノベーションセンター、中車四方股份有限公司などのメイン車両工場のほか、関連企業約200社が集まるようになっている。昨年、地域の鉄道交通の産業チェーンの生産高は全体で850億元(約1兆2,800億円)に達した。今年以降、モデルエリアの新規契約プロジェクトは14件で、投資総額は合わせて130億元以上に達する見込みだ。また、着工予定のプロジェクトが13件、投資額は合わせて300億元(約4,500億円)以上に達する見込み。その他、交渉中のプロジェクトは30件で、投資額は合わせて500億元(約7,600億円)以上に達する見込み。産業群、テクノロジーイノベーション、産業と都市の融合などに全面的に力を入れて、世界レベルの鉄道交通産業の構築加速を目指している」と語った。

モデルエリアの建設により地域のイノベーション発展を牽引

 日差しが強く、暑くなる夏を、青島鉄道交通産業モデルエリアの柱的存在である中車青島四方股份有限公司は多忙に過ごした。4日おきに、CR400AF型高速列車3両がラインオフし、中国国内外のあらゆる地域に発送された。また、今年上半期、地下鉄イノベーション産業パーク、鉄道交通ハイエンド関連産業パーク、新エネルギー産業パークの「三大パーク」の建設など、多くのプロジェクトが着工、または完成し、モデルエリア建設の成果が出初めており、モデル効果が日に日に顕著になっている。

 モデルエリア管理委員会経済発展局の劉新岐局長は取材に対して、「モデルエリア建設は地域の発展を牽引している。当局は鉄道交通の分野の中国全土の優良関係企業139社を整備して集め、産業チェーン全体で的を絞った企業誘致を行っている。既に企業約90社、科学研究機関約10カ所を訪問した。水平方向へ開拓を進め、産業の幅を広げるために、モデルエリアは、中鉄電気化局や中鉄磁浮公司と戦略的連携協議に調印し、神州高速鉄道、浙江衆合、青島地下鉄と提携を展開している。また、垂直方向へ産業チェーンを伸ばすために、深圳恒之源電気や丹陽鉄龍軌道装備などの企業約30社と提携に向けて交渉を続けている」と説明した。

 劉局長は、「モデルエリアは、鉄道交通産業のハイテク化を重視しており、高速リニアモーターカーの研究開発や製造産業集積を計画し、ソフトウェア系ハイテク企業の北京国信会視と提携することで合意し、生産高が20億元(約300億円)増えた。一期2億元規模の中興通鉄道交通新材料産業基金、保利防勤務産業投資基金、賽伯楽基金などもモデルエリアに間もなく入居する」とも話す。

 産業プロジェクトや産業キャリアの建設の推進も加速させている。モデルエリアは今後、中興通など、総投資額300億元(約4,500億円)の産業プロジェクト13件の推進を加速させ、今年末には着工する計画だ。その他、総投資額350億元(約5,300億円)の三大産業パーク建設を推進し、鉄道交通ハイエンド関連産業パークの中科応化のプロジェクトも既に完成し、地下鉄産業パークの第一期も着工し、新エネルギー産業パークは準備作業の推進を加速させている。

イノベーションセンターが産業高度化の原動力に

 目下、国家高速列車青島技術イノベーションセンターは、西南交通大学の翟婉明院士、海軍工程大学の馬偉明院士、ドイツのHufenbach院士、米国ミシガン大学の董平沙教授、北京交通大学の賈利民教授ら専門家と連携を展開し、ドイツのティッセンクルップ磁気技術研究室、ハルビン溶接研究院、中国航発北京航空材料研究院などの科学研究院6院を誘致している。

 中国初の高速鉄道列車イノベーションセンターである国家高速列車青島技術イノベーションセンターは、青島鉄道交通産業モデルエリアの原動力となっている。中国国家科技部(省)や国務院国有資産監督管理委員会が2017年に立ち上げを認可したイノベーションセンターで、総投資額は600億元(約9,100億円)、2030年に全体が完成する計画だ。うち、加速して建設が進められている投資額300億元(約4,500億円)の第一期プロジェクの計画面積は4.3平方キロメートルで、高速列車新技術や新材料、新エネルギー、新構造、新技法の応用、基礎最先端研究に力を入れ、高速列車の発展に、強力な科学研究サポートを提供している。取材では、イノベーションセンターが第一陣として誘致したプロジェクト5件のうち、総投資額22億元(約330億円)の鉄道交通車両システム集積国家工程試験室、高速リニアモーターカー実験センター、高速リニアモーターカー試作センターのプロジェクト3件の主要工事が完成し、10月には引き渡しが行われ、そこで関連研究展開が始まる見込みだ。総投資額52億元(約790億円)のイノベーション港、材料技術研究院、高速鉄道名士ガーデンなどのプロジェクトも現在、相次いで着工している。

 イノベーションセンターが「原動力」となり、地域の発展環境が向上している。総投資額約32億元(約480億円)の国家高速列車技術イノベーションセンターのテクノロジー館の改造、高度化、新しい道路の建設、環境の改善、向上などのプロジェクト計1,919件が既に完了した。うち、建築面積2万平方メートル、敷地面積約3.3ヘクタールのテクノロジー館は、モデルエリアと国家高速列車技術イノベーションセンターの対外展示窓口として、鉄道交通研究開発製造成果を展示したり、技術交流ができる重要なプラットフォームとなっており、青島鉄道交通産業モデルエリアとイノベーションセンターの計画、建設成果、中国中車のテクノロジー分野への取り組み、中国全土の鉄道網の配置、高速列車管理システムなどが展示されている。

 イノベーションセンターがテクノロジーイノベーションの成果を産業化していることは大いに誇れる点だ。時速600キロの高速リニアモーターカーの試作車がラインオフし、航空と高速鉄道の間の旅行速度の空白が埋められ、中国立体高速旅客輸送交通網の整備にとっては、重大な技術的、経済的意義を有している。高速リニアモーターカーのプロジェクト責任者である、中車四方股份有限公司の丁叁叁副チーフエンジニアによると、5両編成の時速600キロの高速リニアモーターカーエンジニアリング試作車の研究開発が順調に進んでいる。本プロジェクトの計画では、時速600キロの高速リニアモーターカーのエンジニアリング試作車が2020年にラインオフし、2021年には実験線上で、システムの総合テストを展開し、全体の検証を行い、高速リニアモーターカーのエンジニアリング能力が確立される計画だ。

 イノベーションセンターは、城陽区の鉄道列車産業の高度化を全面的に牽引すると同時に、中国鉄道交通業界のローカライズを加速させている。2020年までに、国家高速列車青島イノベーションセンターが牽引役となり、青島市鉄道交通業界の産業チェーンは全体で1,300億元(約1兆9,700億円)規模以上となり、現地での組み立て率が64%に達すると見込まれている。

鉄道交通産業のイノベーションをリード

 どうすれば鉄道交通産業をリードする立場を確立できるだろうか。また高速列車の技術イノベーションの分野をリードする立場をどのように確立すればよいのだろうか。城陽区は最近、それらの立場を確立するための作戦プラン答弁会を開き、「横方向に開拓して産業の幅を広げ、縦方向に産業チェーンを伸ばす」取り組みをめぐり、なにを、なぜ、どのように行うかをはっきりさせることに的を絞り、参加者が自由に多くの意見を出しあうことによって、独創的なアイディアを引き出し、世界レベルの鉄道交通産業を構築するための発展ルートを見定めた。

 青島鉄道交通産業モデルエリア管理委員会の劉青梅・副主任は取材に対して、「強い産業モデルエリアを作ろうと、城陽区は、鉄道交通産業の発展をリードするために全力で取り組んでいる。城陽区の『鉄道交通産業をリードするための作戦プラン(2019--22年)』は、鉄道交通産業モデルエリアが、青島市発展の代名詞となり、山東省の新たな原動力への転換をリードし、中国全土の高速列車装置製造をリードし、世界の鉄道交通イノベーション研究開発をリードするようになるという目標を掲げている。そして、2022年までに、鉄道交通全産業チェーンの生産高を1,300億元にまで引き上げたい考えだ。成長ペースは年間平均11%で、現地での組み立て率も60%以上に引き上げたい考えだ」と説明した。

 城陽区は、大規模産業群、国家高速列車技術イノベーションセンターの建設、人材誘致・インテリジェンス導入、ビジネス環境の最適化、サービス・保障の5つの面で優位性を誇るようになり、鉄道交通産業の発展をリードするようになっている。劉副主任は、「城陽区は、モデルエリア内の中車四方公司というプラットフォーム、国家高速列車技術イノベーションセンターというプラットフォーム、モデルエリアという資源プラットフォームを存分に活用し、開放的なプラットフォーム思考、集積型ネットワーク思考を掌握し、要素のインテグレーション・イノベーションを実現した。中車のプラットフォームをめぐっては、中車集団の資源調整プラットフォームの役割や関連のサービスネットワークを十分に活用し、中車系の企業や関連企業が同区に来るよう取り組んでいる。イノベーションセンターというプラットフォームをめぐっては、イノベーションの起業支援を行い、重点科学研究プロジェクトの研究を加速させ、鉄道交通ビッグデータセンターを構築し、情報・資源を収集し、その共有を実現し、モデルエリアの資源プラットフォームを構築し、良質のプロジェクトなどの資源を一つのプラットフォームに統合し、情報公開や公正で開かれた操作を通して、公平、公正に提携相手を選び、政府が科学的に各種資源を配置し、資源の統合が最大限効果を出せるようにしている」と説明する。


※本稿は、科技日報「高鉄跑出"中国速度" 離不開這裏的交通産業"火車頭」(2019年08月14日第07版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。