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「巨大なモバイルバッテリー」、雪竜号と共に南極へ

2019年10月29日 金鳳

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10月15日午後4時16分ごろ、長い汽笛とともに深圳港を出航し、南極での科学観測任務へと向かった中国第36次南極科学観測隊と砕氷船「雪竜2号」。観測船「雪竜号」は10月22日に上海港から出航予定となっている。中国の南極科学観測は二つの「雪竜号」による「双竜極地探査」という新局面を迎える(撮影・新華社記者毛思倩)。

―南極泰山基地で無停電電源による通年電気供給が実現へ

 標高2,621メートル、年平均気温が氷点下36.6度の南極・泰山基地は、過酷な環境のため、電力の供給が不足していた。しかしこの歴史にまもなく終止符が打たれようとしている。東南大学が泰山基地向けに製造した無人移動電源「東大極能」が15日、上海市に輸送された。この移動電源は中国第36次南極科学観測で使用されることになっており、22日に雪竜号に積載されて南極へと運ばれる予定だ。この「巨大なモバイルバッテリー」は冬の南極の氷点下80-90度の極寒に耐えることができ、1年にわたり24時間連続で極地科学観測設備に電力供給が可能。泰山基地の科学観測設備に電力を供給し、衛星遠隔操作により泰山基地での稼働状況をモニタリングする。これは中国が初めて使用する国産極地無人エネルギーシステムだ。

24時間連続で1年間電力を供給

 東南大学が開発したこの「巨大なモバイルバッテリー」は、2つのコンテナのように見える。うち1つは制御モジュール、もう1つは発電モジュールだ。発電モジュールの中には6つの発電ユニットがあり、太陽光で発電するものもあれば、燃料で発電するものもあり、5トンの航空燃料で太陽光エネルギーが不足した際の需要を満たすことができる。

 東南大学自動化学院の魏海坤執行院長は、「泰山基地の科学観測設備の電力消費総出力は約2.5kWだが、この移動電源の最高出力は3kWに達する。現在は1年にわたり24時間連続で稼働できる」と説明した。

 熱エネルギーが不足している南極では、たとえわずかであっても温度は極限まで利用する。魏氏は、「燃料は氷点下約40度で凍る。我々は優れた設計を施し、発電ユニットが発する熱を利用して燃料を暖められるようにした」と説明する。

 また魏氏の研究開発チームは、イリジウム通信を通じて、エネルギーモジュールに対し遠隔リアルタイムモニタリングを行う。一定時間ごとに、モジュール内外の環境温度や設備温度のデータなど現場の各モニタリングデータを伝送し、発電ユニットの出力が正常かどうかをモニタリングする。4台のカメラからは不定期に設備の稼働映像が伝送される予定だ。

 泰山基地は長期にわたって低温・低気圧環境にある。無人であるため、いったん設備が故障すると、泰山基地の電力供給が危機に瀕してしまう。そのため、魏氏の研究開発チームは設備のコアモジュールの予備を用意した。このうち発電ユニットの予備は5セット、通信システムの予備は1セット用意し、「現在の発電ユニットが壊れても、システムが自動的に予備ユニットに切り替える」という。

モジュール内の温度を30度に制御

 南極泰山基地は、南極大陸の内陸部に位置する中国の科学観測基地である。極寒の気候であるため、科学研究員は毎年夏季の約1ヶ月間しか滞在できず、通常の発電機を持ち込んで泰山基地で稼働させるのでは効率が悪く、持続的使用も難しい。

「いかにして安定的かつ信頼性の高い発電をするかが、南極科学観測の技術的難点だった」と語る魏氏は、2010年から南極科学観測に参加している。魏氏は、「中国の南極崑崙基地の発電設備は現在国外から提供されているが、何度も故障が発生している」と言う。

 ある時は、発電ユニットの排煙管で油漏れが起き、発電モジュール内に濃い煙が立ち込め、モジュール内の温度が急激に上がり、システムがダウンした。ほかにも、ディーゼル発電ユニットの燃料用油がなくなり、発電機が空運転して、最終的にユニットが焼けてしまったこともあるという。魏氏は、「さらに重要なのは、この発電設備が外国の制御下にあり、向こうがシステムを切断した場合、中国の科学観測はその制限を受けるということだ」と語る。

 泰山基地の冬季の平均気温は氷点下60度前後。発電制御システムの最も高性能のキーデバイスでも、氷点下約40度の低温しか耐えられない。そのため、電力供給装置の温度を保ち、安定的な電力供給を持続できるようにするために、科学研究員は非常に苦心した。魏氏は、「我々は蓄電池など寒冷環境に弱い発電機ユニット設備に加熱器を取り付けた」と語る。

 魏氏によると、モジュールのポリウレタン発泡材料は位置によって厚さが違い、氷や雪に近いモジュール底部は厚く、モジュールの最上部は薄くなっているという。

 発電設備の稼働時、もし適切な気温制御策を講じなければ、発電モジュール内の温度が急速に上がり、摂氏70度以上に達する。これは室外との間に最大で摂氏約150度の温度差が生じることを意味する。しかし設備は「適度な」温度の範囲でしか安定して稼働させることができない。

 魏氏によると、彼らは2種類の技術で発電モジュールと制御モジュールの温度を調節しているという。まず、データモデリングでモジュール体の構造を設計し、換気口や排煙口、吸気口、排気ファンをつけて、設備が正常に「呼吸」できるようにした。同時に、モジュール内に10個のセンサーを設置して、リアルタイムで各区域の温度をモニタリングし、遠隔調節を行えるようにした。

 放熱時については、科学研究員は二つのプランを採用し、基地が無人の間に一部の設備が「サボタージュ」した場合に他の設備が代替装置として確実に役割を果たせるようにした。たとえば、モジュール内の温度が高い時、システムは遠隔で排気ファンを作動させるか、もしくは換気口や放熱口を開いて、放熱を行う。「現在、モジュール内の温度は30度にコントロールされている」という。


※本稿は、科技日報「"巨型充電宝"将随"雪竜"号出征」(2019年10月16日付1面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。