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永久磁石モーターが新エネ車の「心臓部」を強くする

2019年10月23日 金鳳

 先ごろ、吉利自動車や中通客車など国内の有名自動車企業の電気自動車が生産を開始したことに伴い、精進百思特電動(上海)有限公司(以下「精進電動」)が主導して研究開発した新エネルギー車用高性能永久磁石モーターを搭載した車がすでに7万台を超えた。

 出力密度4.2-5.3kW/kgの第1世代丸線コイル巻線形モーターから、出力密度6.3kW/kgの第2世代平角銅線コイル巻線形モーターまで、永久磁石モーターの製品と部品サンプルの指標はいずれも欧米日韓など第一線の自動車用モーターメーカーの製品レベルと肩を並べ、または上回っている。

 この2年、同社など17社は国の「第13次五ヶ年計画」重点研究開発計画新エネギー車駆動モーター専門項目において、上流産業チェーンの技術的ボトルネックのブレークスルーをけん引し、多くの国家技術と製品の空白を埋めた。そのうち、先進的な希土類永久磁石の重希土使用量は50%近く減った。また、絶縁材料長期耐熱温度は200℃を超え、丸形巻線コロナ耐性寿命は国の基準の倍以上に達し、エナメル平角線コロナ耐性寿命は90時間に達した。

 かつては輸入に頼っていた一部の原材料、中核部品・デバイスなどはすでに自主研究開発と生産を実現し、使用寿命が国外製品の倍であるだけでなく、コストも国外の6割ほどという材料もある。

 2019年6月30日の時点で、このプロジェクトの第1世代丸線巻線形モーターは、累計で68,000台の乗用車、4,000台近い商用車に搭載されている。

世界の一流自動車モーターメーカーと肩を並べる駆動モーター

 新エネルギー車の発展は、電気駆動の中核部品であるモーターシステムと切り離すことができない。高速で効率が良く、信頼性が高いモーターは、新エネルギー電気自動車のエネルギー消費量をより少なくし、寿命をより長くすることができる。

 モーターの電流はコイルによって伝導され、コイル同士やコイルと鉄芯との間を絶縁する必要がある。そして低い電気抵抗と確実な絶縁性は、モーターコイルに対する基本的要求だ。

 21世紀初頭、著名なモーター専門家の蔡蔚氏が「ヘアピンコイル」モーターを発明し、後にGMシボレーのハイブリッド車「Tahoe」に応用された。「ヘアピンコイル」モーターが自動車電気駆動分野で応用されたのはこれが世界で初めてのことだった。

 2017年に国家重点研究開発計画がスタートして以来、蔡氏はこの専門項目の責任者として、精進電動などの企業を率いて、出力密度4.2kW/kgの第1世代丸線巻線形モーターの技術革新に成功し、ロット生産と車への搭載を実現した。

 また、第2世代平角線巻線形モーターもすでに部品サンプル製造と性能テストを完了し、テスト認証段階に入っている。巧みな設計により、同社はマルチパラレル支線波形コイル配置トポロジーの問題を解決し、冷却と溶接のパラメータを調節し、複数薄型平角線モーターコイル製造の難題を克服し、モーターの極対数と回転速度を高め、モーターをより小さくし、使用する銅線や硅鋼片などの材料をさらに少なくし、単位出力あたりの消耗をより少なくし、コストパフォーマンスをより高くした。

「出力密度を4.3kW/kgから6.3kW/kgまで高め、米国GMのBolt EVのモーターの出力密度4.6kW/kgとBMWのi3のモーターの出力密度3.8kW/kgを上回り、さらには米国が計画している2025年新エネルギー車モーターの5.7kW/kgという指標も上回った」と蔡氏は言う。

 こうした成果をベースに、第3世代トランスポジション導体巻線形モーターもすでに研究開発がスタートしている。

先進的な永久磁石の重希土使用量が5割減

 世界の新エネルギー車の電気駆動において、永久磁石モーターの割合は90%近くを占める。永久磁石にジスプロシウムやテルビウムなどの重希土を加えると、残留磁気を保ち、保磁力を高めることができる。蔡氏は、「しかし、重希土は希土類鉱床における埋蔵量が少なく、新エネルギー電気自動車の普及に伴い中国内外で希土類永久磁石モーターが大規模生産されているため、重希土の使用は資源不足というボトルネックに直面することになるだろう。一部の先進国では、すでに重希土永久磁石のモーター製品への使用を抑えているところもある」としている。

「中国の希土類状態と政策」白書は、「中国は23%の希土類資源で世界の90%以上の市場供給を支えている」と指摘していた。

 しかし、中国の希土類永久磁石設備と永久磁石モーターは、長期にわたって日本からの制約を受けている。「以前、日本は中国の希土類永久磁石の原材料を購入し、永久磁石だけでなくモーターまで製造し、高価格で中国や欧米に輸出していた」と蔡氏は言う。

 いかにして効率よく重希土資源を使用し、資源不足を回避した上でコストも下げるか?国の専門プログラムにおいて、蔡氏が先頭に立ち、煙台首鋼磁性材料股份有限公司と共同で、浸透技術と結晶格子微細化技術を研究開発し、重希土使用量を最大5割減少させた。

「これまでは、通常はジスプロシウムやテルビウムなどの重希土を、小麦粉生地をこねるようにして他の永久磁石原材料に練りこんでいた。現在では、微細化された結晶格子によって重希土を磁性体に浸透させている。浸透させたいところにだけピンポイントで浸透させることができるため、使用量が少ない上に精確だ」。

 蔡氏は、「研究開発スタッフたちは結晶粒度微細化とミクロ構造一致性技術を用いて、国内の微粒技術の空白を埋め、量産35EH磁性体のジスプロシウム含有量を7wt-8wt%から5wt%まで減らし、重希土使用量を20%以上減らした」と説明する。また、彼らは微粒技術と拡散技術を結び付け、42EH磁性体のテルビウム含有量を8wt%から等価ジスプロシウム4.5%まで減らし、重希土使用量を40-50%減らした。

一部の絶縁材料コロナ耐性寿命は国家基準の10倍以上

 新エネルギー車の心臓部である駆動モーターには多くの巻線がある。巻線と絶縁材料がモーター稼働中の高電圧や高温、高電圧変化率に耐えられないと壊れてしまい、モーター使用寿命が短くなる。

 中国が生産するコロナ耐性絶縁材料の原材料はほぼ国外メーカーから仕入れている。「たとえばナノ粒子改質ポリエステルイミドなどの原材料やコロナ耐性柔軟絶縁紙などについては、常に窮地に追い込まれる可能性がある」と蔡氏は指摘。「売り手市場であるため、中国国内のユーザーはなすすべがない」と言う。

 同プロジェクトで、蔡氏は蘇州巨峰絶縁材料有限公司(以下「巨峰」)と共同で、ナノ粒子とエナメル線基材樹脂の複合技術を用いて、ナノ粒子がエナメル線基材樹脂において分散しにくいという技術的ボトルネックを解決し、まんべんなく分散するナノ分散液を作り出し、コロナ耐性エナメル線を生産することに成功した。

 現在、巨峰が研究開発したコロナ耐性ポリエステルイミド含浸樹脂は、長期使用温度が200℃を上回っている。同社が研究開発したコロナ耐性エナメル平角線のコロナ耐性実験寿命は90時間以上で、国内の空白を埋め、世界の競合先の指標を上回った。また、コロナ耐性エナメル丸形線のコロナ耐性寿命は100時間以上で、国家基準要求の10倍以上に達している。

 今年9月、中国共産党中央委員会と国務院は「交通強国建設綱要」を印刷・発行し、先端キーテクノロジーの研究開発を強化し、新世代情報技術(IT)や人工知能(AI)、スマート製造、ニューマテリアル、新エネルギーなど、世界の科学技術の最先端に焦点を定めることが「綱要」に盛り込まれた。

 蔡氏は、「自動車産業は道路交通の最重要事項。自動車の中核部品が強ければ、中国の自動車産業は強くなる」との見方を示した。


※本稿は、科技日報「永磁電機造就新能源汽車"強大内心"」(2019年10月9日付1面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。