宜賓ハイテク産業開発区:「産学研用」が深く融合した「双城」を建設
2019年12月12日 盛利(科技日報記者)
ブーゲンビリア、イロハモミジ、ハナカイドウなどが植えられている四川省にある四川大学が新設した宜賓キャンパスで、機械エンジニアリング学院など34団体と大学院生、教職員約200人が新学期を迎えた。
美しくあでやかな赤と上品なグレーが基調の宜賓キャンパス周辺には、電子科技大学大学院宜賓分院、西華大学宜賓キャンパスなど、およそ10校の大学が建ち並び、ほど近い場所にある吉林大学宜賓研究院、ハルビン工業大学宜賓産研院などのイノベーションキャリアと一体を成している。それら大学の科学教育資源や科学研究成果は、近くの叙州パークや長江パークに直接提供されている。
四川宜賓ハイテク産業開発区(ハイテクパーク)を取材すると、同エリアは、学園都市とイノベーション都市の「双城(二つの都市)」の建設を加速させて推進しており、産業と教育機関が連携して、ハイテクパークの産学研用(企業・大学・研究機関・実用化部門)の一歩踏み込んだ融合を促進する発展の新スタイルがそこで形成されていることが分かった。
足かせを取り除き、発展という「時代の使命」を背負う
長江上流域における経済ベルトとシルクロード経済ベルトが折り重なる場所に位置する四川省宜賓市は、「長江沿岸一の都市」と呼ばれている。四川省は近年、「一干多支、五区協同(成都市が中心となり成都平原経済区川南経済区、川東北経済区、攀西経済区、川西北生態示範区の共同発展をめざす)」の地域連携発展構造の構築を加速させていることを背景に、省の経済副都市の構築も加速させている。発展の新たなチャンス、新たなチャレンジを前に、いかに新技術を育成し、新産業を発展させ、新たな原動力を注入し、さらに、経済における質の高い発展の重要な牽引力や核心的な下支えとしての役割を果たすかが、宜賓ハイテク産業開発区の今後の発展のための重要な命題となっている。
「双城」建設という契機について、宜賓市科技局の関係責任者は、「宜賓ハイテク産業開発区は、国家革新駆動型発展戦略、グリーン発展理念を一貫して実施し、『一帯一路(the Belt and Road)』、長江経済ベルトなどをめぐるチャンスを掴んでいる主要な媒体」としたうえで、「まず、発展の足かせとなっている問題2つを解決しなければならない」と指摘する。1つ目の問題は、科学教育資源の不足が深刻であるという点だ。2016年以前、宜賓市には学部大学が1校、高等職業学校が1校しかなく、在校生はわずか2万5,000人にとどまっていたため、質の高い発展のための教育的下支えを提供するのが難しい状態だった。2つ目の問題は、以前は白酒(中国の蒸留酒)と石炭が伝統的で有力な産業で発展を下支えしていたという点で、経済構造を最適化して、成長の原動力を変える必要がある。
2016年から、宜賓ハイテク産業開発区は、高い基準で学園都市とイノベーション都市を建設するという計画を実施し、高等教育機関や科学研究機関、テクノロジーイノベーションプラットフォーム、ハイテク技術産業、ハイレベル人材を積極的に育成しているほか、同省初の「ダブルシティ建設サービス局」を設置して、「双城」の建設がハイテクパークの発展を促進するという斬新なスタイルが、宜賓市において急ピッチで推進されている。
産教融合で地域に成長の原動力注入
「双城」建設の後押しもあり、各大学が続々と宜賓ハイテク産業開発区に進出している。現時点で、中国人民大学や同済大学など15校が進出し、パーク内の在校生の数は5万7,000人、留学生の数は約600人に達し、同省で2番目の規模になっている。産業のモデル転換と高度化の面で、宜賓ハイテク産業開発区は現在、経済構造の最適化や発展の原動力の転換などをめぐり、スマートターミナル、新エネ車を特色とした産業新体系の構築を進めている。
約2年間の発展を経て、宜賓ハイテク産業開発区内の「双城」が急速に台頭し、テクノロジーイノベーション能力は省内でトップレベルになっており、産学研用一体化発展の新スタイルも形成されつつあり、同パークが実施する革新駆動型発展戦略によって、テクノロジーをめぐる競争において優勢になれるよう、強力な原動力を提供している。
宜賓ハイテク産業開発区の関係責任者は、「パーク内の大学に対して、企業の応用をめぐる課題に注目して研究を展開し、産業とのマッチング度が高く、就職の前途が明るい学科を開設するよう奨励している」とし、「四川軽化工大学や宜賓学院などは、地元の白酒企業と提携して、醸造バイオ技術や品質検査などの学科を開設し、各ステージの人材を育成している。電子科技大学や成都工業学院などは、パーク内のスマートターミナルや新エネ車などの企業数社と、共同で5Gやビッグデータ、モノのインターネットなどの技術センター、商品研究開発センターなどのイノベーションプラットフォームを立ち上げている」と例を挙げて説明する。
両輪が駆動し良好なイノベーションエコシステムを構築
「双城」建設により、宜賓ハイテク産業開発区にイノベーション要素の「供給側」のメリットが提供されていることに関して、同パークの関係責任者は、「産業と研究の連携・発展を通して、テクノロジーによって伝統産業がモデル転換と高度化を実現できるよう権限を付与し、良好なイノベーションエコシステムを作り上げている」との見方を示した。
2016年以降、宜賓ハイテク産業開発区は、中国人民大学長江経済ベルト研究院や宜賓同済自動車研究院、吉林大学宜賓研究院など、11の産業技術研究院と提携することで合意し、政策や金融、最先端製造、スマートターミナル、さらに、新エネ車や人工知能など、ハイエンド産業をめざす「産学研クラスター」を形成している。
既に同パークに進出している電子科技大学宜賓産業技術研究院は現在、電子情報とスマート製造をめぐって、キーテクノロジーの研究開発と研究成果の実用化に力を入れて取り組んでいる。また、ハルビン工業大学宜賓産業技術研究院は、ロボットや新材料、衛星リモートセンシングモニタリングなどの分野をめぐって、白酒「五粮液」の醸造自動化や自動車部品の自動化生産ライン改造などのプロジェクトを実施し、パークの産学研一体化発展をサポートしている。
十分なイノベーション資源と実力を誇るようになり、パークも十分な資本を武器に斬新な産業分野に進出できるようになっている。例えば、電子科技大学共建人工知能研究院やデジタル経済研究院、スマホ情報システム産業技術研究院などとの提携を通じて、同パークは現在、スマートウェアラブルデバイスやスマート家具、スマート車載設備などの新興分野に布石を敷いており、リーディングカンパニーを育成し、2020年をめどに、スマートターミナル産業の規模で350億元の突破を目指している。
計画では、2020年に宜賓ハイテク産業開発区の工業総生産額が1,500万元以上に達し、省級以上の研究開発機関が50機関集まり、ハイテク技術企業80社を育成し、2025年をめどに「双城」が重慶市や四川省、雲南省、貴州省における科学教育資源の重要なクラスターとなる見込みである。
※本稿は、科技日報「宜賓高新区:上演産学研用深度融合"双城記"」(2019年12月4日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。