コンテスト・サービス・入居―青島ハイテクパークの起業エコシステムVer.3.0
2020年2月27日 王建高 (科技日報記者)、尚萌萌、李青建(科技日報特派員)
青島ハイテクパーク内の盤谷起業家プラットフォーム 画像は取材先提供
青島海徳馬克智能装備有限公司のスマート生産ライン精加工現場 画像は取材先提供
山東省の青島ハイテクパークでこのほど、青島・中関村信息谷(インフォメーションバレー)イノベーションセンターが発足した。これで、同パークに集まる優良イノベーションプロジェクトは2,300件以上に達し、「一帯一路」(the Belt and Road)の新たな国際協力プラットフォームが構築されていくことになる。同パークはイノベーション発展の道を、止まることなく進み続けていることを示している。
起業とイノベーションが巡り合い、「双創」(または「大衆創業・万衆創新」〔大衆による起業・万人によるイノベーション〕)が融合し、国家自主イノベーションモデルエリア、国家級「双創」モデル拠点としての青島ハイテクパークは、開放とイノベーションが牽引する都市発展の道を進もうと奮闘しており、「双創」をめぐる出色の物語を書き上げている。
「コンテストを通して投資を呼び込む」という新たなスタイルを創出
合計177日の間に、上海、武漢、青島、北京、深圳、シリコンバレー、ロンドン、ベルリンの8都市・エリアから、500件以上のプロジェクトが積極的に応募され、最終的に10件のプロジェクトが青島ハイテクパークへ入居することが決まった。昨年12月に閉幕した2019年青島ハイテクパーク藍貝国際イノベーション・起業コンテスト決勝では、70件近くの優良なプロジェクトの中から青島の並列人工知能鉱山プロジェクト、北京のヒトの皮膚創傷治癒医学技術システム、蘇州の超高画質光学映像Micro-OCTプロジェクトが、トップ3に選ばれたほか、授賞式終了後、ハイテクパークに入居予定の優良参加プロジェクト10件の契約調印が集中的に行われた。
2014年に開催が始まった「藍貝」コンテストは6回連続で行われ、青島市では「起業したいなら藍貝に参加しよう!」というムードが高まっており、無数の起業エリートが集まり、イノベーションをめぐる物語が毎日のように生み出されている。
「イノベーション企業を育成するということは、未来を育成することだ。今年のコンテストは多くの面で、最適化・アップグレードを実現し、勇敢にイノベーション、実践を行う多くの創客(アイデアを現実に変える人)に、価値ある人生を実現する大きな舞台を提供している」と話す青島ハイテクパークの関係責任者によると、2019年の藍貝コンテストは新しいスタートで、「コンテストを通して投資を呼び込み、人材を通して人材を呼び込む」という形を通して、中国内外のプロジェクトを発掘し、優秀な企業家、優秀なチーム、優秀なプラットフォームを呼び込んでいる。
「コンテストを通して投資を呼び込む」というスタイルで、藍貝コンテストは、300件以上の中国内外のイノベーションプロジェクトのハイテクパークに入居するよう呼び込むことに成功した。それらプロジェクトは、ハイエンドサービス、ソフトウェア・情報、医療医薬、スマート製造、インターネット、新材料など複数の分野をカバーしており、企業家たちが続々と青島ハイテクパークを訪問、見学、そして提携するようになり、「イノベーションパートナー」となっている。
藍貝コンテストは、青島ハイテクパークの「コンテストを通して投資を呼び込む」というスタイルの縮図に過ぎない。同パークは近年、「創客中国(青島エリア)および第5回『市長杯』中小企業イノベーションコンテストハイテクパーク予選」、「2019中糧イノベーション起業コンテスト全国巡回ロードショー・ファーストステージ」、「AI&5G国際イノベーション起業コンテスト」などを相次いで開催している。頻繁に開催されるレベルの高い各種コンテストとイベントは、起業プロジェクトと産業発展のプラットフォームを構築することで、起業プロジェクトと発展のニーズとの的を絞ったマッチングを実現し、起業プロジェクトが大きく成長するよう促し、青島ハイテクパーク自身の産業が大きく発展する牽引力にもなっている。
「『実力があるかどうか、試してみればいい』、私たちはそれを恐れず実行する能力がある」。藍貝コンテストで優勝した青島慧拓スマートプロジェクトは、各種コンテストの「なじみの顔」で、絶え間ない蓄積によって、その技術、成果が速やかに実用化されるようになっており、自分たちに適して発展のアプローチを既に探し当てている。
コンテスト開催からしパークへの招致―起業の良好なエコシステムの構築
プロジェクトを呼び込んだ後は、そのプロジェクトがパークに留まり成長できるようにする必要がある。では、優良な「苗木」に、どのように太陽光を当て、水をやり、それが少しずつ成長して「大きな木」になるようにすればよいのだろう?青島ハイテクパークは、コンテスト前、コンテスト中、コンテスト後に分けて、「コンテスト+サービス+入居」という「双創」のアップグレード版を構築し、「青々と茂る」イノベーション起業エコシステムを生み出している。
インキュベーターである海爾(ハイアール)・海創匯のチャネルリソースによるマッチングの下、普宙のドローンプロジェクトは先月、500万元(約7,800万円)の発注に関する契約に調印し、今年度の目標を前倒しで達成した。プロジェクトの責任者・厳凌鶴氏は、「青島ハイテクパークの産業チェーンは非常に整っており、類似のチャネルリソースがまだ多い」とうれしそうに語る。同じように大きく成長している青島慧拓智能極其有限公司は、青島ハイテクパークが育成したハイテク企業として、人材、場所、資金などの政策的サポートを受けて急成長し、2度に分けて総額2億元(約31.2億円)以上の融資を受けた。藍貝コンテストの会場で、青島銀行科技支行と慧拓智能は1,000万元に上る信用貸付を行う信用供与の意向を達成し、資本の力により「有望株」の成長を後押ししている。
起業した企業に対するサービスを充実させることが、「双創」のバージョン1.0で、「双創」のインキュベーター構築がバージョン2.0であるとすれば、「コンテスト・サービス・入居」という起業エコシステムの構築は、つまりバージョン1.0という「点」から、バージョン2.0という「線」に、そしてバージョン3.0という「立体」形成に到達したことを意味しており、リソースと業界の境界線が打ち破られたと言えよう。
青島市で唯一の地域系国家級の「双創」モデル拠点としての青島ハイテクパークは、政府によって山東省唯一の「真摯に着実にな取り組む成果が明らかな地域の『双創』モデル拠点」に認定されており、中国国務院弁公庁の激励表彰リストに名を連ねている。同パークは、中国・イスラエルテクノロジーイノベーションパーク、欧州連合(EU)イノベーションセンターなどのイノベーションプラットフォームを有し、「ソーシャル・イノベーション・プラットフォーム--インキュベーター--アクセラレーター--産業パーク」のテクノロジーインキュベーションチェーンを積極的に構築し、インキュベーションキャリアを作り上げ、使用が始まっている。また、220万平方メートル以上で、その資質が区級以上と認定されているインキュベーションキャリアは37組織となっている。うち国家級のインキュベーター、ソーシャル・イノベーション・プラットフォームは16組織ある。パークのインキュベーターは新たに、「国家小規模・零細企業起業イノベーションモデル拠点」、「全国大学人材育成イノベーション起業拠点」、「省級起業インキュベーションモデル拠点」、「省級留学生イノベーション起業モデルパーク」などに認定され、パーク内の国家級インキュベーターは、2018年度の国家級テクノロジーインキュベーターの成績審査において、藍貝イノベーションパークと青島市工業技術研究院が「優秀」などのランクに評価された。中でも青島市工業技術研究院は5年連続で「優秀」との評価を受けている。
「3+1」の産業構造にスポット―木が成長して「森」に
産業の発展は、都市建設において中核的原動力となる。産業配置の最適化を実施し、責任を負う主要事業に集中するしか、中国内外におけるハイレベルのイノベーション資源の集約を加速させ、新たな成長源を創出することはできない。
パークが現在有している産業の基礎と資源の賦存量に基づき、青島市の産業体系、産業チェーンの分布を結び合わせて、青島ハイテクパークは自身の優位性に立脚して、近代的先端産業の展開をスピードアップし、「3+1」の主導産業の位置付けをさらに明確にし、次世代情報技術、医療医薬、人工知能と先端設備製造の3大主導産業の発展に焦点を合わせ、現代型サービス業の発展を促進している。一方、「3+1」の主導産業の位置付けをめぐり、青島ハイテクパークは、「歳月人を待たず」という気持ちで、事業展開を進め、企業・人材の誘致、資金・知識の導入を継続的に強化し、産業のクラスタ化発展を加速させ、費用対効果を向上させ、一層的を絞った産業の発展を促進している。
今年初めに、「イノベーション・チャイナの旅」キャンペーンが青島ハイテクパークで開催され、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる中関村の技術、人材、資本、市場、プラットフォームなどの要素が、青島市の地域的優位性と協力して、中国内外のイノベーション資源を統合することにより、積極的に影響力を発揮し、青島にある資源の統合、地域のイノベーション能力の向上を牽引している。
そのようなプラットフォーム化、エコシステム化の思考により、青島ハイテクパークには優良な産業資源が続々と集まっており、産業エコシステムにおけるそれぞれの苗木が生長して「森」を形成するようになり、世界のハイテクが集まる場所となっている。
青島ハイテクパークでは最近、「良い知らせ」が続々と届いている。例えば、山東省工業・情報化庁が発表した「山東高品質設備リスト(2019年)」に、青島科捷ロボット有限公司、青島雷霆重工股份有限公司、融智バイオテクノロジー(青島)有限公司など6社の設備製品7点がリスト入りした。その数は、青島市からリスト入りした製品全体の30%を占めており、同市の先頭に立っている。また、山東省工業・情報庁が発表した2019年度山東省初の技術設備・コア部品および生産企業リストに、青島ハイテクパークの企業3社がリスト入りした。その他、青島市民間経済発展局が発表した青島市「専精特新」(専業化、高精度化、特色化、イノベーション化)モデル企業第7弾に、青島ハイテクパークの企業7社がランク入りし、青島市「機器換人(産業用ロボットによる自動・省人化を促すプロジェクト)」賞の候補リストに、青島ハイテクパークの企業4社がリスト入りした。
テクノロジーイノベーションにより、コア技術の障壁が次々に打ち破られ、ビッグプロジェクトの建設も加速している。今年初めの時点で、畢勤集団アジア太平洋地域研究開発センター並びに中国本社、青島網谷たいまつパーク、聯東U谷・青島ハイテク国際企業港二期などのプロジェクトの竣工・使用が始まり、新エネルギー情報テクノロジー産業パーク、海爾バイオ医療産業パークなどのプロジェクトが完成し検収が終わり、国家人工知能・生態環境保護産業パーク、嘉星晶電半導体産業パーク、海克斯康智慧産業パークなどのプロジェクトが着工するなど、一連のイノベーションプロジェクトがここに集まり、青島ハイテクパークの発展は新たな高みに達し、産業大手の強力な誘致する力が発揮され、同地域における産業発展の幅がさらに広がっている。
※本稿は、科技日報「賽事 服務 落地 青島高新区構建創業生態3.0版本」(2020年1月22日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。