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3年間で20の実用シーンを構築 5G+産業のインターネット化が現実のものに

2020年1月8日 劉艶(科技日報記者)

―中国、「『5G+産業のインターネット化』512プロジェクト推進プラン」を公布

 かつて、工業情報化部部長の苗圩氏は、「将来、5G実用シーンの80%は産業のインターネット化の分野になるだろう」と語っていたが、実際には、インターネットにつながっていないデータが工場にはまだたくさんある。産業のインターネット化の価値は、まだ製造企業の普遍的な賛同を得られていないのが現実だ。

製造業の粗放型発展はもはや限界、コストダウン、品質の向上、収益の向上をどう図るか

 この度工業情報化部は、「『5G+産業のインターネット化』512プロジェクト推進プラン」(以下、「プラン」)を公布し、「5G+産業のインターネット化」の発展目標をさらに明確にした。2022年までに中国は産業のインターネット化に特定のニーズのある5G重要技術においてブレイクスルーを目指し、一連の「5G+産業のインターネット化」向けLAN構築・改造のベンチマーク、モデルプロジェクトを打ち立て、少なくとも20の典型的な実用シーンを構築する計画だ。

産業のインターネット化の推進

「512プロジェクト」は決して神秘的なものではなく、産業のインターネット化に焦点を合わせ、各分野に散在しているものを集結させようというものである。「プラットフォームの建設」、「業界の選択」、「シーンの発掘」、「試験の推進」が、産業のインターネット化を一定の規模まで推進するための鍵として定められている。

 工業情報化部・チーフエンジニアの張峰氏は、「『512プロジェクト』の5つのサービスプラットフォーム、10の重点業界、20の産業シーンが効果を上げるだろう」と説明する。

 産業のインターネット化・イノベーション発展プロジェクトをよりどころとして5つの産業のインターネット化、企業内5Gネットワーク改造およびサービス普及プラットフォームを作り上げ、製造企業が5Gネットワーク実用の研究開発を検証するのに充分なネットワーク試験環境を構築し、中小企業向けに「5G+産業のインターネット化」LAN構築・改造のテンプレートを提供し、実用に向けたコンサルティングおよび研究開発研修を実施し、公的サービス能力を高める。

「実用は相対的に普遍で、融合度が深く、産業への影響は大きく、産業チェーンの川上・川中」の原則に基づき、10の重点業界を選択し、各地における「5G+産業のインターネット化」融合実用先導区の建設を奨励し、「5G+産業のインターネット化」産業パークのネットワークを構築し、垂直産業における5G技術の融合・イノベーションをリードする。

 産業のインターネット化・イノベーション発展プロジェクト、産業のインターネット化のモデル事業をよりどころに、一連の「5G+産業のインターネット化」向けのLAN構築・改造のベンチマーク、モデルプロジェクトを打ち立て、製造企業における生産フローの最適化とLAN構築・改造の融合を奨励し、5Gネットワークの配備・実用を生産の周辺プロセスから内部プロセスにまで進展させるよう推進することにより、少なくとも20の複製可能・普及可能な典型的な産業実用シーンを発掘・抽出し、「5G+産業のインターネット化」LAN構築改造モデルによる牽引効果を形成する。

 これと同時に、企業、高等教育機関・研究機関、産業連盟等が共同で「5G+産業のインターネット化」技術のテストベッドを構築し、技術・標準・設備・ソリューションを融合する研究開発・試験検証・評価試験等の業務を実施するよう奨励する。「5G+産業のインターネット化」の10の重点業界に対しては、各関係者が共同で業界向けの実用のテストベッドを構築し、垂直分野における5G実用イノベーション能力を高めるよう奨励する。

「5Gの高いスピード、低いタイムラグ、大規模接続という特性は、産業のインターネット化における接続の多様性、性能の差別化と通信の多様化というニーズと高度にかみ合う」。中国信息通信研究院院長の劉多氏はこう語り、次のように続ける。「5Gは産業のインターネット化におけるネットワークの進化・レベルアップの重要技術である。産業のインターネット化は5Gの主な実用シーンであるため、相互に融合して発展することで、中国の経済・社会に大きな影響をもたらす。『512プロジェクト』は将来、5Gおよび産業のインターネット化のイノベーション発展等の重大な国家戦略の実施において重要な支柱となるだろう」。

ネットワーク重要技術産業の能力を高める

「プラン」では、2022年までに産業のインターネット化に特定のニーズがある一連の5G重要技術においてブレイクスルーを目指し、「5G+産業のインターネット化」の産業支援能力を著しく高めることを明確に示している。

 張峰氏は、「5G+産業のインターネット化の『512』プロジェクトを推進するには、5G+産業のインターネット化重要技術標準を超える必要がある」と強調する。すなわち、産学研の各分野の能力を充分に発揮し、工業生産環境と既存のネットワーク体系をベンチマークとして5G+産業のインターネット化の融合的発展に関する重要技術の研究を加速し、5G+産業のインターネット化の融合した標準体系を制定し、産業の複雑な環境下における5Gの許容能力のボトルネックの解消に力を入れることだ。

「5G+産業のインターネット化」技術標準における問題解決の強化について、「プラン」では産業のインターネット化におけるネットワーク保障を強化し、5Gネットワーク環境下における高精度な屋内測位、高精度な時刻同期、スーパー・アップリンク、デターミニスティック・ネットワーク等の分野における技術の研究開発を積極的に進めることを要求している。これは、産業のインターネット化では広い帯域幅と小さいタイムラグに対する要求がさらに高くなることから、これらの技術によって5Gネットワーク関連の長所が発揮され、ネットワークの許容能力が引き上げられるためである。

 標準の制定において、「プラン」では中国の国家産業のインターネット化標準協調推進グループ、総合グループおよび専門家コンサルティンググループ、中国通信標準化協会(CCSA)等のプラットフォーム組織をよりどころとして体系標準を整備し、中国の実情に合う産業標準を制定することを求めている。

 ネットワーク技術および製品構想の分野において、「プラン」では工場内の5Gネットワークを合理的に配備し、ネットワーク構想およびネットワーク配置、業務構想およびデータセキュリティ等の問題を適切に行うことが強調されている。

 また、セキュリティ問題に対する不安は、現在、多くの企業における産業のインターネット化に対する熱意の低さの主な原因となっている。賽迪智庫(中国の政府系シンクタンク)副総裁の董凱氏によれば、5Gネットワークと産業のインターネット化におけるネットワークアーキテクチャはどちらかといえば開放的であるため、既存の物理的セキュリティによる隔離手段では全産業チェーンにおける外部からの攻撃を防ぎ止めるのは難しい。このため、ネットワークセキュリティが製造企業の発展を阻むボトルネックの一つとなっている。

 劉多氏は、「産業のインターネット化における5Gの導入と既存技術とをいかに融合的に発展させ、両者をいかに結びつけ、改修コストをいかに抑えて使用効率を高めるかによって、5Gおよび産業のインターネット化の産業シーンにおける大規模商用化のスピードが決定づけられる」と強調する。

イノベーション実用能力の構築は多くの課題に直面

 国家政策による強力な支援と推進によって、業界には大きな自信がもたらされたが、イノベーション応用能力の構築は、依然として多くの課題にさらされている。劉多氏の語るように、中国の「5G+産業のインターネット化」はすでにひとまずの成果を上げてはいるが、発展の潜在力に関してはさらなる発掘が待たれる。産業分野における5Gの実用シーンと収益モデルについては、さらなる模索の余地がある。

「512プロジェクト」で必要とされるのは実はスケールメリットだが、産業には細分化された分野があまりにも多いため、ハードルは高く、実施は容易ではない。したがって、見識と実力のある企業によって育て、局面を打破する必要がある。董凱氏の語るように、「中国では『5Gを理解し、産業も理解する』ある程度の数のソリューション・サプライヤーの育成が急務」である。

 また、張峰氏によれば、「5Gの実用化はまさに、生産活動の周辺や映像監視、巡回・セキュリティ、物流配送等の実用シーンから製品の設計・シミュレーション、生産制御、品質モニタリング、安全な生産等、各プロセスのより深いレベルへと進展している」。これと同時に、5G LAN改造のカバーする業界分野は広範になりつつあり、自動車、通信およびエレクトロニクス製造、機械、軌道交通、航空、化学工業、家電、鉄鋼等の製造業に加え、鉱山、港湾、エネルギー等も5G技術による産業のインターネット化LAN改造を利用する重点分野となっている。実用範囲は生産・製造のコアのプロセスへと進展を続けており、相乗効果と実用における巨大な潜在能力が解放され続けている。

「しかし、5Gと産業のインターネット化の融合・イノベーションはまだスタート段階にある。産業基盤のさらなる強化と路線・モデルのさらなる模索、発展環境のさらなる整備が待たれている」と張峰氏は強調する。「512プロジェクト」では能力のある地区、業界、企業による先行実施を奨励している。

 中国移動(チャイナ・モバイル)副総経理の趙大春氏によれば、「『5G+産業のインターネット化』512プロジェクトの業務方針に従って、チャイナ・モバイルはすでに14の重点業界に狙いを定めている。将来的には100の5G実用シーンを構築し、100の5Gモデル事業をリリースして、業界を細分化した全国的なモデル基地を設立し、5Gモデル事業をいわば『モデルルーム』から『商品住宅』へとレベルアップさせ、5G+産業のインターネット化の実用シーンの現実的な実施を推進する。5G実用シーンとは、工場、鉱山、鉄鋼、電力、港湾の5大重点細分分野におけるものである」。

 産業のインターネット化に対する「512プロジェクト」の牽引作用に話が及ぶと、劉多氏は業界に対して次のように注意を喚起した。「中国の『5G+産業のインターネット化』はスタート段階にあり、まだ解決すべき多くのボトルネックが存在する。問題を整理し、実用シーンを発掘し、課題に対応し、各産業関係者が協力と模索を強化し続けることが必要とされており、このことが中国の5Gと産業のインターネット化の深い融合への支援となる」。


※本稿は、科技日報「3年20個典型応用場景 5G+工業互聯網将這様落地」(2019年12月16日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。