第158号
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アンチモン化合物半導体、新技術の扉を開く「金の鍵」

2019年11月12日 馬愛平(科技日報記者)

 半導体製造業は人類の科学技術文明の集大成だ。アンチモン化合物半導体は中国の第4世代半導体の中核技術発展における戦略的方向の一つになっている。

 「アンチモン化合物半導体は従来の体系の技術封鎖を突破するため、命運を握る技術を独自に確立するカギを提供した」。中国科学院半導体研究所半導体超格子国家重点実験室研究員で、国家重点研究開発計画量子制御・量子情報プロジェクト責任者の牛智川氏が筆者の取材に話した。

第1-3世代、新たな需要を満たせず

 半導体は原子力、コンピュータ、レーザーと並び現代の4大技術発明と呼ばれる。現代テクノロジーと社会・経済発展の先端分野、重大領域となっている。

 牛氏は「半導体科学は情報時代の戦略的科学技術分野になったのは、まず20世紀初頭の固体物理学における派生的な発展と大きな進化に支えられ、そして同時に半導体映像技術の確診・世代交代と実用化にも依存している」と述べた。

 シリコンやゲルマニウムなどⅣ族材料に基づく第1世代半導体、ガリウム砒素やリン化インジウムなどⅢ-Ⅴ族に基づく第2世代半導体、窒化ガリウムなどⅢ-Ⅴ族および炭化ケイ素などⅣ族に基づく第3世代半導体などは、現在公認されている各世代の半導体技術が対応する材料体系だ。

 牛氏は「現在の量子情報、再生可能エネルギー、人工知能(AI)などのハイテクの急台頭・発展に伴い、半導体の新体系およびその微電子、光電子、磁電子、熱電子などの多機能部品技術が持続的に生み出されている。第1-3世代の半導体技術も引き続き発展しているが、新たな需要を満たせないという深刻な問題が出現している。特に高性能・低コストを兼ね備えるという厳しい要求をかなえられない」と説明した。

アンチモン化合物半導体が注目株に

 次世代半導体技術はどこにあるのだろうか?

 牛氏によると、第4世代半導体技術になる高い潜在力を持つ主要体系は次の通り。バンドギャップの狭いアンチモン化ガリウム・ヒ化インジウム化合物半導体、バンドギャップが非常に広い酸化物材料、その他の各種低次元材料(炭素ナノ材料、二次元原子結晶材料など)。

 新体系のアンチモン化合物半導体は、第4世代半導体の中心的な地位を占めている。アンチモン化合物半導体は典型的なⅢ-Ⅴ族体系として、今世紀初頭に広く重視された。海外では2009年より、アンチモン化合物半導体関連の材料および部品が輸出禁止対象、独占技術に指定された。

 牛氏は「アンチモン化合物半導体はコンパクトで軽量の、低燃費で低コストの次世代部品、および非常に厳しい条件が突きつけられる応用の面で他にはない独自の強みを持つ」と述べた。

 実際には、アンチモン化合物半導体の重要性は、早くから予言されていた。

 牛氏は「77年前、有名な物理学者で中国の固体・半導体物理学の基礎を固めた黄昆氏が、半導体超格子理論を提起した。黄昆理論に導かれ、中国は世界と同時にアンチモン化合物超格子などの低次元材料体系を研究開発した。これは第3世代半導体に続く、潜在力が最も高い次世代半導体可塑体系になった」と話した。

研究が急成長の段階に

 中国のアンチモン化合物半導体の研究は、2005年に急成長の段階に入った。中国科学院半導体研究所、上海技術物理研究所などの研究機関が率先し、アンチモン化ガリウムヒ化インジウム/アンチモン化ガリウム超格子焦平面技術を確立した。その性能は世界とほぼ同じ発展水準を維持している。中国科学院半導体研究所はさらに、各種規格のアンチモン化ガリウムインジウムガリウムヒ素量子井戸レーザーを開発した。

 牛氏は「中国国内の赤外線装置と統合コンポーネントは海外との間には長期的に技術格差があり、関連設備・技術の世代交代と発展の需要を満たせなかった。アンチモン化合物半導体光電部品は高性能と低価格を持ち合わせており、この問題を解消する重要な優位性を持つ。中国のアンチモン化合物半導体技術の研究成果は、海外を追い越すルートを提供した」と説明した。

 中国国内のアンチモン化合物超格子検出装置、量子井戸レーザー技術などが現在、実用化の発展段階に入りつつある。例えば中国科学院半導体研究所が開発したアンチモン化ガリウム基板は、直径2-3インチの基板の量産化を実現した。サイズは最大4インチに達する。同時に直径2-3インチの、年間500-1,000枚のアンチモン化合物多機能低次元材料外延エピタキシャルウェーハの開発を実現し、4インチ分子ビームエピタキシャル技術を開発した。外国の禁輸を打破し、中国独自のアンチモン化合物半導体技術開発の持続可能性を保証した。

 技術革新の先進性、重大応用の切実な需要性のいずれから見ても、第4世代半導体・アンチモン化合物部品技術の研究開発と応用が必然的な流れとなっている。牛氏は、チームの準備は万端だと述べた。


※本稿は、科技日報「銻化物半導体:打開紅外芯片新技術大門的"金鑰匙"」(2019年10月25日付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。